
Excel(エクセル)作業を効率化・自動化する方法まとめ

多くの企業において、Microsoft Excel(エクセル)は業務の中心的なツールとして活用されています。しかし、その汎用性の高さゆえに「集計作業に追われて本来の業務ができない」「属人化した複雑な関数が誰も直せない」「複数のシステムからデータをコピペするだけの単純作業が延々と続く」といった課題が山積していませんか?
本記事では、ショートカットキーなどの基本的なテクニックから、関数、マクロ(VBA)、そして近年急速に普及しているRPA(Robotic Process Automation)を用いた高度な自動化まで、エクセル作業を効率化するための手法を網羅的に解説します。
エクセルは非常に便利なツールです。しかし、業務フローの中心に据えすぎると、以下のような「効率化を阻む壁」に直面しがちです。
人的ミスが起きやすい
手作業での入力や転記にはミスがつきものです。「請求書の金額を1桁間違えて入力した」「前月の古いデータを誤ってコピペしてしまった」「計算式の範囲指定がずれていた」といった単純なミスが、企業の信用問題や重大な損失につながるリスクがあります。
集計・転記に時間がかかる
月次の売上集計や会議資料の作成など、毎月同じような手順でデータを加工する作業に膨大な時間を費やしていませんか?データの形式を整えたり、複数のシートを統合したりする「前処理」だけで半日が終わってしまうケースも珍しくありません。
複数システム間のデータ移動が手作業
日々の業務では、SFA(営業支援システム)、会計ソフト、在庫管理システムなど複数のツールを併用するのが多くあります。しかし、それらのシステムは必ずしも連携していません。「基幹システムからCSVをダウンロードし、エクセルで加工して、別のWebシステムに一件ずつ登録する」といったシステム間の「つなぎ」をする手作業がボトルネックになりがちです。
ファイルが属人化・乱立しやすい
「担当のAさんしか触れないマクロがある」「計算ロジックが複雑すぎて誰も検証できない」といった属人化は深刻です。また、「最新版」「修正版」「最終版」といったファイルが存在し、どれが正しいデータなのか分からなくなることも多々あります。
前述のようなエクセル作業の課題を解決すると得られるメリットについて、見ていきます。
作業時間を削減できる
エクセル作業効率化の最大のメリットは時間の創出です。例えば、毎日30分かけていた集計作業を自動化できれば、月間約10時間、年間で120時間もの時間を削減できます。これは従業員一人あたり約15日分の業務時間に相当します。
ミスを減らせる
関数や自動化ツールを活用することで、手入力によるタイプミスや転記漏れを物理的にゼロに近づけることができます。データの正確性が担保されることで、チェック作業の負担も大幅に軽減されます。
標準化・引き継ぎがしやすくなる
業務プロセスをエクセルの機能やツールで自動化・定型化することは、業務の標準化と同義です。「誰がやっても同じ結果が出る」状態を作ることで、担当者の変更や引き継ぎがスムーズになります。
従業員がコア業務に集中できる
単純作業から解放された従業員は、人間にしかできない創造的な業務や、高度な判断が必要な業務に集中できるようになります。これは企業の競争力強化に直結します。
まずは特別なツールを使わず、今日からすぐに実践できる基本テクニックから見直しましょう。
ショートカットキーを使う
マウス操作をキーボード操作に置き換えるだけで、作業スピードは劇的に向上します。以下の基本ショートカットは必須レベルです。
- Ctrl + C / V:コピー / 貼り付け
- Ctrl + Z / Y:元に戻す / やり直し
- Ctrl + S:上書き保存(こまめな保存で事故を防ぐ)
- Ctrl + F / H:検索 / 置換
- Ctrl + 方向キー:データの端まで一瞬で移動
- Ctrl + Shift + 方向キー:データの端まで選択
- Ctrl + ; (セミコロン):今日の日付を入力
- Ctrl + 1:セルの書式設定を開く
- Alt +Shift+=:オートSUM(合計関数を入力)
関数で集計・判定を自動化する
手計算や目視確認を減らすために、関数を使いこなすことは効率化の第一歩です。
- VLOOKUP / XLOOKUP:別表からデータを検索して転記する。特にXLOOKUPは従来のVLOOKUPやHLOOKUPの進化版として柔軟な検索が可能です。
