
業務棚卸とは?やり方・フォーマット例から自動化への活かし方まで解説

日々の業務は、担当者の経験や慣れによって回っていることが多く、外から見ると実態が分かりにくいものです。業務量が増えているのに原因が見えない、RPAを導入したいが対象業務を判断できない、といった課題を抱える企業も少なくありません。
そこで重要になるのが、業務棚卸です。自社の業務内容や担当者、工数、頻度を整理することで、ムダな作業や属人化している業務、自動化できる業務を見つけやすくなります。
本記事では、業務棚卸の基本的な考え方や進め方、フォーマット例を解説します。さらに、棚卸結果を業務改善やRPA・生成AIによる自動化へつなげるポイントも紹介します。
業務棚卸とは、社内で行われている業務を洗い出し、担当者・作業内容・所要時間・手順などを整理する取り組みです。業務の全体像を可視化すれば、ムダや属人化を見つけやすくなります。
業務改善やDX、自動化を進める前に、自社の現状を正しく把握し、改善の優先順位を決めるための重要な作業といえるでしょう。ここでは、業務棚卸の基本的な考え方や目的について詳しく解説します。
業務棚卸の基本的な考え方
業務棚卸では、社内で行われている業務を対象に、「誰が・何を・どのくらいの時間をかけて・どんな手順で」進めているのかを一覧化します。小売業で在庫を確認する棚卸と同じように、「業務」という見えにくい在庫を可視化する作業と考えると分かりやすいでしょう。
日々の業務は担当者の経験や勘に頼って進んでいることも多く、周囲からは実態が見えにくくなりがちです。全体像を整理することで、属人化やブラックボックス化を解消する第一歩になります。改善対象を見極める土台にもなり、次に何を変えるべきか判断しやすくなるのもポイントです。
業務棚卸を実施する3つの目的
業務棚卸を実施する目的は、業務を一覧化すること自体ではありません。現状を整理したうえで、改善すべきポイントを明確にすることが目的です。主な目的は、次の3つです。
- 重複作業やムダを発見する
- 属人化している業務を把握する
- 自動化・外注に向く業務を見極める
例えば、同じデータを複数部署で入力している作業や、使われていない資料作成は、削減・統合の候補になります。特定の担当者しか対応できない業務は、マニュアル化や引き継ぎ体制の見直しが必要です。
また、所要時間や発生頻度を記録しておけば、RPAや外注によって効率化しやすい業務も判断しやすくなります。
業務棚卸が必要になる具体的なシーン
業務棚卸は、業務改善の起点として幅広く活用できます。中でも、次のような場面では、現状業務を整理しておくことで、その後の検討を進めやすくなります。
- DX推進やRPA導入を検討するとき
- 人事異動や組織再編が発生するとき
- 残業時間や業務負荷が増えているとき
- 新システム導入前に要件を整理するとき
DX推進やRPA導入では、まず「どの業務を自動化すべきか」を判断する必要があります。現行業務が整理されていないままツールを導入しても、効果の大きい業務を見極めにくくなるためです。
また、人事異動や組織再編の前に業務棚卸を行えば、特定の担当者に依存している作業や、引き継ぎが必要な業務を把握できます。残業時間が増えている場合も、どの作業が負担になっているのかを明確化する材料になります。
新システム導入前の要件定義でも、業務棚卸は有効です。現場の作業手順や課題を整理しておくことで、必要な機能や改善すべき業務フローを検討しやすくなるでしょう。課題が大きくなる前に実施すれば、現場への負担を抑えながら改善を進められます。
業務棚卸を進める際は、思いつくままに業務を書き出すのではなく、手順を決めて整理することが重要です。対象範囲を絞り、業務一覧を作成した上で、工数や頻度、担当者を記録します。
その後、課題を分類し、優先順位をつけて改善計画につなげましょう。この流れを押さえると、現場の負担を抑えながら改善対象を明確にできます。
