
RPAシナリオの作り方と業務自動化に取り組む際の流れを徹底解説

人手不足や業務効率に悩む企業が改善を図るための手段として、RPA(Robotic Process Automation)が注目されています。RPAは、データ入力や経費精算、レポート作成などの定型業務を人の代わりに自動で行います。あらかじめ定めたルールに則って動作するのでミスをすることはなく、作業時間を大幅に短縮できるツールです。
本記事では、RPAを活用して効率化できる業務の具体例や、実際の導入の流れ、シナリオの作り方のフローなどについて解説します。これからRPAの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
RPAとは何か
RPAは、人が行う作業を自動で行うソフトウェアロボットです。あらかじめ決められたルールに則って処理をしていくので、定型業務や反復作業を得意とします。具体的には、データ入力、情報の転記、メール送信、レポート作成などの事務作業を迅速かつ正確に処理できます。
RPAの導入によって、人的ミスを削減するとともに、業務を効率化して作業時間を短縮できます。また、人件費の削減や労働力不足の解消にも役立ちます。PCにインストールするデスクトップ型のRPAや自社サーバーにインストールして使うサーバー型のRPAだけでなく、クラウド型RPAも登場しており、企業規模にかかわらず手軽に導入・活用が可能になっています。
RPAでできること
RPAでできることとして、次のようなものが挙げられます。
- データ入力・転記の自動化
- 定型レポートの作成
- 勤怠管理・給与計算
- 請求書・経費精算処理
- Webからの情報収集と分析
- 問い合わせ対応・自動メール送信
- 契約書や文書管理の支援
ここでは、上記の7つの業務をRPAで自動化したときの作業イメージを詳しく解説します。
データ入力・転記の自動化
複数のシステム間で行われるデータ入力や転記作業は、RPAで自動化できる業務のひとつです。例として、受注情報を販売管理システムや在庫管理システムに登録する業務などが考えられます。
手作業による受発注業務や在庫管理はミスが発生しやすく、時間がかかります。しかし、RPAを導入することで、これらの作業を正確かつ高速に処理できるようになります。
また、夜間や休日でも業務を処理できるようになるため、業務効率の向上が期待できます。
定型レポートの作成
RPAを使って、売上データや在庫状況などをもとに定型レポートを自動作成することも可能です。
従来の毎月の営業報告書や在庫レポート作成においては、データの収集や集計作業が多くの時間を占めていました。しかしRPAであれば、指定されたフォーマットに基づいて必要な情報を素早くまとめ、レポートを生成できます。
これにより、分析作業にかかる時間を短縮し、担当者は分析結果をもとにした意思決定や戦略策定といった付加価値の高い業務に集中できます。
勤怠管理・給与計算
従業員の勤怠データを集計し、給与計算システムに反映させるプロセスも、RPAで自動化できます。これにより、計算ミスのリスクを低減しつつ、給与処理を迅速に行えるようになります。
特に、従業員数が多い企業や複雑な勤務形態を持つ組織では、給与計算にかかる負担が大きくなりがちです。RPAを活用すれば、締め日の業務負荷を軽減し、人事担当者が他の業務に時間を割くことが可能になります。
また、法改正や規定変更にも柔軟に対応できる仕組みを構築すると、長期的な運用コストの削減も期待できます。
請求書・経費精算処理
紙で受け取る請求書の場合、内容をスキャンしてデータを読み取り、データを自動登録する一連の流れをOCR技術とRPAの連携によって自動化すると、経費精算業務を大幅に効率化できます。
例えば、請求書の明細を読み取り、経費精算システムに入力する作業を自動化できれば、経理担当者の負担を軽減できます。
Webからの情報収集と分析
RPAは、指定されたWebサイトから情報を定期的に取得し、集計・分析まで自動で行うことが可能です。例えば、競合サイトの商品価格や在庫情報を取得し、Excelに一覧化したり、CSVに保存して社内システムへ連携したりする処理が代表例といえるでしょう。
APIが用意されていないサービスでも、RPAを使ってブラウザ操作を再現することで情報を取得できるため、定点観測やレポート作成に役立ちます。情報収集のスピードが向上し、意思決定までのリードタイムを大幅に短縮できます。
問い合わせ対応・自動メール送信
RPAは、問い合わせ対応業務にも活用できます。例えば、特定の件名や送信元からのメールに対して、定型文を用いた自動返信を行うなどの使い方が可能です。また、問い合わせ内容をExcelに記録し、進捗状況をフラグで分類する処理も再現できます。
さらに、ファイル添付や承認フローの通知といった業務にも対応できるため、営業・総務・人事など幅広い部署で導入が進んでいます。対応の迅速化だけでなく、作業の抜け漏れ防止にも役立ちます。
契約書や文書管理の支援
契約書の内容確認や期限管理などの業務にRPAを導入すると、法務部門の業務効率化を推進できます。
例えば、契約書の更新期限通知や、更新手続きの自動化をRPAで実施し、ミスや見落としを防ぐような使い方が考えられるでしょう。
