“ブラックボックス化した”EDIシステムをどう変えたか
モランボンのDX戦略

ソリューション RPA受発注 製品名 Autoジョブ名人EOS名人.NET 業種 製造業

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※本記事はTechTarget Japanより許諾を得て掲載しています。転載元:TechTarget Japan  2022年5月18日掲載記事より転載

DXという言葉がまだ浸透していない2011年、食品メーカーのモランボンは30年間利用してきたメインフレームのEDIシステムを刷新する業務改革を決意した。EDIシステムの刷新とDX推進の軌跡を、推進したキーパーソンに聞いた。

30年近く使い続けたEDIシステムのオープン化を決断

経営戦略室 室長 姜 永福 氏

モランボンは、素材の味が生きる焼肉のたれ「ジャン 焼肉の生だれ」、韓国・朝鮮食文化の魅力を提案する「韓の食菜」、本場韓国の農産物100%にこだわった「韓キムチ」、手作りによる美味しさ、だんらんを生む「中華皮」など、多様化する食ニーズ・食シーンをとらえた数多くの商品を製造し、全国各地のスーパーなどの販売店に展開する。それだけに同社のEDIシステムは重要な役割を担っている。

このEDIシステムをオープンシステムに刷新するプロジェクトを開始したのは2011年のことだった。当時、メインフレームはリプレース時期を迎えていた。そこで同社が選んだのが「オープン化」という選択肢だった。

「メインフレームで稼働していたEDIシステムは追加開発を繰り返しながら30年近く使い続けていたもので、プログラムは継ぎはぎ状態でブラックボックス化し、運用も属人化していました。蓄積されたデータ量も膨大で、受注データの処理に遅延が発生するケースもありました。そのため保守チームは常にシステムの状態を監視し、遅延が起こらないように対処する必要があり、多大な運用負荷が掛かっていたのです」と、当時の状況を語るのは、モランボンの姜 永福(カンヨンボ)氏(経営戦略室 室長)だ。

さまざまな課題を抱えながらもどうにか使い続けてきたEDIシステムだが、2011年3月に発生した東日本大震災が決定打となった。震災時の計画停電などによってメインフレームが完全停止するという事態に陥った。

「当時は自社にメインフレームを設置していましたが電源のバックアップが数時間しかなく、計画停電の影響を受けてしまいました。この事態を受けてデータセンターに移管することも検討しましたが、移管作業による数日間の稼働停止は避けられませんでした。そこで、先行してオープン化を進めていた生産管理システムの経験と実績を踏まえ、EDIシステムもオープン化することを決断しました」(姜氏)

ミッションは、ビジネスを止めることなくEDIシステムの刷新を果たすこと

オープンシステム化に当たっては、複数ベンダーのEDIシステムから候補を選んで比較・検討した。最終的に、ユーザックシステムのメーカー、卸売業向けEDIパッケージ「EOS名人.NET」を新たなEDIシステムとして導入することを決定した。

EOS名人概念図

姜氏は、EOS名人.NETを採用したポイントとして「データマッピングの簡単さ」「対応スピードの速さ」「サンプルシステムの活用」の3点を挙げる。

「EOS名人.NETには優れたマッピングツールがあり、データレイアウトの変更や追加の際に、パラメーターを設定するだけで簡単にマッピングできます。ユーザックシステムのレスポンスも非常に良く、当社のさまざまな要望に素早く対応してくれました。EDIシステムの開発では、実際のサンプルシステムを提供してもらえたことで開発イメージがしやすくなり、スムーズに開発できると判断しました」(姜氏)

EOS名人.NETのマッピングツール

EOS名人.NETの採用が決定すると、EDI刷新プロジェクトが本格的に始まった。ここで大きな問題になるのが、メインフレームからオープンシステムへの本番環境の移行だ。

「当時、メインフレームの受注システムでは300受信以上と月間約120万明細のデータを受信して、1日に約4万明細を処理しており受注内容を各出荷拠点へ迅速に指示を出さなくてはならないため、メインフレームを止めることなくシームレスにオープンシステムに移行することが必須条件でした」(姜氏)

こうした問題に対して、モランボンはプロジェクトを3つのフェーズに分け、受注システムの規模に応じて、エリアごとに移行を進めるアプローチを採った。プロジェクトは、モランボンのグループ会社のさくらトータルサービスと二人三脚で進めていった。

