
受注入力業務を効率的にするには?現状分析と効率化の手法、ツール活用、事例を紹介

受注入力業務は、顧客からの注文情報を正確かつ迅速に処理する重要な業務の一つです。
しかし、従来のアナログ作業や属人的な運用に依存している場合、ミスの発生や業務負担の増加といった課題が生じやすくなります。その課題を解決する手段として、最新のITツールやシステムの活用が進んでいます。
本記事では、入力ミスの削減、処理速度の向上、人的リソースの最適化を実現した企業の事例を交えながら、業務改善の具体的な効果を紹介します。また、業務の効率化が企業全体にもたらすメリットを考察し、最適な施策選定のポイントを解説します。
受注入力業務は、注文書の受領・確認からシステム入力、在庫の確認、関連部門との連携など多岐にわたります。
しかし、FAXや電話でのやり取りが多い場合、ヒアリング時の聞き間違いや記録ミスが起こりやすく、作業を担当する人への依存度が高まる傾向があります。
さらに、手入力が業務全体のボトルネックとなり、同じデータを複数回入力するなどの重複作業が生まれやすい点も問題です。結果として、都度の確認作業に時間を要し、業務全体の生産性が低下するリスクがあります。
担当者が休暇や離職などで引き継ぎの仕組みが不十分な場合、受注情報の把握やデータが散逸してしまう恐れがあります。こうした属人化やアナログ作業による課題が積み重なると、受注に関連する後続工程にも悪影響を及ぼし、出荷や請求などのプロセスでもミスや遅延が発生しがちです。このような課題を明らかにすることが、効率化への第一歩となります。
受注入力業務の主な流れとその課題
受注入力業務は、顧客からの注文情報を受領し、それを社内システムへ登録することから始まります。
ここで入力ミスがあると、発注伝票や在庫管理にも誤りが連鎖し、全体として大きな手戻りを引き起こします。ヒアリング、入力、確認作業という流れの中で、どこにミスや手間が集中しているのかを明確にすることで、改善すべきポイントが見えてきます。
アナログ作業の限界とミスの発生原因
FAXや電話などのアナログ手段を用いていると、注文内容の見間違いや書き落としによるヒューマンエラーが起こりやすいです。
文字が読みづらいFAXや、口頭でのやり取りで発生する聞き間違いは、入力ミスの原因になります。また、これらのアナログ工程では記録や管理が担当者の裁量に依存しやすく、後からの追跡が難しくなる点もリスクです。
属人化によるリスクと業務負荷
特定の担当者だけが受注入力の手続きを把握している場合、担当者が不在になると業務が停滞してしまいます。
新人教育や引き継ぎの体制が不十分な場合は、同じ業務でも対応方法に個人差が生じ、ミスが増える要因になります。属人化が進むほど、繁忙期や緊急時の対応能力が落ちるため、企業全体のリスク管理の観点からも改善が必要です。
入力ミスや手動作業による効率の低下
受注件数が増えるほど、入力ミスが発生するリスクは高まり、修正や再入力のための工数が増大します。
確認や訂正に時間と労力を割かなければならず、業務効率が下がる悪循環に陥ることになります。手動作業が多い環境では、ダブルチェックを入れてもヒューマンエラーがゼロになるわけではないため、根本的な対策としてシステム化や自動化が求められます。
受注入力業務だけでなく、周辺業務や全体管理に目を向けることで、さらなる改善余地を探ります。
受注入力を円滑に進めるには、入力情報を参照する周辺部門との情報共有や標準化が欠かせません。しかし、部署ごとに使用するシステムや管理形式が異なる場合、入力フロー以外でのボトルネックが発生します。
たとえば、在庫管理や出荷管理が別システムの場合、受注データを改めて手動で転記しなければならず、組織全体で二重入力の負担が増えてしまいます。
これらの複雑な運用や業務の標準化がされていない状態では、データの正確性やリアルタイム性が損なわれ、担当者間の混乱やモチベーションの低下を引き起こします。最終的には顧客満足度に影響し、ビジネス全体の競争力を下げる要因にもなり得ます。
煩雑な管理や標準化の欠如
手順やフォーマットが担当者ごとに異なると、書類やシステムへの入力方法までバラバラになり、トラブル発生時の原因追及も難しくなります。統一的なガイドラインやマニュアルがないままだと、改善策を導入しても浸透しづらく、せっかくの取組みが根付かないことがあります。標準化の不足は業務効率だけでなく、品質管理やトレーサビリティの点でも大きな課題を生みます。
受発注業務全体への影響
受注業務の遅れが発生すると、在庫不足を招いて顧客に商品を届けられないリスクが高まります。
加えて、出荷業務や請求処理にも遅れが波及し、顧客満足度の低下や機会損失につながる可能性があります。受注から発送・請求までをトータルに考慮し、情報をスムーズに流通させる手立てが求められます。
受注入力の効率化にはシステム導入だけでなく、既存の業務プロセスを見直し、無駄を省く工夫が不可欠です。データ入力の際に属人的な対応を減らすためには、受注情報を自動的に取得・連携させる仕組みを整えるとともに、標準化されたフローを構築することが求められます。加えて、RPAやマクロなどのツールを導入するだけでも、日々の入力ミスや確認作業を大きく削減できるケースがあります。
