
RPA・ローコード・ノーコードを徹底解説:業務自動化の新常識

RPAツールやノーコード・ローコードツールといった業務自動化を実現する手法について解説します。それぞれの概要や具体的な活用事例、導入メリット・注意点を知り、自社に合った最適なソリューションを選択し、業務プロセスの自動化を目指しましょう。
RPAは大量のデータ入力などの繰り返し作業や定型的なレポートの作成などをソフトウェアロボットが代行する技術です。一方、ノーコード・ローコードは、プログラミングの専門知識を必要とせずにシステムやアプリケーションを開発できる点が注目を集めています。
これらの自動化技術を上手に取り入れれば、開発コストや時間の削減に加えて、業務プロセスの大幅な効率化を実現できます。自社の課題やニーズを整理しながら、それぞれの適用範囲と導入のポイントについて理解を深めましょう。
1.RPAとは?仕組みと特徴
まずはRPAの基本となる仕組みや特徴を理解し、どのような業務を自動化できるのかを見ていきましょう。
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上で行われる業務プロセスをソフトウェアロボットが代行する技術のことです。人の手作業で行われるルーティンワークを自動化することで、作業時間の削減やヒューマンエラーの低減が期待できます。特に繰り返しの多い入力作業や、複数ツール間の情報連携などが得意分野です。
たとえば、経理部門での請求書発行や総務部門でのデータ入力など、手間と時間がかかる業務を効率化する強力なソリューションとして活用されています。プログラミングスキルが不要なツールも多く、ユーザーが画面上でシナリオを設定すれば、ロボットが業務手順を正確に再現してくれます。
成果を上げるためには、既存の業務フローをしっかりと洗い出したうえで、どこを自動化するのか明確にすることが不可欠です。RPAを導入する前には、対象業務の手順やルールを整理し、標準化しておくと効率的な運用が可能になります。
1-1.RPAの主な機能とできること
RPAの主な機能として挙げられるのは、画面操作の自動化、データの読み取りと転記、複数システム間のデータ連携などです。たとえば、毎日定型的に行われる売上データの集計や、帳票の発行と送付などはRPAが得意とするタスクといえます。また、業務の途中で発生するチェック作業やエラーハンドリングも、あらかじめルールを定義しておくことで自動化可能です。
1-2.RPAが得意とする業務例
RPAが特に力を発揮するのは、入力項目や手順がほぼ固定化されている業務です。例えば、社員の勤怠データを各種システムに入力し直したり、日次や週次レポートを作成したりといった作業にも有効です。こうした単純かつ繰り返しの多い処理を自動化することで、担当者はコア業務に注力できるようになります。
2.ノーコードとは?初心者が押さえておきたい基本
ノーコードはプログラミングスキルがなくてもシステムやアプリを開発できる、新しい開発手法です。
ノーコードとは、ドラッグ&ドロップやテンプレートを使って直感的に開発できるツールやプラットフォームを指します。あらかじめ用意されたパーツを配置するだけで、裏側で必要なコードが自動生成される仕組みです。プログラミングに不慣れな担当者でも手軽にアプリやウェブサービスの作成ができる点が注目されています。
また、ノーコード開発はプロトタイプづくりにも適しており、新しいアイデアを素早く形にするのに役立ちます。例えば、内部業務用の簡易ツールを試作して、現場で即座に利用できる利便性は大きなメリットといえます。プロジェクトの初期段階から現場担当者と連携しやすくなり、要件のすり合わせがスムーズに進めやすい点も魅力です。
ただし、あまりにも複雑で大規模なアプリや機能を実現しようとすると、対応が難しくなるケースがあります。その場合には、要件を小分けにして開発を進めるか、ローコードや従来型の開発と組み合わせるなど工夫が必要です。
主なノーコードツールは以下のものが挙げられます。
Webサイト作成:STUDIO、Webflow、Wix、Jimdo、ペライチ
業務アプリ:kintone、PigeonCloud
2-1.プログラミング不要の開発スタイル
ノーコード開発ではコードを書く必要がなく、テンプレートやブロックを組み合わせて画面を設計します。専門的な知識を要しないため部門横断的に利用しやすく、IT部門以外のスタッフが主体的にシステム開発を進められるのが強みです。ツールによっては自動テストやクラウド環境へのデプロイなどが簡単に行えるため、導入ハードルが低い点も魅力といえます。
2-2.ノーコードのメリット・デメリット
ノーコード最大のメリットは、開発スピードと初期コストの低さにあるといえます。専門的な人材の確保が難しくても導入しやすく、アイデアをすぐに形にしやすい点が利点です。一方で、大規模・複雑なプロジェクトへの適用には限界があり、詳細なカスタマイズが必要な場合には対応が難しくなる可能性があります。
3.ローコードとは?少しのコードで実現する効率的開発
ローコードはノーコードとフルスクラッチ開発の中間に位置し、最低限のプログラミングで柔軟な機能を実装可能です。
