RPAで経理業務を効率化!導入メリットと活用事例を解説
近年、人間が行っている業務を自動化する手段としてソフトウェアロボット「RPA(Robotic Process Automation)」が注目を集めています。
特に、振込先一覧の作成や入金確認、データの転記、帳票の作成・編集、データチェックなど、定型作業が多い経理業務において効果をもたらし、業務効率化やコスト削減に高い効果が期待できます。
しかし、経理業務では社員の給与や会社の経費など重要な内容を扱うため、RPAで自動化しても大丈夫なのか不安を抱える方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では自動化に向いている5つの経理業務や、経理業務でRPAを導入するメリット・デメリット、実際の導入事例について解説します。
「電帳法(電子帳簿保存法)などの法対応業務が増えた」
「経理業務にかけるコスト削減ができないか」
「経理業務でもRPA導入できるの?」
このように考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
自動化に向いている5つの経理業務
自動化に向いている経理業務として、次のようなものが挙げられます。
- 振込先一覧の作成
- 入金確認
- データの転記
- 帳票の作成・編集
- データチェック
ここでは、自動化が可能な5つの経理業務について詳しく解説します。
振込先一覧の作成
振込先一覧の作成は、経理業務の中でも自動化に非常に向いているタスクです。自動化によって、複数のデータソースから振込先情報を一元管理できるようになります。
顧客情報や取引先情報が異なるシステムに分散している場合、ツールを活用することで一括してデータを収集・統合することにより、手作業でのデータ収集と入力の手間を大幅に削減可能になるのです。
また、自動化ツールは最新の情報をリアルタイムで反映するため、振込先情報の更新漏れを防止できます。取引先の口座情報が変更された場合でも、自動的にリストに反映されるため、最新のデータに基づいた正確な振込が可能です。
さらに、振込先情報を標準化されたフォーマットで管理でき、見やすく整理されたリストを作成できるため、他の部門や関係者との情報共有もスムーズに行えます。
入金確認
自動化ツールを利用することで、銀行のオンラインシステムと連携し、リアルタイムで入金情報を取得できます。その結果、入金の確認作業を効率化し、業務の精度とスピードをより上げることが可能です。特に、入金件数が多い企業にとっては、大幅な時間短縮と労力削減が期待できます。
また、自動化ツールは入金情報を会計システムに自動で取り込み、売上データや請求データと照合します。そのため、入金漏れや金額の誤りを防ぎ、正確なデータ管理をできるようになり、ヒューマンエラーのリスクも減少します。
データの転記
データの転記作業も自動化に向いている業務のひとつです。例えば、営業システムや在庫管理システムから会計システムへのデータ転記を一括で行い、時間と労力を大幅に削減できます。
他にも自動化ツールはデータの正確性を確保する際にも役立ちます。手動でデータを転記すると、入力ミスやデータの欠落などが発生しがちですが、自動化によってリスクを最小限に抑えることが可能です。
さらに、自動化ツールはデータの更新や修正も迅速に行えます。例えば、顧客情報や取引先情報が変更された場合でも、自動化ツールを使用することで、常に最新のデータに基づいて転記作業を実行できます。
OCRと組み合わせて活用すると、紙の帳票をデータ化し、転記作業を行うまでの一連のプロセスを自動化することも可能です。
帳票の作成・編集
自動化ツールは、帳票作成にかかる時間と労力を大幅に削減し、業務効率の向上に貢献します。例えば、毎月の請求書や支払明細書など、同じフォーマットを繰り返し使う帳票を簡単に、かつ正確に作成できるので、手作業での入力ミスやデータの抜け漏れを防げることが可能です。
加えて、自動化ツールは帳票の編集作業も効率化します。既存の帳票に修正が必要な場合でも、変更箇所を自動的に検出して必要な部分だけを修正できるため、手間をかけずに最新の情報を反映できるのです。
さらに、異なるシステムからデータを取り込む場合でも、自動化ツールを使用することで、データの整合性を保ちつつ正確な帳票を生成できます。
データチェック
大量のデータを手動でチェックすると、時間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクが高まりますが、自動化ツールを導入することで、正確かつ効率的なデータチェックができます。
自動化ツールは事前に設定されたルールに基づいてデータをチェックするため、特定の条件に一致するデータの抽出や、異常値の検出など、細かいチェック項目を設定可能です。これにより、手動では見逃しがちなミスや異常を確実に発見し、修正できるようになります。
また、自動化ツールの中には、チェック結果を可視化してレポートとして出力する機能を備えているものもあります。データのチェック結果をひと目で把握でき、問題が発生しても迅速な対応が可能です。
経理業務でRPAを導入するメリット
ここからは、経理業務でRPAを導入するメリットを紹介します。経理業務でRPAを導入するメリットは、以下の4つです。
- 業務の効率化
- コスト削減
- 人手不足の改善
- 作業の正確性の向上
4つのメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
