2024年問題とは?EDI再構築のポイント

NTT東西は2024年1月にISDNサービスを終了し、順次IP網へ移行することを発表しています。固定電話回線への新たな加入者の減少が主な移行理由です。それにともない、ISDNを利用したレガシーEDIの再構築が、企業の優先課題となっています。今回は、EDIを再構築する際のポイントを紹介します。

EDI再構築の背景

1970年代から企業間の電子データのやりとりはEDIElectronic Data Interchange)が利用されています。EDIは、企業間の商取引で行われる受発注、出荷、納品、請求、支払いなどの情報取得を、電話回線を利用して自動化するシステムです。EDIによって、紙媒体、電話、ファックス、郵送などの業務におけるコストや手間を省くことが可能になりました。専用回線を利用することで、手作業で行うよりも正確で迅速な業務を実現したのです。企業間で売上や在庫のリアルタイム情報を共有できるため、欠品や無駄な在庫を最小限に抑える流通の最適化もできました。

長年利用されてきた電話回線を利用するレガシーEDIは、いま過渡期に突入しています。20241月に、EDIの通信インフラとして利用されているISDNのサービス提供が終了するからです。「2024年問題」といわれ、EDI取引への影響が懸念されています。固定電話回線のIP化にともない、企業が現在利用しているレガシーEDIは、インターネット回線を利用したWebEDIへ移行する必要に迫られています。WebEDIへの移行は、取引先やベンダーとの調整が必要になるため、自社の都合だけでは実行できません。自社の基幹システムとEDIとの連携を再構築する必要があり、時間、手間、コストが膨大にかかる場合もあるのです。

このような状況下では、企業としていかに迅速に対応できるかが重要になります。

EDI再構築の成功のポイント

2024年問題を契機に、多くの企業でEDIに関連するシステムの再構築が一刻を争う課題となるでしょう。EDIシステムを再構築する際のポイントを紹介します。

新基幹システムを導入する前にシステムの再構築を

EDIのシステムを再構築する際に、EDIと基幹システムの両方を同時に新システムに移行することはおすすめできません。EDIと基幹システムを同時に移行した場合、問題が発生した際に、EDIと基幹システムのどちらが原因か不明になるからです。新しいEDIシステムを先に導入した場合には、問題があればEDI内に障害があることがすぐにわかります。問題がなければ基幹システムの移行へとスムーズに進めることができます。再構築の際にシステムを切り分けることによって、問題が発生した際の原因究明を容易にしておくことがポイントのひとつです。

業界の標準ファイルを中間ファイルに

取引業者から送られてくるデータを基幹システムに直接接続しているならば、システムの再構築の際に、業界標準の中間ファイルを活用するように変更しましょう。流通業界ならば、流通BMSを中間ファイルとして設定しておきます。基幹システムを新しくする際に、ファイル変換の部分を修正するだけで新システムへ移行できるので便利です。

レガシーEDIと新EDIを統合

JCA手順や流通BMSなど、取引先によってプロトコルが異なる場合でも、業務が同じ場合はまとめてしまうのがポイントです。自社の基幹システムとのインターフェースは1業務につき1インターフェースとしましょう。取引先が固有のWebEDIを利用している場合は、「Autoジョブ名人」のようなRPAを活用するのが得策です。ブラウザ操作をRPAで自動化することで、時間、手間、誤入力などのエラーを削減できます。

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システム再構築のためのコストを考える

EDIシステムと基幹システムを再構築する際には、さまざまなコストがかかります。コストを検討する際に、以下の3つの観点を考慮に入れるとよいでしょう。

  • 総保有コスト(TCO (Total Cost of Ownership) )で評価する
    システムを運用するうえで全般的にかかるコストを考慮します。ハードウェアやOSのリース代、ハードウェアの保守費用、システム管理費、転換サービスを利用している際のVAN利用料、ホスティング費用など、運用にかかるコストを総合して見積もります。
  • EDI以外に取引先の要請から派生するシステムの工数分析
    レガシーEDIから次世代EDIへの過渡期であるため、取引先からのシステム対応の要請が少なくありません。各業務間における手作業の工数、帳票の作成工数、PDラベル、SCMラベル、店名ラベルなどを作成する工数、次世代EDIの手作業の工数など、さまざまな工数が発生する可能性があります。工数が増えることはコストアップに直結しますので、あらかじ想定しておく必要があります。
  • 長期スケジュールによる費用分散シミュレーション
    システムの再構築には時間、費用、人員が膨大にかかるため、複数年度にまたがり予算を組む可能性を考慮する必要があります。