さらに、文書の電子化と管理プロセスの自動化により、煩雑な事務作業を削減し、法務担当者がより戦略的な業務に集中できる環境を整えることも可能です。
RPAの導入手順

RPAの導入手順は、一般的に次のとおりです。
- 導入目的と目標の設定
- 業務の洗い出しと対象業務の選定
- RPAツールの選定と導入準備
- シナリオ作成とテスト実行
- 本番運用と効果測定
ここでは、具体的な導入手順について詳しく解説します。
導入目的と目標の設定
RPA導入の第一歩は、導入目的や達成したい目標を明確にすることです。コスト削減、業務効率化、ミスの削減、従業員の負担軽減など、導入の動機を具体的に設定すると、後の効果測定が容易になります。
例えば、「月間のデータ入力時間を半減する」「ミス発生率をゼロに近づける」などの具体的な数値目標を設定すると、導入の成果を定量的に評価できます。設定した目標は、従業員への説明やプロジェクトの進捗確認にも役立ちます。
業務の洗い出しと対象業務の選定
次に、現在行っている業務をリストアップし、自動化が可能なプロセスを洗い出します。特に、繰り返しの作業が多く、定型的な業務を優先的に選定するのがポイントです。
例として、データ入力や転記、レポート作成、メール送信などが主な候補となります。業務内容を詳しく分析しておくと、どの業務が自動化による効果が最も高いかを判断できます。
対象業務を選定する際には、従業員からの意見を積極的に取り入れると、現場のニーズに合った導入計画を立てやすくなります。
RPAツールの選定と導入準備
対象業務が決まったら、自社に適したRPAツールを選定します。
ツールを選ぶ際には、業務の特性や社内の既存システムとの相性を考慮することが重要です。例えば、クラウド型ツールを選ぶと初期コストを抑えられる一方、オンプレミス型は社内データをより厳密に管理できるなどの利点があります。
導入前には、システム要件やセキュリティポリシーとの整合性を確認し、トライアルやデモを活用して実際の動作を検証することをおすすめします。適切なツールを選ぶことで、導入後のトラブルを最小限に抑え、スムーズな運用が可能になります。
シナリオ作成とテスト実行
RPAの導入を成功させるためには、自動化する業務のシナリオ(ロボットの動作手順)の詳細な設計が欠かせません。
例として、データ入力業務を自動化する場合は、入力する項目や処理の順序、エラー時の対応手順などを明確に定義する必要があります。その後、作成したシナリオをもとにテスト環境で実行し、想定通りに動作するかを確認しましょう。
テストでは、業務内容に応じたさまざまなケースを想定し、不具合がないか徹底的にチェックします。不具合や改善点が見つかった場合は迅速に修正を行い、スムーズに運用できるレベルまで引き上げることが大切です。
本番運用と効果測定
テストをクリアしたRPAは、本番環境で稼働を開始します。本番運用では、RPAが業務プロセスに適切に組み込まれているか、期待通りの効果を発揮しているかを確認することが重要です。
例えば、「ミスの削減」や「作業時間の短縮」など、事前に設定した導入目的に対して、定量的なデータを収集し、成果を測定します。運用中に発生する予期せぬ問題や改善の余地を特定するためにも、定期的な状況確認を行いましょう。
運用後も継続的に改善を行い、新たな自動化の可能性を模索することで、さらなる効率化につながります。
RPAのシナリオ設計でよくある失敗
RPA導入後に「思ったように動かない」「途中で処理が止まる」といったトラブルが発生する場合、原因の多くはシナリオ設計段階の不備にあります。現場の実情に即した処理フローを正確に把握せずに設計を進めると、例外やバグに対応しきれなくなる可能性があります。
ここでは、RPAシナリオ設計でよくある3つの失敗と、回避するためのポイントを解説します。
業務フローの理解不足による処理漏れ
業務内容を正確に理解せずにRPAのシナリオを作成すると、処理の抜け漏れや不必要な分岐が発生しがちです。特に、現場独自の運用ルールや例外的な対応手順を見落とすと、エラーの原因になることが多いです。
例えば、毎月末だけ異なるファイル命名規則が適用されている場合、原因に気がつかないと処理が停止してしまいます。このような事態を防ぐためには、事前に業務担当者へのヒアリングを行い、業務の全体像と例外パターンを可視化することが重要です。
エラー処理を考慮していない
RPAのシナリオ設計では、常に処理が正常に進む前提で設計されがちですが、実際にはファイル未存在、ネットワーク障害、数値の不整合など、さまざまなエラーが発生します。
このような異常動作が起こった場合の対応を、あらかじめエラー処理として定義しておかないと、RPAが想定外の動きをして処理停止やデータ破損を招くおそれがあります。
「ファイルが見つからなければ通知」「データ形式が不正ならログ出力してスキップ」など、設計段階のエラーハンドリングの設計が重要です。
属人化してメンテナンスできない
RPAシナリオが特定の担当者だけに依存している場合、その人の異動や退職によって保守を継続できなくなるおそれがあります。
例えば、変数名や処理名が略語で統一されていたり、コメントがなかったりする状態では、第三者が内容を把握するのが困難になります。
