デジタルトランスフォーメーション(DX)とRPA

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)とは、新しいITによる社会の変容や進化を意味します。新しいIT技術のひとつであるRPAはどのような効果をわれわれにもたらしてくれるのでしょうか。
ここでは、今日の日本で求められている DX の概要と、RPA(Robotic Process Automation)の関係について説明します。自社にとってどのような影響が予想されるのか、RPA導入によりどのような効果が期待できるのかについて見ていきましょう。

 

DXを理解する

DXとは何かということについては、多くの人や組織によるさまざまな解釈がありますが、ここでは提唱者、調査会社、政府機関による定義をご紹介します。

DXは2004年にスウェーデンの大学教授、ストルターマンが提唱した概念で、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものです。ITと現実の融合や、デジタルツールの利用、それにともなう課題解決方法の開発の必要性を指摘しています。

ITやインターネットが一般化した2014年に、IT調査会社のガートナー社は、企業のIT利用には3段階あり、その最終段階に行くまでの改革プロセスを「デジタルビジネストランスフォーメーション」と定義しています。具体的には、第1段階は社内の業務プロセス改革、第2段階はビジネスと企業、人を結びつけ統合する、第3段階(最終段階)では第2段階にモノが加わり相互作用をもたらす状態を「デジタルビジネス」としています。

経済産業省では2018年9月に「DXレポート」を公表しており、そのなかで「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する」ことをDXだとしています。本レポートでは日本企業のIT環境の実態について警鐘を鳴らしており、DX実現のためにレガシーシステムの更改や移設、業務プロセスやコスト構造の変革など、各種の課題を解決することが必要と指摘しています。

 

今、求められるDX

今のところ、企業におけるDXは「ITを活用し新しいビジネスの展開にいたること」という定義が一般的なようです。昨今のデジタル技術の発展や市場環境の変化のスピードは速く、対応するためにはITが必要なのは明らかです。

ただし、ITを活用したビジネスを始められる段階にたどり着くまでには、さまざまな課題を解決しなくてはなりません。平成初期以前から基幹システムを導入するほどの規模のある会社では、レガシーシステムの更改や廃止の影響で、DXへの取り組みに難航しているところがあります。DXの推進どころか、既存システムの維持コストが経営に影響を及ぼしていたり、システムベンダーのサポート終了によって大打撃を受けかねなかったりするところもあるようです。

日本企業におけるDXとは、レガシーシステムから脱却し、AIやビッグデータ、RPAなどの新しいITを取り入れ、いかに市場環境に適応するのか、競争力強化を実現するかであるともいえるでしょう。

 

RPAを活用したDXの事例

ここで、DXにRPAを活用した取り組み例をご紹介しましょう。RPAはおもに事務作業の省力化をはかるものと捉えられがちですが、事業分野によっては新しいビジネスを展開することもできるのです。

人材派遣会社によるRPAロボットの提供

BPOサービスも行う人材派遣会社P社は、本来BPOで対応する業務に対し、クラウド型のRPAを労働力として提供するサービスを2018年11月に始めました。従来の人材派遣やBPOと違い、人間ではなくソフトウェア型のロボットが業務を行います。

RPAは自社で構築、運用を行うのが通常ですが、P社は顧客企業からアウトソーシングしたい業務範囲をうかがい、それに適したクラウドRPAを用意します。クラウド方式ということもあり、RPAを使うための自社リソースを特に必要とせず、必要なときに任せたい業務量を依頼できるという、同社の人材派遣業としてのビジネスを、人的リソースではなくデジタルで具現化しています。
既存の事業に新しいITのRPAをうまく組み合わせたP社の新たなビジネスの開拓は、DXの典型的な例といえるでしょう。昨今の人材不足や働き方改革により、業務効率化を必要としている企業にとっても望ましいDXといえます。

労働力を人に限らず、デジタルのRPAロボットを併用するという発想の切り替えもまた、広義のDXなのです。

BPO会社によるRPAを含めた業務代行提案

BPOの国内最大手N社は、2019年7月にIT技術を活用した新しいアウトソーシングサービスを提供することを発表しました。同社は従来のBPOサービスに加え、RPAやOCR、AI、クラウドを最適に組み合わせたソリューションを提供すると表明しています。

N社は長年のBPOの実績を生かし、得意とする間接・事務業務に対して、マネジメント型アウトソーシングを実施してきました。それに加え、RPAやAI搭載のOCR(文字認識)、HRテックも援用したサービス提供が可能になったといいます。

BPOには労働集約的なイメージがありますが、このような事業にもDXが及んでいます。人材不足はどの業界でも深刻であり、RPAやその他の最新のIT技術と人的労働をミックスしたサービスの提供は、今後バックオフィス業務請負サービス業以外でも見られるようになるでしょう。

 

RPAなら環境変化への対応が可能

前述のガートナー社のIT利用の3段階の定義に基づくと、企業におけるDXにおける最終段階は新しいデジタルビジネスの創出となります。しかし、すべての企業がその段階にたどり着いているわけではなく、第1段階の業務プロセス改革や、第2段階のビジネスと企業、人との結合をはかっている段階にある企業もあります。

RPAの基本機能は、DXの第1段階の業務プロセス改革における業務の自動化です。それを一足飛びに最終段階までもっていくには、自社の体制整備もさることながら、事業化・収益化のポテンシャルがあるかどうかも重要なポイントです。

自社の事業分野によっては、RPAの活用はDXの第1段階にとどまることもあります。だからといってRPAはDXの最終段階を実現するのに不要だというわけではなく、最終段階の実現に欠かせない市場適応に役立つものです。

なぜなら、RPAは自社内で構築や運用が可能なシステムのため、市場環境や業務実態の変化があっても、柔軟にシステムを(再)構築することで、すぐに対応可能だからです。RPAは従来型のシステムと違い、外部環境の変化による業務プロセスのブラッシュアップや、作業環境(サイトやシステム改変など)の変更によるアップデートを、ユーザー自身で行うことができます。

ただし、それにはRPAを扱える人材の育成や運用体制の整備が必要になります。RPAベンダーによってはRPAの構築だけでなく、導入・運用支援サービスを提供している会社もあるので、選定の際に考慮したいところです。

 

RPAとともに戦略的なDXを目指す

多くの企業がITを活用した新事業の開発・提供をするようになれば、それは市場環境の変化要因のひとつとなるでしょう。これからの時代はよりいっそうの効率性やスピードが求められると考えられ、RPAをはじめとした新しいIT技術による対応が不可欠になります。

RPAは従来型のシステムと違い、ユーザーが改修を行えるため、環境変化に対して柔軟かつ素早い対応が可能です。RPA導入により、業務フローの見直しや再構築などを行うと、業務改善のきっかけにもなるでしょう。旧システムの見直しとともに、RPAを導入し、戦略的なDXにつなげていきましょう。

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