ここでは、業務棚卸のやり方を5つのステップで解説します。

ステップ1:棚卸の対象範囲を決める
業務棚卸は、最初から全社規模で進めると情報量が膨大になり、途中で止まりやすくなります。まずは対象部署や業務カテゴリを絞り、経理・総務・受発注など定型業務が多い部門から着手すると効果を実感しやすいでしょう。
範囲を決めないまま始めると、現場へのヒアリング項目も増え、整理すべき情報も分散します。小さく始めて成果を確認し、段階的に対象を広げる進め方が有効です。初回は完璧を目指すより、最後までしっかりと整理することを優先しましょう。
ステップ2:業務一覧を洗い出す
対象範囲を決めたら、現場担当者へのヒアリングや日報、既存マニュアルをもとに業務一覧を作成します。一覧表を作成する際は、「大分類→中分類→小分類」のように、業務を段階的に分解して整理します。
例えば「請求処理」という大きな括りだけでは、どの作業に時間がかかっているのか、判断しにくくなります。「請求書作成」からさらに「金額入力」「PDF変換」「メール送付」まで作業単位に落とし込むことで、後工程で工数を記録したり、自動化できる範囲を判断しやすくなります。
担当者ごとに表現が異なる場合は、名称を統一しておくと比較しやすいでしょう。
ステップ3:工数・頻度・担当者を記録する
業務一覧を作成したら、各業務に対して所要時間、実施頻度、担当者、代替可否を記録しましょう。所要時間は「分/回」、頻度は日次・週次・月次などでそろえると、月間工数を算出しやすくなります。
例えば1回10分の作業でも、月40回発生すれば400分、つまり約7時間の業務量に相当します。このように具体的な数字へ換算すると、改善インパクトの大きい業務が見えやすいです。
経営層に提案する際も、感覚ではなく数値で説明できる点が大きな強みとなります。担当者が限られる業務は、引き継ぎリスクもあわせて確認しておくことをおすすめします。
ステップ4:課題と改善余地を分類する
工数や頻度を記録した後は、各業務にどのような課題があるかを整理しましょう。分類は「廃止可能」「簡素化可能」「自動化可能」「現状維持」の4つに分けると判断しやすくなります。
例えば、誰も使っていない資料作成は廃止候補、承認ルートが複雑な業務は簡素化候補、定型的な転記作業は自動化候補として振り分けます。判断が難しい業務は無理に結論を出さず、フラグを立てて後工程で再評価しましょう。
現場の感覚だけで決めず、工数や影響範囲もあわせて確認することが重要です。業務の必要性と改善余地を分けて見ると、議論が整理されます。
ステップ5:優先順位をつけて改善計画を策定する
最後に、洗い出した改善候補に優先順位をつけ、実行計画へ落とし込みましょう。判断基準には「工数削減インパクト × 実現難易度」のマトリクスを使うと整理しやすくなります。
特に、高インパクトかつ低難易度の施策は手間がかからず現場にもたらすメリットも大きいため、早めに着手するのが望ましいです。短期間で成果を示せると、現場の協力も得やすくなります。
改善計画には削減時間やエラー率などのKPI、実施期限、担当者を明記します。棚卸して終わりにせず、PDCAを回せる状態まで設計することが大切です。定期的に進捗を確認すれば、改善活動の形骸化も防ぐことができるでしょう。
業務棚卸を効率よく進めるには、Excelやスプレッドシートで共通フォーマットを用意し、業務内容・作業時間・発生頻度などを同じ基準で整理することが大切です。
さらに、RPAやシステム化による自動化を検討する場合は、削減できそうな時間や費用対効果まで確認できると、改善の優先順位を決めやすくなります。
ここでは、業務内容の洗い出しから、年間作業時間・削減見込み・自動化の進捗管理まで行えるExcelシートの活用ポイントを紹介します。
業務棚卸シートに必要な項目一覧
業務棚卸シートには、部署名、業務内容、利用システム、1回あたりの作業時間、月間の発生回数、年間作業時間、削減できそうな割合、自動化の進捗状況などを記入します。