このようなトラブルを防ぐためには、命名ルールや処理コメントの標準化、設計書の整備、レビュー体制の構築など、属人化を排除する体制づくりが重要です。「止まらない運用」を実現するための予防策として、重視しておきたいポイントのひとつといえます。
自社の業務フローから一歩進んだRPAのシナリオを作るコツ

RPAの効果を最大限に発揮するには、単に作業を自動化するだけでは不十分です。業務の本質や目的を見失わず、成果に直結するシナリオを設計することが重要です。
ここでは、効果的なRPAシナリオを作成するための3つのステップを紹介します。
まずは業務の目的とゴールを明確にする
RPAのシナリオを設計する前に、まずは「何のためにその業務を自動化するのか」を明確にしておく必要があります。目的が不明確なまま進めると、途中で設計の方向性がぶれ、期待した効果が得られなくなります。
「作業時間の削減」「ミスの防止」「成果物の品質向上」など、最終的なゴールによって、設計方針や優先順位は大きく変わります。作業単位でなく、業務全体を成果物ベースで捉えることで、本質的な改善に結びつくシナリオを設計できます。
手作業を処理単位で分割して可視化する
RPAで自動化する際は、対象業務を「処理単位」に分割する作業が欠かせません。例えば「Excelファイルを開く」「データをコピーする」「別シートに貼り付ける」といった、細かな操作に分解することで、RPAでシナリオを作成する際のステップがより明確になります。
分割した処理をフローチャートや業務フロー図として可視化すれば、関係者との認識共有やレビューもスムーズに進みます。加えて、抜け漏れ防止や重複の確認にもつながり、品質の高いシナリオ設計が可能となります。
例外処理・確認工程を事前に洗い出す
業務の中には、毎回ではないが一定条件で発生する「例外処理」や、人の判断が必要な「確認工程」が含まれることがあります。これらを明確に定義せずにRPA化すると、想定外の状況で処理が止まったり、誤ったデータが出力されたりする原因になります。
そのため、事前に例外条件や手動確認が必要な工程を洗い出し、「人とRPAの役割分担」を設計に反映させることが重要です。例外処理を丁寧に拾い上げることで、堅牢かつ運用に強いシナリオを構築できます。
RPAシナリオの保守・運用で押さえておきたいこと
RPAは、一度構築すれば終わりではありません。業務内容の変更やシステムの更新により、RPAシナリオの修正や運用体制の見直しが求められるケースも多いものです。
保守・運用の段階でトラブルや属人化が起こらないようにするためには、設計時から将来の変更に備えた仕組みづくりが求められます。ここでは、安定したRPA運用を継続するために重要な3つのポイントを解説します。
変更に強い設計・命名ルールを徹底する
RPAのシナリオが長く使われるほど、修正や機能追加の機会も増えていきます。そんなとき、変数名や分岐条件が曖昧だったり、処理フローが複雑に入り組んでいたりすると、どの部分を変更すべきか判断しにくくなり、保守性が低下します。
保守性を高めるためには、シナリオの設計段階から明確な命名規則やコメント記述のルールを設けておくことが重要です。
また、同じ処理を複数回使用する場合はサブルーチン化するなど、再利用性を意識した設計を行うことで、保守・改修の効率を向上できます。
シナリオ変更時のバージョン管理を行う
RPAシナリオに変更を加える際、修正履歴を残さずに上書きしてしまうと、問題発生時に原因を特定できないばかりか、ロールバックも不可能になります。
万が一のトラブルが起こったときに発生前の状態に戻すためには、シナリオファイルごとにバージョン番号を付け、変更理由や対応日を記録する運用ルールを徹底する取り組みが不可欠です。
バージョンはExcelなどを使って手動でも管理できますが、可能であればGitなどのソース管理ツールを併用すると、より履歴を可視化しやすくなり、チーム内の共有も容易になります。
運用状況をモニタリングし、改善につなげる
RPAを運用する中で、処理時間の遅延や異常停止などの問題が発生することもあります。こうしたトラブルを早期に把握し、対応につなげるためには、処理結果のログ出力や通知設定が欠かせません。
例えば、処理成功率・異常発生率・平均処理時間といった指標を定期的に確認し、改善ポイントを特定する取り組みが効果的です。
さらに、運用レポートの自動生成やエラー時のメール通知機能と連携させれば、メンテナンスコストを抑えつつ、安定稼働を実現できます。
RPAを上手く活用して日々の業務を効率化しよう
RPAは、繰り返し行われる定型業務を自動化し、業務効率を高められる便利なツールです。データ入力や転記、レポート作成、経費精算など、上手く取り入れることによりさまざまな分野で導入効果が期待できます。
特に中小企業や業務負荷の高い現場では、RPAの導入によって人的リソースをより創造性の高い業務に振り向けられるメリットがあります。効果的に活用して、時間やコストの削減だけでなく、業務の品質向上を実現しましょう。
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