さくらトータルサービスの青木聖史氏(システム開発事業部 開発1課 マネージャー)は、当時のプロジェクトの状況について次のように振り返った。

「第1フェーズでは、社員が常駐し、首都圏に次ぐ近畿エリア拠点から移行に着手しました。メインフレームを稼働させたまま、オープンシステムでEDIシステムをEOS名人.NETで構築し、約2週間の並行運用期間を経てオープンシステムに完全に切り替えました。ここで培ったノウハウをベースに、第2フェーズでは東北、中京、九州の各エリアにある受注システムを移行し、最後の第3フェーズでは基幹出荷センターである、首都圏エリアのメインフレームをオープンシステムに刷新しました」(青木氏)

システム構築で特に苦労したポイントについて、青木氏は次のように続けた。

「旧EDIシステムは度重なる追加開発でプログラムが煩雑化し、解析に非常に時間を要しました。プログラムで記述する分岐内容も多く、実際には使用していない幽霊プログラムも多数存在しました。EOS名人.NETの導入に当たっては、できるだけプログラムの内容をシンプルにするために分岐をプログラムで設定するのではなく、マスター処理で設定できるようにしました」(青木氏)

EDIシステムの刷新で終わらないモランボンのDX戦略

2011年にEOS名人.NETの導入プロジェクトを始動してから足掛け4年で全受注出荷拠点のサービスインまでこぎ着け、EDIシステムの完全オープン化を果たした。しかし、デジタル化の取り組みはここで終わりではない。2018年にはユーザックシステムのRPA(Robotic Process Automation)ツール「Autoブラウザ名人」(現「Autoジョブ名人」)を導入し、受注業務プロセスの自動化に着手した。

「EDIシステムをオープン化した後、次なる課題として浮かび上がったのが受注業務プロセスの効率化を図ることでした」とモランボンの島田伸夫氏(生産本部 物流部 業務課 課長)は言う。特に、受注業務で非効率なアナログ作業が発生していた。当時、Web受注システムを利用する取引先は100受信以上あり、2人体制で取引先の発注データをWebシステムからダウンロードし、手作業で基幹システムに取り込んでいた。電車遅延や降雪などによる自然災害などで担当者が出社できないときは作業が遅延することもあり、生産性向上とBCP(事業継続計画)の両面で問題を抱えていた。こうした中で、国内でもRPAによる業務の自動化が広がり始めていることに着目し、Autoブラウザ名人(現Autoジョブ名人)の導入を決めたという。

生産本部 物流部 業務課 課長 島田 伸夫 氏

同社は、Autoブラウザ名人(現Autoジョブ名人)によって取引先の発注データを指定のWebサイトからダウンロードし、基幹システムに取り込み、納品明細書をPDF化する一連のプロセスを自動化した。

「この取り組みは、受注担当者の業務時間短縮につながりました。以前は9~18時までフルタイムで作業が必要でしたが、現在は、自動化した処理の合計は月150時間程度削減となっています。RPAが人手を介さずに自動で作業するため出社の必要がなくなり、テレワークが可能になりました」(島田氏)

真のDXとはデジタル化の先で新たな価値を生み出すこと

今や多くの企業がDXを急務の課題に掲げ、さまざまなアプローチでデジタル化に取り組んでいる。そして、モランボンの取り組みからは、DXを推進するにはレガシー資産の見える化とシンプル化の重要性が分かる。2011年にメインフレームのオープン化に着手したことに始まり、2018年にはRPAで受注業務の自動化・効率化を実現したモランボンは、時代によって解釈は変わっても、デジタルの力を使った業務プロセス改革、つまりDXに11年前から取り組み続けていたことに他ならない。

今後の展望について、姜氏は次のようにコメントし、意欲を見せた。

「私は、本当の意味のDXとはデジタル化をしたその先で新しい価値を生み出すことにあると考えています。しかし、それができる企業は限られているのが実情です。DXを進めるにはまずデータドリブン企業にシフトする必要があり、そのためには膨大な情報をデジタル化し、集約や共有することが重要になります。2019年には営業社員にスマホを配布し、『LINE WORKS』などを導入することで情報共有のスピード化を図りました。今後は、社内・社外のさまざまなデータをビジネスにどう生かすかがDXに向けた課題になります。SFA(営業支援システム)やBI(Business Intelligence)、チャットbot、RPAなどデジタルの力を借りて、生産性向上を図るとともに生活者・流通との接点を増やすことで新たな価値創造にチャレンジしていきます」(姜氏)

取材協力:株式会社内田洋行

企業プロフィール
会社名 モランボン株式会社
本社 〒183-8536 東京都府中市晴見町2-16-1
創業 1951年3月
資本金 310百万円
Webサイト https://www.moranbong.co.jp/
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