これらの取り組みを進めることで、業務担当者自身が付加価値の高い仕事に注力できる環境を作り出すことが可能です。初期コストを抑えつつ、段階的にシステムを導入し改善するアプローチで、小さく始めて大きく育てる方法もあります。
電子データの活用で入力作業を簡略化
従来は電話やFAXを介して注文を受け取り、手書きメモからシステムへ転記するケースが多く見られます。これを電子データ化することで、注文情報入力の手間や誤入力を大幅に抑制できます。専用のフォームやオンライン注文を利用すれば、顧客が直接入力したデータがそのままシステムに取り込まれ、二重入力のリスクを減らして効率化を実現します。
<関連記事>【事例あり】受注業務効率化の課題や具体的な対策方法を詳しく解説
データ連携を活用した自動入力
受注管理システムと在庫管理、出荷管理などのシステムを連携させると、一度登録した情報が自動で他の業務にも反映されます。これにより、入力作業自体が減少し、ヒューマンエラーも大きく削減可能です。システム間のAPI連携やクラウドサービスを活用することで、スムーズなデータの受け渡しと更新が期待できます。
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RPAなどの自動化ツールの導入
反復的で定型的な入力作業は、ロボットソフトウェアを使ったRPAに適しています。ルールが明確な業務であれば、自動化によって担当者がチェックや判断などの重要な作業に専念できるようになります。ミスを防ぐだけでなく、24時間365日稼働させることも容易なため、業務全体のスピードアップと人的コストの削減が期待できます。
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Excel VBAやマクロでの簡易自動化
基幹システムの導入までは予算やリソースが限られる場合、まずはExcelのVBAやマクロで一部手作業を自動化する方法があります。
定型フォーマットのデータ処理や集計などは比較的容易に自動化可能なため、短期的な効果を得やすいのが特徴です。ただし、複雑な業務が増えるほどメンテナンスが難しくなるため、中長期的にはシステム導入の検討が必要です。
AIエージェントによる効率化
近年では、AIを活用して注文内容の判別や自動仕分けを行うソリューションが登場しています。高度な文字認識や自然言語処理の技術を導入することで、複雑な注文内容でも誤入力が減少し、担当者の負荷をさらに軽減できます。将来的には、問い合わせや交渉といった業務面にもAIが補佐役として入る可能性があり、より付加価値の高い業務に集中できる環境が期待されます。
受注管理システムの導入
専用の受注管理システムを導入することで、受注入力から在庫、出荷、請求まで一元管理が可能になります。これによりデータの整合性が保たれ、リアルタイムで各工程のステータスが確認しやすくなります。システムによっては、権限管理や履歴追跡などの機能を備えており、コンプライアンス面の強化にも寄与します。
SaaS型クラウドサービスの統合運用
クラウド型の受注管理サービスを利用するメリットは、初期投資を抑えつつ、常時最新のシステムを使える点にあります。自社サーバーを持たないため、導入・運用の負担を軽減でき、セキュリティ面の対策もサービス提供側が行う場合が多いです。また、必要に応じてプランや機能拡張がしやすいので、ビジネスの成長スピードに合わせた段階的な最適化が可能です。
一元管理による透明性の向上
受注情報が複数の部署にまたがる場合でも、システムによる一元管理が実現すれば、業務プロセス全体の可視化が可能になります。リアルタイムで進捗を把握できるため、納期の遅れや在庫不足が発生しそうな場合にも、速やかに対策を講じやすくなります。透明性が高まることで部門間の連携が円滑になり、顧客対応の精度も向上します。
ダブルチェック体制で精度を向上
どんなにシステム化を進めても、最終的には人の目で確認する工程が重要になります。ツールと人手によるクロスチェックを取り入れることで、ヒューマンエラーとシステムエラーの両面を保管し合う体制が構築できます。高い精度が求められる受注業務では、効率化と正確性のバランスを取ることが鍵となります。
次に、実際に取り組みを行った企業の導入事例をいくつか紹介します。
自社の状況に近い事例を参考にすることでより具体的にイメージが湧き、ツール選定や運用設計に役立ちます。さらに、業界特有の要件に対応できるかどうかもチェックします。
受注から出荷までの業務効率化
有限会社Takumiは、各ECモールとネットショップ受注管理システム、WMS、送り状発行システムなどとのデータ連携を手作業でおこなっていたため、担当者に相当な負荷がかかっていました。
そこでRPAツール「Autoジョブ名人」を導入し、受注管理システム「助ネコ」やWMS、B2クラウドとのデータ連携を自動化しました。