ローコードは、テンプレートやサンプルコードを活用しながら、一部の機能は自分でコードを追加して開発するスタイルです。ノーコードよりカスタマイズ幅が広いため、要求仕様が複雑なシステムや拡張性を求められるプロジェクトに向いています。開発者のスキルレベルに合わせて、画面設計だけでなくバックエンド処理にも手を入れられる柔軟性が強みです。
また、ビジネスロジックを標準化するパーツが用意されているツールが多く、安心して開発を進められます。例えば、認証機能やデータベース連携など、基本的な機能はあらかじめテンプレート化されていることが多いです。これにより、チーム内での再利用も進めやすく、プロジェクト全体の効率が向上します。
主なローコードツールは以下のものが挙げられます。
Webアプリ開発対応:Mendix、Accel-Mart、WebPerformer、OutSystems、Microsoft Power Apps
プラットフォーム対応:Salesforce Customer 360、ServiceNow App Engine Studio
3-1.ローコードの特徴
ローコード開発環境の特徴として、ブラウザ上でのGUI操作と少しのコード補完で多機能なシステムを作り上げられる点が挙げられます。コードをゼロから書く負荷を減らしつつ、プロ仕様の要件にも柔軟に対応しやすいのが利点です。加えて、ビルトインされたUIコンポーネントや連携モジュールを活用すれば、テスト工程の負担も軽減できます。
3-2.ローコードのメリット・デメリット
ローコードはノーコードと比べて高度な機能実装が行いやすく、既存システムとの連携も柔軟に対応できます。ある程度のプログラミング知識は必要ですが、その分業務要件に合わせた細かなカスタマイズが可能です。ただし、ツールやフレームワークの制約がある場合もあり、完全なフルスクラッチの自由度と比べれば限界がある点を踏まえておく必要があります。
4.RPAとノーコード/ローコードの違い
自動化における役割や得意分野が異なるRPAとノーコード/ローコード。その違いを明確にすることで、適切な使い分けが可能になります。
RPAは既存の業務フローをそのまま自動化するのに適しており、画面上の繰り返し操作を代行する点が特徴です。これに対して、ノーコードやローコードは新規のシステムやアプリケーションを開発する際に用いられる技術です。つまり、RPAは「いまある作業を自動化する」、ノーコード/ローコードは「新しい仕組みを作る」という棲み分けだと捉えると分かりやすいでしょう。
4-1.自動化領域の違いと得意分野
RPAは既存の業務手順をそのまま実行させることが得意で、表やフォームの入力、システム間のコピペ作業など、人間が行うマウス操作やキーボード操作を代行します。一方、ノーコードやローコードは、ユーザーが使いやすいアプリケーションを短期間で構築するのに適しており、新規開発や他システムとの連携機能を柔軟に実装できる点が優れています。
4-2.組み合わせることで広がる業務自動化の可能性
RPAによる定型業務の自動化と、ノーコード・ローコードによるアプリ開発を組み合わせれば、さらに広範囲な業務効率化が実現できます。例えば、RPAが取得したデータをノーコードで作成したダッシュボードへリアルタイムに反映させるなど、現場担当者が欲しい情報を即座に可視化できる仕組みを作れます。両者を補完的に活用することで、単なる自動化の枠を超えたビジネス革新を目指すことができるでしょう。
5.RPA×ノーコード/ローコードの導入メリット
RPAをノーコード/ローコードで補強することで、開発・運用双方のスピードが上がり、現場の柔軟な対応も実現できます。
RPA自体は、既存業務を自動化する利点を持ちますが、運用後に仕様の変更や新機能が必要となる場合には、メンテナンスや改修が求められます。そこで、ノーコードやローコードの開発手法と組み合わせると、追加要望を柔軟に取り込みやすくなります。特に、現場担当者が自らアプリの修正や運用管理を行えるようになれば、IT部門への依存度を下げられます。
これにより、ロボットやアプリケーションの運用コストを削減しつつ、スピーディーな事業対応が可能になります。さらに、社内に点在する複数のツールやデータをつなぎ合わせ、業務全体をシームレスに自動化できる点でも強みが発揮されます。
5-1.開発スピードの大幅な向上
プログラミング工数を大幅に削減できるノーコード・ローコードを活用すれば、短期間でもアプリやシステムの開発が進められます。業務に必要な機能を素早く構築し、RPAの自動化プロセスと組み合わせやすくなるため、全体的な業務フローの改善を速やかに実現できるのです。
5-2.現場担当者でも運用・改修が可能
ノーコードやローコードを活用することで、開発経験の浅い担当者でもアプリの修正や機能追加ができます。RPAによる自動化シナリオと組み合わせることで、業務現場の担当者自ら運用と改善をリードできるようになり、柔軟かつタイムリーなアップデートが可能になります。
5-3.シャドーIT対策とガバナンス強化
ノーコードやローコードを正しく活用すれば、現場が勝手に利用する非公式ツール(シャドーIT)の乱立を防ぎ、企業全体として統制を取りやすくなります。RPAにおいても同様で、一つのプラットフォームやガバナンスルールのもとにプロジェクトを管理すれば、情報漏洩やシステム障害のリスクを低減できる点が大きな利点です。
6.RPAとノーコード/ローコード導入の注意点