業務の効率化
経理部門の担当者は細かな処理業務が続き、なかなかコア業務に専念できないことも多いのではないでしょうか。
定型作業をRPAに任せることで、社員は人にしかできないコア業務に集中できるようになります。これにより業務効率化につながり、生産性も向上できるようになるでしょう。
また、業務の効率化によって作業スピードもアップし、作業納期を短縮する効果も期待できます。
コスト削減
RPAは、人とは違って24時間365日稼働できます。常に高いパフォーマンスで業務をこなせるため、残業時間も減り結果的に人件費などのコスト削減につながります。
RPAの導入にはコストがかかりますが、新たな人材採用やその後の育成のことも考慮すると、トータルでRPA導入の方がコストを抑えられる場合もあるのです。
人手不足の解消
近年では、少子高齢化による労働人口の減少により、人手不足が問題となっています。RPAで業務を自動化できれば、定型化された業務は全てRPAに任せることで人手不足を解消できるようになるでしょう。他にも、これまで単純作業も担っていた社員の負担が減るので、離職率の減少も見込まれます。
作業の正確性の向上
RPAはロボットなので人間のように休憩時間も必要なく、常に高いパフォーマンスを維持することが可能です。設定された業務を忠実にこなすため、よくありがちなケアレスミスを防ぎ、作業の正確性が向上します。
経理業務は会社のお金が直接関わる業務なので、小さなミスも許されません。RPAの活用で業務を自動化すれば作業の正確性も向上し、経理担当者の精神的負担を減らす効果も期待できます。
経理業務でRPAを導入するデメリット
経理業務でRPAを導入するデメリットは、以下の2つです。
- 導入コストがかかる
- エラーによるシステムの停止
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
導入コストがかかる
RPAの導入にはコストがかかります。クラウド型であれば数万円程度、デスクトップ型で数十万円程度、サーバー型であれば100万円以上の導入コストが相場です。加えて、RPAの設定やカスタマイズ、社員のトレーニングにも費用が発生することがあります。
初期投資がかかる分、コストだけを見ると割高に感じるかもしれません。しかし、導入によって得られる業務効率化や人手不足の解消などのメリットも考慮すれば、全般的なコストの削減が可能です。
また、RPAの導入により、業務プロセスの標準化と一貫性が確保されるため、品質管理も向上します。これにより、クライアントへのサービス提供の質が向上し、顧客満足度のさらなる向上にもつながるでしょう。
エラーによるシステムの停止
経理業務をRPAで自動化した場合に限りませんが、RPAは、システム障害やサーバーダウン、ブラウザのバージョンアップなどによってエラーが発生する可能性があります。エラーが起きるとRPAの動作が止まってしまったり、間違った動作を続けたりして経理業務に支障が出る可能性もあります。
日々のメンテナンスを欠かさず、万が一のエラー発生時に迅速に対応できるよう管理体制を整えておくことで、迅速なシステム復旧が可能になるのです。
経理業務におけるRPA導入事例
RPAは、以下の業務を自動化することが可能です。
- 請求書処理業務
- 売上・仕入データの処理業務
- 支払い・請求照合業務
- 売上データの転記作業
ここからは、それぞれの業務でのRPA導入事例を紹介します。
請求書処理業務の自動化
国内最大級のIT専門商社であるダイワボウ情報システム(DIS)株式会社では、電子データをやり取りする『EDI(電子データ交換)』の導入により、請求書処理業務の多くを電子化していました。
しかし、EDI化が難しい仕入先ではメールでの取引を継続しており、電子帳簿保存法への対応に非常に手間がかかる状態が続いていました。そこで、取引先から送られてくる請求書の処理業務を自動化するため、ユーザックシステムの『Autoメール名人』の導入を決めました。
『Autoメール名人』の導入により、メール経由で取得した請求書を適切なフォルダに保存し、リネームして格納する処理の自動化を実現しました。また、人的ミスも減少し、顧客サービスの向上、業務改善にも役に立っています。
請求書処理業務におけるRPA導入事例の詳細はこちら
売上・仕入データの処理業務の自動化
酒類・食品の総合卸売業である国分ビジネスエキスパート株式会社では、メールで送られてくるExcelの売上・仕入データの変換およびシステム連携業務の自動化を目的として『Autoメール名人』を導入しました。
導入前は、毎月約2,500通の出荷データが添付されたメールが届き、その数は5,000~7,500ファイルにもなっていました。これらのデータを基幹システムに対応するフォーマットに手作業で変換する作業は非常に負担が大きく、業務効率を大きく低下させる要因だったのです。
『Autoメール名人』を導入したことで、これらのデータ変換作業を自動化し、業務負担を大幅に軽減することに成功しました。RPA導入初期にはトライ・アンド・エラーを繰り返しながらも、2016年10月には7,000件の出荷案内データのうち50%の自動化を達成しています。
さらに、買掛金管理部では毎月8,000件以上の支払明細書の送信作業を自動化し、作業時間とストレスを大幅に削減できました。
今後は『Autoメール名人』と汎用型RPAツールを組み合わせてより多くの業務を自動化し、さらなる業務改善を進めていく予定です。