例えば、「受注データをWebシステムからダウンロードする」「Excelに転記する」「基幹システムへ入力する」といった作業を1つずつ洗い出し、作業時間や発生頻度を入力します。
年間作業時間や削減見込みを数値で確認できるため、どの業務から改善・自動化に取り組むべきかを判断しやすくなります。
業務棚卸をこれから始める方に向けて、業務内容や作業時間、発生頻度、自動化による削減見込みを整理できるExcelシートをご用意しています。業務の見える化だけでなく、RPAなどによる自動化を検討する際の費用対効果の確認にも活用できます。
業務改善の第一歩として、ぜひご活用ください。
→業務棚卸(エクセルシート)※メールアドレスを入れるとダウンロードできます
フォーマット運用のコツと陥りがちな失敗
業務棚卸シートで特によくある失敗は、「粒度がバラバラ」「記入者によって表現が違う」「作って終わりで更新されない」の3点です。
例えば、Aさんは「請求処理」と大きな単位で記入し、Bさんは「請求書PDF作成」と細かい作業単位で記入していると、同じ内容の作業を比較したり、集計したりすることが難しくなります。
このような失敗を防ぐためには、あらかじめ作業名の付け方や分類ルールを統一しておくことが大切です。作業名は動詞で終える、所要時間は分単位で書くなど、現場で明確な基準を共有しましょう。四半期ごとに更新日を決め、継続的に見直す運用も欠かせません。

業務棚卸は、一覧を作って終わりではありません。洗い出した結果をもとに、不要な業務の削減、似た作業の統合、手順の標準化、自動化の検討へつなげる必要があります。
現状把握から改善実行まで結びつけて初めて、棚卸の効果が生まれます。ここでは、棚卸結果を活かすためのポイントを改善・標準化・自動化の3つの観点から紹介します。
業務の削減・統合・標準化
棚卸結果を確認すると、実は必要性が低い業務や、複数部署で重複している作業が見つかる場合があります。使われていない資料作成は削減候補となり、似たようなデータ入力を別部署で行っている場合は統合を検討できます。
また、担当者ごとに手順が異なる業務は、標準化によって品質のばらつきを抑えられます。手順書やチェックリストを整備すれば、引き継ぎや新人教育にも活用可能です。
まずは業務を減らし、次にまとめ、最後に手順をそろえる流れで進めると、改善の効果が出やすくなります。
自動化に適した業務の見極め方
自動化に適した業務には、いくつかの共通点があります。代表的な条件は、作業手順や判断基準がある程度ルール化されていること、繰り返し発生すること、PC上のデジタルデータを扱うことです。
例えば、受発注データの転記、勤怠集計、定型レポート作成などは上記の条件に当てはまりやすく、自動化候補として検討しやすい業務です。
一方で、担当者の経験や都度の判断に大きく依存する業務は、全てを自動化するのではなく、入力・転記・集計・通知など、ルール化しやすい部分から切り出して自動化する考え方が有効です。
RPAや生成AIで自動化できる業務を検討する
業務棚卸で改善候補を整理したら、どの業務を人が行い、どの業務をツールで効率化できるかを検討します。
ルール化された反復作業にはRPAが向いています。例えば、受注データのダウンロード、基幹システムへの転記、ファイル作成、帳票出力、メール送信など、決まった手順で繰り返し行う作業はRPAの活用候補になります。
一方、生成AIは、文章の要約、問い合わせ内容の分類、社内文書からの情報検索、メール文面の下書き作成など、文章や非構造データを扱う業務で活用しやすい技術です。
ただし、生成AIは入力内容や指示の出し方によって回答が変わる場合があります。そのため、金額計算やデータ登録など正確性が求められる処理を任せる場合は、人による確認やRPAとの組み合わせを前提に設計することが大切です。