導入範囲やセキュリティなど、RPAやノーコード/ローコードを導入する際に見落としがちなポイントを整理します。
RPAやノーコード/ローコードを導入するにあたっては、いきなり全社的に広げるのではなく、まずは小規模なプロジェクトで検証するのが望ましいです。実際の運用で起こりうる課題を早期に把握し、本格利用に備えるステップを踏むことで失敗リスクを最小化できます。またセキュリティ面での対策やアクセス権限の設定についても、初期段階から十分に検討すべきです。
6-1.導入範囲の見極めとスモールスタート
自動化や開発をどこまで対象とするか決める際には、完成イメージだけでなく、現場が抱える具体的な課題やリソースの有無も考慮する必要があります。まずは小さなユースケースで成功事例を作り、その後徐々に適用範囲を拡大することで、システム定着率と効果を高められます。
6-2.セキュリティ・管理体制の整備
ノーコード・ローコードやRPAツールを活用する場合は、アクセス権限やデータの取り扱いについて明確なルールを設けることが重要です。特にクラウドベースのツールを使う際には、パスワード管理やユーザーごとの権限設定など、セキュリティに関するポリシーを徹底しなければなりません。管理体制を整えておくことで、トラブル発生時のリスクを最小限に抑えることができます。
7.RPA・ノーコード/ローコード活用事例
実際にRPAやノーコード/ローコードを導入した具体的な事例を知ることで、自社への導入イメージを具体化できます。
事例から学ぶことで、導入時に陥りがちな課題を事前に把握でき、コストやスケジュールの最適化にもつながります。ここでは二つの例を紹介しますが、ニーズや目的が異なるため、自社環境に合わせたアレンジを検討してください。
7-1.RPAの事例:経理業務の負担軽減、コスト削減
請求書の発行や経費精算のチェックなど、人手で行うとミスや時間ロスが発生しやすい経理業務をRPAで一括自動化した事例です。
経理業務における電子帳簿保存法への対応に、多大な負荷を感じていたユーザックシステムは、RPA「Autoジョブ名人」と「Autoメール名人」をNTTデータのクラウドサービスである「ClimberCloud」と連携させることで、電子取引データの保存を完全自動化しました。検索要件を満たしたデータ保存を可能にし、業務負荷をゼロに抑えつつ法的対応を実現しました。また、業務効率化にも寄与し、経理スタッフの負担軽減とコスト削減を達成しました。
ユーザックシステムの電子帳簿保存法対応業務の自動化事例はこちら→
7-2.システム連携で日次集計作業を自動化した事例
別々に運用していた売上管理システムと在庫管理システムを、ローコードの連携機能を用いて統合し、さらにRPAで日次集計やレポート作成を自動化した例もあります。以前は手動でCSVファイルをダウンロードしてExcelでまとめる手間がかかっていましたが、導入後は担当者がボタンを押すだけで最新のレポートが生成されるようになりました。これにより、管理部門ではより精度の高い経営判断を迅速に下せるようになったといいます。
8.導入ステップと進め方のポイント
RPAやノーコード/ローコードを導入する際には、事前の業務整理から本格運用まで一連の流れを把握しましょう。
対象となる業務やプロセスを詳細に洗い出し、要件を整理します。その後、要件に合ったツールを選定し、テスト導入を経て問題点を洗い出した上で、本格運用に移行する手順を踏むのが一般的な流れです。ここでは主なステップを確認していきましょう。
8-1.業務洗い出し・要件定義
まずは現場ヒアリングやデータ分析を通じて、どの業務が自動化やシステム開発に向いているかを明確にします。データ入力作業や承認フローなど、既存の作業プロセスを視覚化することで、導入効果を見込みやすくなります。要件定義の段階で関係部署との連携を強化しておくのが成功へのカギです。
8-2.ツール選定とパイロット運用
複数のツールから操作性やライセンスモデル、サポート体制などを比較検討し、最も適したものを選びます。選定後は小規模な部門や限定的な業務でテスト運用を行い、実際の使用感を把握すると同時に、運用での課題を洗い出します。うまくいけば、その実績を社内展開の参考として活用できます。
8-3.本格導入と運用・保守
検証結果を踏まえ、課題を解決したうえで全社規模の導入に進みます。新しいシステムやRPAロボットが正しく動作し始めた後も、定期的にメンテナンスや更新を行う必要があります。継続的に改善しながら運用する体制を構築し、追加で見つかった自動化可能な業務を随時取り込んでいくのが理想的です。
まとめ:RPAとノーコード/ローコードを組み合わせて業務自動化を加速しよう
RPAとノーコード/ローコードを適切に活用することで、高度な業務自動化とスピーディーなシステム開発を両立し、ビジネス全体の競争力を高められます。
RPAは既存業務の効率化に、ノーコードとローコードは新規開発や柔軟な機能追加に適しています。両者を組み合わせて導入することで、企業の生産性を飛躍的に向上させるだけでなく、従業員がより価値のある業務に注力できる環境を整えることが可能です。まずは自社の課題やリソースを見極め、小さな成功事例を積み重ねながら導入を進めていきましょう。
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