売上・仕入データの処理業務の自動化におけるRPA導入事例の詳細はこちら
支払い・請求照合業務の自動化
A社では一部の支払情報をメールで送受信していましたが、ある取引先から送られてくるメールには、添付データではなく、本文に支払情報が記載されている状態でした。
本文には支払番号・支払日・支払金額などの情報が記載されており、多い日には10,000件以上の明細を目視と確認が必要となり、従業員の業務負担が大きな問題だったのです。
また、本文に記載されている明細情報には規則性がないため、一般的なメール業務自動化ツールでは安定したデータ取得ができないことも課題でした。そこで、月に10日ほどかかっていた作業時間を短縮するために、メールをWebブラウザ上で受信する設定に変更し、ブラウザ操作を自動化できる『Autoジョブ名人』の導入に至ったのです。
『Autoジョブ名人』の導入によってテキスト情報を自動取得できるようになり、メール本文に記載されている明細情報のCSV化に成功しました。
また、基幹システムから請求情報を取り出し、2つのファイルを入金消込サービスへ連携することによって、今まで膨大な時間が取られていた業務を自動化できました。その結果、ヒューマンエラーがなくなり精度の高い消込を実現しています。
売上CSVデータ転記作業の自動化
売上データのチェックや管理は、多くの職種で毎日発生する重要な業務です。特に小売業では、売上データの正確な管理が欠かせません。他社でも、売上CSVデータの転記作業をRPAで自動化した事例があります。
小売業のA社では、経費精算システムで出力した売上のCSVデータを手作業でExcelに転記していました。転記作業を手作業で行うことは、長い時間がかかるだけでなく、従業員にとって大きなストレスとなっていたのです。
A社はこの課題を解決するためにRPAを導入し、売上データの転記作業を自動化して業務効率の向上を実現しました。
RPA導入後は、1日あたりの転記作業にかかる時間がわずか5分程度となり、年間で28時間もの時間を削減することができました。さらに、28営業日計算で、年間4.2万円のコスト削減も達成しています。
RPA導入の際の注意点
せっかくRPAを導入したにもかかわらず、「運用がうまくいかない」と感じられる方がよく見られます。
RPAは有用なツールですが、導入に向けて事前にしっかりと準備しておくことが必要です。具体的に必要な要素として、主に以下の3つが挙げられます。
目的を明確にする
まず、RPA導入の目的を明確にしなければなりません。「コストの削減」「業務の効率化」「社員の負担軽減」「生産性の向上」など、具体的な目標を設定することが重要です。
目的が曖昧だと、適切なRPAツールの選定が難しくなり、導入効果も半減してしまいます。RPAの導入自体が目的となってしまわないよう、達成したい目標を明確にし、それに最適なツールを選ぶことが成功の鍵となるのです。
目的を明確にすることで、RPAがもたらす効果を最大限に引き出し、経営資源を効果的に活用できます。また、目的を共有することで、関係者全員の理解と協力が得られやすくなり、プロジェクトの成功率が高まるでしょう。
業務の棚卸
RPA導入時には、業務フローの可視化が不可欠です。業務内容や必要工数を詳細に洗い出し、RPAで自動化すべき業務を特定することが重要となっています。業務の棚卸をすることで、自動化によって最も効果が期待できる業務を見極めることができるでしょう。このアクションに取り組むことで、どのプロセスがボトルネックとなっているか、どの業務が手間を取っているかを把握し、効率化を図るための具体的なプランを立てられるのです。
また、業務の棚卸は、現場の実態を反映したリアルなデータに基づいて行われるため、実践的な改善策を導き出す上で重要です。全ての業務を洗い出すことで、従業員の負担軽減や業務の最適化を実現しやすくなりました。
運用体制を明確にする
RPAの運用体制を明確にすることも大切です。万が一のエラー発生時や日々のメンテナンスは誰がどのように対応するのかを明確にしておきましょう。
開発担当や現場担当など、役割をあらかじめ分担しておくと運用体制を整えやすくなります。経理業務担当者は、伝票への記帳や会計管理システムへの入出金データの取り込みといった定型作業の自動化によって「人為的ミスの削減」など、RPA導入の目的を明確にしておきましょう。その後、経理業務の棚卸をすることで自動化すべき業務を洗い出します。
そして、RPAの開発や運用などのサポートをシステム部門と連携して進めていくとスムーズな導入が可能です。
経理業務へRPAを導入し、業務効率化と負担軽減を達成しよう!
RPAは、経理業務に導入することで高い費用対効果が得られます。ただし、しっかりとRPA導入による効果を実感するためには、導入前の事前準備や導入後の運用体制を整える必要があるでしょう。
RPA導入の経験がなければ、「どのように事前準備や運用について考えればいいかわからない」と感じる方もいるのではないでしょうか。
国産RPAベンダーのユーザックシステムでは、ブラウザからアプリケーション操作を自動化するRPAツール『Autoジョブ名人』や、メールを伴う一連の作業を自動化する『Autoメール名人」を提供しています。
RPA導入から運用まで、一貫してサポートできる体制を整えていますので、初めての方でも安心してご利用可能です。
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