- SUMIFS / COUNTIFS:条件に合うデータだけを合計・カウントする。
- IF / IFS:条件に応じて値を切り替える(例:点数に応じて「合格」「不合格」を表示)。
- IFERROR:エラー表示(#N/Aなど)を空白や「該当なし」などの文字列に置き換え、見栄えを整える。
表を整えてデータベース化する
エクセルを効率的に使うコツは、「入力用シート」「集計用シート」「出力用シート」を分けることです。特に入力データは、セルの結合を行わず、1行1レコードの形式(データベース形式)で蓄積することで、後述するピボットテーブルやPower Queryでの活用が容易になります。
共有方法を見直す(OneDrive・SharePointなど)
ファイルをメール添付でやり取りするのは避けましょう。「どれが最新か」をさかのぼって確認しなければなりません。Microsoft 365のOneDriveやSharePoint、Teams上でファイルを管理し、リンクを共有することで、常に最新のファイルを共同編集できる環境を整えます。
関数だけでは処理しきれない複雑な集計には、エクセルの強力な標準機能を使用します。
ピボットテーブルを使う
大量のデータから、マウス操作だけでクロス集計(部門別売上、月別商品別推移など)を作成できる機能です。関数を組むよりも圧倒的に速く、レイアウトの変更もドラッグ&ドロップで瞬時に行えるため、分析業務には必須です。
Power Queryでデータ取り込み・加工を自動化する
「毎月送られてくるCSVファイルを取り込み、不要な列を削除し、日付の形式を修正して、マスタデータと結合する」といった一連のデータ加工プロセスを記録・自動化できる機能です。VBAを使わずに高度なETL(抽出・変換・書き出し)処理が可能で、一度設定すれば次回からは「更新」ボタンを押すだけで完了します。
Power Pivot・データモデルで大量データを扱う
通常のエクセルシート(100万行制限)を超える大量データや、複数のテーブルをリレーションシップで結んで分析する場合に使用します。Accessのようなデータベース的な処理をエクセル内で完結させることができます。
マクロの記録で操作を自動化する
「マクロの記録」機能を使えば、ユーザーが操作した手順(セルの色を変える、並べ替える、印刷設定をするなど)を自動的にVBAコードとして記録できます。プログラミング知識がなくても簡易的な自動化が可能です。
VBAで処理を拡張する
記録されたマクロを編集したり、ゼロからコード(VBA)を書くことで、条件分岐やループ処理(繰り返し)、ユーザーフォームの作成など、高度なアプリケーションのような動作を実現できます。複雑な計算ロジックや、ボタン一つで帳票を出力するツールなどを作成できます。
マクロの限界:Excel外の操作やシステム連携は対応困難
マクロ(VBA)は非常に便利ですが、基本的には「Office製品の中」で動くプログラムです。 例えば、「エクセルのデータをコピーして、Webブラウザ上の自社システムに入力し、登録ボタンを押す」といった操作は、VBAでは実装が難しいだけでなく、画面変更や表示遅延の影響を受けやすく不安定になりがちです。また、開発には一定のスキルが必要で、作成者が退職すると「誰も直せないブラックボックス」になりやすい点も課題です。
前述のマクロの限界を突破し、より広範囲な業務効率化を実現するのがRPA(Robotic Process Automation)です。
RPAとは:人の操作を再現する自動化ツール
RPAは、パソコン上の操作を人間に代わって自動実行するソフトウェアロボットです。「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」とも呼ばれます。エクセルだけでなく、Webブラウザ、メール、チャット、社内の基幹システム、各種業務アプリなど、PC画面上で操作できるツールを横断して処理できるのが最大の特長です。
RPAがExcel作業に強い理由
なぜ今、エクセル作業の効率化にRPAが選ばれているのでしょうか。
1)プログラミング不要で導入しやすい
多くのRPAツールは、フローチャートを描くような直感的な操作や、操作を録画する機能でロボットを作成できます(ノーコード/ローコード)。VBAのようなコードを書く必要がないため、現場の担当者でも自動化に着手できます。