導入事例

2024年問題を目前に控え、取引先の要請によって次世代EDIへの移行を迫られる可能性もあります。レガシーEDIから次世代EDIへの移行は業界全体として段階的に進むものなので、臨機応変に対応する必要があります。実際に次世代EDIに対応したソフトウェアの導入事例を紹介します。

トーソー株式会社

トーソー株式会社はカーテンレールの国内シェアを50%以上持つ、窓周り全般の製品を扱うインテリアメーカーです。ブラインドや間仕切りの企画、製造、販売にも力を入れ、今後はさらなる事業拡大を計画しています。

同社では、取引先との電子データの交換は、JCA手順や全銀手順などのレガシーEDIを採用し、基幹システムにデータを直接受信していました。ほかに、取引先5社とは手作業が必要な固有のWebEDIも利用していました。これらの基幹システムに受信された情報をもとに荷札を発行し、全国4カ所の出荷拠点から出荷を行っていました。

2010年、主要な取引先である大手量販店が流通BMSへの移行を決定し、仕入先に対して流通BMS導入の働きかけを行いました。移行に対応できない場合は、紙媒体を利用した発注になる可能性も浮上してきたため、なんらかの対応を迫られたのです。新たなシステムを構築するには数千万円の予算が必要です。しかし、流通BMS自体がどのように普及していくか不透明だったため、はじめから大規模な投資をすることが難しい状況でした。

そこで、スモールスケールで導入でき、拡張性に大きなメリットを持つ「EOS名人」に着目しました。EOS名人はJCA手順や全銀手順などのレガシーEDIはもちろん、流通BMSも扱え、EDIに関連した業務に幅広く対応できるパッケージです。EOS名人にはStandard版とEnterprise版が用意されているため、はじめから大規模な投資は難しい企業でも導入可能です。同社は2012年2月にStandard版の導入を決定、取引先との調整をしたうえで12月にはEnterprise版へ拡張し、全面稼動を開始しました。さらに、EOS名人を導入するタイミングでAutoブラウザ名人を採用することで、固有のWebEDIを利用していたブラウザの受注業務を自動化し、基幹システムと連携することに成功しています。

トーソー株式会社様|EOS名人導入事例

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扇町運送 株式会社

扇町運送株式会社は、近畿、中国、四国地方を得意とする物流サービス企業で、輸送力、保管、流通加工などに定評があります。ネットショップからの出荷業務を請け負ったのをきっかけに、流通機能をアウトソーシングするサードパーティーロジスティクス(3PL)にも力を入れてきました。 数多くの企業から物流業務を受託しており、大阪南港には本社物流センターがあります。

同社は、ベルトやバッグを扱う大手商社から量販店向けの出荷業務を請け負うことになり、EDIへの対応が必要になりました。当時はEDIシステムへの対応の用意がありませんでしたが、ベンダーを比較検討し、物流企業への導入実績やコストを考慮してEOS名人の導入に踏みきりました。現在では、EOS名人ならではの、EDIで受注、出荷、輸送までをワンストップで対応可能な物流サービス体制のサポートを活用しています。

既存システムとの連携の流れとしては、まずEOS名人で発注データを受信後、在庫管理システムにデータを出力します。続いて在庫管理システムにおいて在庫の引き当てを行い、出荷データを確定、EOS名人にデータを戻して統一伝票を作成します。ピッキングリストや納入明細書は在庫管理システムから出力し、ファックスで届く紙媒体による追加注文は、EOS名人にデータを入力して伝票を作成します。EOS名人はユーザの運用方法に合わせて、設定を細かく調整できるメリットがあり、重宝しているとのことです。

取引先との兼ね合いもあり、流通BMSとJCA手順に対応する設定ですが、今後、JCA手順の取引先が流通BMSに移行する際も、順次対応可能となっています。

扇町運送株式会社様|EOS名人導入事例

早期に自社に最適なシステムの再構築を

事業の運営という点では、ISDNが終了する2024年まで、あまり時間はないといえるでしょう。適切なベンダーやソフトウェアの選定がシステムの再構築のポイントです。次世代EDIと基幹システムの連携における自社に最適なシステムの再構築の検討は、早めに開始するようにしましょう。

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