例えば、生成AIで問い合わせ内容を分類し、RPAで該当システムへの登録や通知を行う。あるいは、生成AIでメール文面の下書きを作成し、RPAで送信前の定型処理を行う、といった組み合わせが考えられます。
業務棚卸を行うと、繰り返し発生している転記作業や、担当者に負荷が集中している定型業務が見えてきます。こうした業務は、RPAによる自動化候補として検討しやすい領域です。
ここでは、業務棚卸で見つかりやすい自動化候補の例として、WebEDI対応、受注データの取得、納品書データの作成・送付などの業務を取り上げます。
WebEDI操作の自動化
株式会社フランソアでは、取引先ごとに異なるWebEDIの操作が大きな負担になっていました。受注・出荷・受領などの処理が1社につき複数回発生しており、従来は100社程度の取引先とのやり取りを自動化ツールで支えていたものの、メンテナンスできる担当者が限られている点も課題でした。
Autoジョブ名人の導入後は、WebEDI操作の安定性が高まり、エラー件数は従来の3分の1に減少。復旧時間も30分程度から5分程度に短縮され、受発注業務を止めない体制づくりにつながっています。
受注データ取得の自動化
株式会社マツヤでは、IPORTERやBtoBプラットフォームから注文データを手作業でダウンロードしており、朝の受注処理が大きな負担になっていました。取引先は全国約1万店舗にのぼり、短いリードタイムの中で多くの注文を処理する必要がありました。
そこでAutoジョブ名人を導入し、標準化スクリプトとカスタマーサクセスプランを活用して1カ月で100以上のスクリプトを開発。注文データのダウンロード作業を自動化した結果、年間3,276時間の削減に成功し、繁忙期の業務負荷軽減にも効果を発揮しています。
納期回答・送信業務の自動化
株式会社ジオテックでは、顧客企業の業務変更によりWebEDI対応が必要となり、大量のデータ転記や納品書送付が新たな負担になっていました。特に、1日あたり150枚にのぼる納品書データをPDFで作成し、7社の外注先ごとに振り分ける作業は、手作業で毎日2時間かかっていました。
Autoジョブ名人の導入により、納期回答業務と納品書データ送信業務を自動化。2本のシナリオで月100時間、年間1,200時間の削減を実現し、ミスの防止や休日出勤の削減にもつながっています。
業務棚卸で洗い出した業務を実際の効率化につなげるには、自動化候補の整理、シナリオ作成、運用後の効果確認までを見据えて進めることが大切です。
Autoジョブ名人は、定型業務の自動化に対応した国産RPAです。受発注データの取得、WebEDI操作、システム間の転記、帳票作成、メール送信など、PC上で繰り返し行う業務の自動化に活用できます。
また、無償の伴走支援「カスタマーサクセスプラン」では、業務の棚卸や自動化候補の整理、シナリオ作成、運用定着に向けた支援を提供します。初めてRPAを導入する場合でも、対象業務の選定から運用後の改善まで相談しながら進めやすい点が特長です。
業務棚卸を自動化や業務改善につなげたい方は、Autoジョブ名人の無料トライアルをぜひご検討ください。
業務棚卸は、社内の作業を一覧化するだけの取り組みではありません。誰が、どの業務に、どれだけの時間をかけているのかを明確にし、削減・統合・標準化・自動化の判断材料を得るための重要なプロセスです。
特にRPAの導入を検討する際は、事前に業務を棚卸しておくことで、自社にとって費用対効果の高い対象業務を見極めやすくなります。
現行業務が曖昧なままツールを導入すると、効率化の範囲を絞り切れず、期待した効果が出にくくなりがちです。自社の業務におけるムダや属人化を解消するためにも、まずは業務を見える化し、改善余地の大きい作業から優先的に取り組みましょう。
業務棚卸を進める中で、繰り返し発生する定型作業や、担当者に負荷が集中している作業が見えてきた場合は、RPAによる自動化も選択肢になります。まずは現状業務を整理し、自社にとって効果の大きい改善テーマから検討していきましょう。