2) エクセル以外のアプリやWebシステムも連携可能
「エクセルの値をWebシステムに転記する」「受信したメールの添付ファイルを保存してエクセル一覧にする」といった、アプリをまたいでの作業の効率化こそRPAの真価です。API連携などができないシステム(画面操作しか手段がないシステム)でも自動化できます。
3) 既存の業務フローをそのまま自動化できる
システム改修を行う場合、業務フローの大幅な変更が必要になることがありますが、RPAは「今の人間がやっている操作」をそのまま代行するため、既存の業務フローや使用しているエクセル帳票を大きく変えずに導入できます。
4) 24時間365日稼働で夜間バッチ処理も可能
RPAロボットは休みなく働きます。人間が退社した後に大量のデータ集計を行い、翌朝出社した時にはレポートが完成している、といった運用が可能になります。
RPAで自動化できるExcel作業の具体例
RPAを活用することで、以下のような業務が自動化できます。
1) 複数ファイルからのデータ収集・統合
各支店からメールで送られてくる売上報告(エクセルファイル)を、フォルダに格納してから開き、必要な行だけをコピーして、本社の集計用マスターファイルに統合する。
2) システムからのデータ抽出→Excel加工→別システムへ登録
基幹システムから前日の受注データをCSVでダウンロードし、エクセルで指定のフォーマットに加工(VLOOKUPなどで情報付加)した後、配送会社の送り状発行システムにログインしてデータをアップロードする。
3) 定期レポートの自動作成・配信
毎週月曜日の朝、販売管理システムからデータを取得し、エクセルのテンプレートに貼り付けてグラフを更新。PDF化して、関係部署の部長宛にメールで自動送信する。
4) 受注データの転記・在庫管理システムへの反映
ECサイトの管理画面から注文データをエクセルに転記し、在庫管理システムを操作して在庫数を減算処理する。
5) 請求書作成・メール送信の自動化
月次の請求データ一覧(エクセル)を読み込み、取引先ごとの請求書ファイル(エクセルまたはPDF)を個別に作成。それぞれの取引先担当者宛にメールをドラフト作成または送信する。
RPA以外にも、目的によっては以下のツールが有効です。
Pythonで集計・帳票作成を自動化する
プログラミング言語「Python」はデータ処理に非常に強力です。数万行以上の大規模データ処理や、複雑な統計解析、機械学習を用いた予測などを行いたい場合に適しています。ただし、環境構築やコーディングのスキルが必要です。
BIツールでレポート作成を効率化する
TableauやPower BIなどのBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを使えば、エクセルよりも高度でインタラクティブな可視化が可能です。データがリアルタイムで更新されるダッシュボードを作成し、経営判断のスピードを上げることができます。
iPaaS・API連携でシステム間の転記をなくす
ZapierやPower Automate(クラウドフロー)などのiPaaSを使用すると、APIに対応しているクラウドサービス同士(例:Gmailとスプレッドシート、SalesforceとSlackなど)を連携できます。UI操作を行うRPAよりも動作が高速で安定していますが、API非対応の古いシステムは連携できません。
AIで入力・分類・要約を支援する
OCR(文字認識)とAIを組み合わせた「AI-OCR」で紙の請求書をデジタル化してエクセルに取り込んだり、ChatGPTなどの生成AIを活用して、アンケートの自由記述回答を分類・要約してエクセルにまとめたりする活用が可能です。さらに、AIで整えたデータをRPAで業務システムへ登録したり、関係者へ通知・配布するといった“次の作業”までつなげれば、入力から後工程まで一連の業務を自動化できます。
エクセル作業の効率化にはさまざまな手段があり、業務の特性に合った方法を選ぶことが重要です。以下の5つの観点で整理すると、自社に最適なアプローチが見えてきます。
- 自動化できる範囲で選ぶ: エクセル内の処理が中心なら関数・Power Query・マクロでも十分効果が出ます。一方、Web画面への入力や複数システムをまたぐ作業が多い場合は、RPAのようにアプリを横断して操作できる手段が有効です。