これにより、年間約1,150時間の業務を自動化し、効率化を実現しました。特に出荷業務の一連の処理が自動化され、担当者の負担は軽減されました。
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朝8時・365日実行する受注作業を自動化
株式会社パルグループホールディングスはECモールから受注データや在庫データを手作業でダウンロードし、在庫分析クラウドサービスにアップロードしていました。また、この業務を毎日、欠かさず定時に作業することは難しく、土日の作業は不可能でした。
RPAツール「Autoジョブ名人」を導入し、前日分の受注データと在庫データを365日、翌朝8時に自動でダウンロードすることに成功。これにより、担当者の負担はなくなり、会議や本来の業務に集中することができました。
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WebEDIの受注業務を自動化し年間3,276時間を削減
食品卸売業の株式会社マツヤは、ホテルやレストラン、ハウスウェディング向けにヨーロッパからの輸入食材を提供しています。
同社では「遠方から空輸を行う必要があるためリードタイムが短い」という業務の性質上、前夜に届いた注文を翌朝6時には発注処理しなければならず、スムーズな処理を行うための工夫が必要な状況にありました。
この課題に対応するため、Autoジョブ名人」を導入し、ホテル購買システム「IPORTER」と企業間商取引クラウドサービス「BtoBプラットフォーム」から受注データをダウンロードする作業を自動化しました。
1か月で106本もの自動化シナリオを開発し、年間で3,276時間もの業務効率化を実現しています。RPAの導入によって業務効率は大幅に向上し、リードタイムを守りながら、効率の良い業務運営を実現しました。
なお現在、受注業務の定型業務だけでなく、非定型業務について「受注AIエージェント」での自動化を検討し、PoCを実施。その結果、「IPORTER」からの受注データ取得から基幹システムへの連携まで、93.0%以上での自動化に成功。受注AIエージェント導入を本格検討するに値する結果であると、高く評価いただきました。
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受注入力業務を効率化するためには、導入時の費用対効果やマッチするツールの選択だけでなく、社内の理解や協力を得るステップが欠かせません。新しい仕組みを上手く活用するには、きちんとした教育環境や運用サポート体制が必要です。導入後も継続的に業務フローを見直し、改善していく姿勢が、最終的に高い成果をもたらすでしょう。
また、早急にすべてをデジタル化するのが難しい場合は、一部のプロセスだけ先に自動化するなど、段階的に導入する方が現場への負担が少なくなります。コストやリソース、システム運用の知識など、自社の状況を踏まえて検討を進めることがポイントです。
導入時のコストと適したツールの選択
システム導入時に重要なのは、自社に合った機能を過不足なく選ぶことです。必要以上に複雑なシステムを導入すると、かえってユーザーが使いこなせずに混乱を招く恐れがあります。初期費用だけでなく、運用コストや保守サポートにも目を向けて、長期的なROIを想定しながら検討を進めましょう。
社内教育と情報共有の重要性
新しいツールやシステムを導入しても、現場で使いこなせなければ意味がありません。操作方法を含めた研修や、マニュアルを整備して共有するなど、社内教育が必須となります。
また、情報の共有も大切で、各部門がシステムに入力したデータを常に正しく活用できるようにすることで、全社的な効率アップとミスの減少を促します。
業務フロー見直しと改善プロセスの継続
1回のシステム導入で全ての問題が解決することは稀であり、定期的に業務フローを見直すプロセスが必要です。
PDCAサイクルを回し、運用中に判明した課題を洗い出して修正することで、効率化の度合いが徐々に高まります。このように、常に改善を続ける姿勢が、長期的な成果を維持する秘訣です。
運用サポート体制を整える
システムエラーや想定外のトラブルが起きた場合、迅速に対処できるサポート体制の有無が成果を左右します。
ベンダーや社内のIT担当者との連携が密に取れれば、問題を早期に解決し、ダウンタイムを最小限に抑えられます。安定稼働を続けることで、受注入力の効率化による利益を最大化できるでしょう。
効率化の取り組みは、受注入力だけでなく企業全体の業務改善へとつなげることが可能です。
受注入力業務を最適化することで、在庫管理や出荷、会計処理など、さまざまな部門にも良い影響が及びます。情報連携がスムーズになると、部署ごとの無駄な作業や待ち時間を削減できるため、企業全体でのコストダウンやサービス品質向上が期待できます。最終的には、顧客満足度の向上や競争力の強化など、経営面でのメリットも得られるでしょう。
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