- 必要なスキルで選ぶ: PythonやVBAは柔軟性が高い反面、作成・保守に一定のスキルが必要です。現場主導で早く形にしたい場合は、ノーコード/ローコードで作りやすいRPAが選択肢になります。
- 導入難易度と運用負荷で選ぶ: マクロはファイル構造や運用ルールが崩れると保守が難しくなることがあります。RPAは手順をそのまま自動化できるため、小さく始めて効果を確認しながら広げやすい点が特徴です。
- コストとセキュリティで選ぶ: iPaaSなどのクラウドサービスは手軽ですが、社内ポリシー上使えないケースもあります。その場合は、社内環境で完結できる仕組み(オンプレ/デスクトップ型の自動化など)を検討すると安心です。
データ量・処理性能で選ぶ: 数十万〜数百万行規模のデータ処理や高度な分析が必要なら、Pythonやデータベース、BIツールの方が適しています。
エクセル作業を含む業務の自動化について、例を見ていきましょう。
事例1:月次の売上集計(データ回収→Excel更新→配信まで自動化)
よくある課題
拠点や担当者から届くCSV/Excelを集め、整形して集計、結果をPDF化して配信する、という一連の作業が月末に集中し、残業の原因になっていました。
RPAで自動化した内容
- メール添付や指定フォルダから、各拠点のCSVを自動回収
- Excelの「入力用シート」に追記(1行1レコードで蓄積)
- Power Query更新/ピボット更新を実行
- 集計結果をPDF出力し、関係者に自動配信
効果(例)
- 作業時間:3〜4時間 → 20分(主にデータの確認)
- 集計漏れ・転記ミス:大幅に削減
- 担当者不在でも処理が止まらず、締め日が安定
ポイント
エクセルの集計機能(Power Query/ピボット)を活かしつつ、回収・更新・出力・配信までを一気通貫で自動化。手順どおりに安定稼働しやすく、定型業務の“締め日負荷”を減らせます。
事例2:請求書処理(AI-OCR→Excel→会計システム入力を一気通貫)
よくある課題
紙やPDFの請求書をエクセル台帳に転記し、会計ソフトへ入力。件数が多い月は入力が追いつかず、チェックにも時間が取られます。
RPAで自動化した内容
- AI-OCRで請求書を読み取り、CSV/Excel形式で出力
- Excel台帳に取り込み、取引先名の表記ゆれなどを整形
- 会計ソフトを起動し、画面入力で登録(定型項目を自動セット)
- 登録結果をログに残し、完了通知を送付
効果(例)
- 作業時間:1件5〜7分 → 1〜2分(例外処理の対応)
- 入力ミス:大幅に削減(確認工数も短縮)
- 繁忙期でも処理が滞りにくくなり、月末の負荷を平準化
ポイント
AI-OCRとRPAを組み合わせることにより、「帳票を読み取って入力する作業」を自動化できます。エクセル台帳と会計ソフトに二重入力していた手間がなくなりました。
事例3:受注データ登録(Excel加工→Web登録→帳票出力・共有)
よくある課題
受注データをエクセルで整形したあと、Webの受注管理システムへ転記。登録後に出荷指示書を出力して共有するなど、手作業が多くミスも起きやすい領域です。
RPAで自動化した内容
- 受注データエクセルを読み込み、必要項目を整形(形式統一・空欄チェック)
- Web受注管理システムへログインし、受注情報を画面入力して登録
- 登録完了後、出荷指示書や伝票をダウンロード
- PDFを指定フォルダへ保存し、関係者に共有通知
効果(例)
- 作業時間:1日90分 → 15分(データ確認が中心)
- 登録漏れ・転記ミス:大幅に削減
- 出荷指示の遅れが減り、現場からの問い合わせも減少
ポイント
RPAはエクセルデータを整えるだけでなく、Web登録・帳票出力・共有まで自動化できます。複数アプリをまたぐ「つなぎ作業」を減らせるため、現場の手戻りや確認作業も最小化しやすくなります。
エクセル内の集計や整形だけなら、関数・Power Query・マクロでも十分に効果が出ます。
一方で、Webや業務システムへの入力、ファイル回収、帳票出力、配信・共有まで含めて効率化したい場合は、アプリを横断して処理できるRPAが有効です。
まずは効果が見えやすい定型作業からスモールスタートし、段階的に自動化範囲を広げていくと成功しやすくなります。





