PythonとRPAで広がる業務自動化の可能性~自社に合った自動化手段を見つける

業務自動化を進める手段として、多くの企業が注目しているのが「Python(パイソン)」や「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」です。
Pythonは柔軟で高度な処理が得意なプログラミング言語です。一方、RPAは人の画面操作をそのまま再現できるノーコードツールです。どちらも強力な自動化手段であり、使い分けや連携によって、業務効率を大幅に向上させることができます。
本記事では、Pythonによる自動化のメリットや活用例に加えて、RPAとの違いや組み合わせた活用方法まで解説します。

Pythonとは

Pythonは、世界中で広く利用されている汎用プログラミング言語のひとつです。文法がシンプルで読みやすく、初心者でも習得しやすい点が大きな特徴です。
もともとは教育目的で設計されましたが、現在ではAI、Web開発、データ分析、業務自動化など多岐にわたる分野で活用されています。
特にビジネス用途では、Excelとの連携やAPIを通じた他システムとの接続、レポート作成、通知処理などに強く、中小企業でも導入のハードルが低い点が魅力です。

Pythonが企業でよく利用されるようになった背景

Pythonが企業で標準的に採用されるようになった背景には、AIやデータ分析といった先進技術との親和性の高さがあります。多くのAIフレームワークがPythonで提供されているため、特に機械学習や自然言語処理の分野で高い存在感を示しています。
また、Pythonは「可読性の高さ」や「学習コストの低さ」が評価されており、非エンジニアでもスクリプトを理解・編集しやすい言語です。
さらに、世界的に活発な開発コミュニティが存在するため、問題解決や学習リソースも豊富なことも、企業内での導入・運用を後押ししている要因のひとつとなっています。

業務自動化にPythonを利用するメリット

Pythonを業務自動化に用いる最大のメリットは、柔軟性の高さとコストの低さです。複雑な業務ロジックやデータ処理もコードによって細かく制御でき、APIを活用すれば他システムとの連携も容易です。
また、オープンソースのため、ソフトウェア費用が不要であり、企業が小規模なプロジェクトから段階的に導入しやすい点も魅力です。ここでは、業務自動化にPythonを利用する3つのメリットを解説します。

柔軟で拡張性が高い

Pythonは、業務内容やシステム構成に応じて柔軟に処理を組み替えられるのが特長です。例えば、Web APIを使ってSaaSツールからデータを取得したり、Excelと連携して独自の集計ロジックを実装したりと、用途に応じたカスタマイズが可能です。
処理条件が複雑でも、Pythonのif文やループ処理、関数構造を活用することで、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)型ツールでは難しいロジックを柔軟に実現できます。
拡張性に優れた設計が可能なため、将来的な業務変更にも対応しやすく、継続的に使える自動化ツールとして最適です。

導入コストが低くOSSで完結できる

Pythonは無料で使えるOSS(オープンソースソフトウェア)であり、主要なライブラリもすべて無償で入手可能です。例えば、Excel操作には「openpyxl」や「pandas」、Web操作には「requests」や「Selenium」など、豊富なライブラリが用意されています。
さらに、Windows、macOS、Linuxといった主要OSすべてで動作し、既存のPC環境をそのまま活用できるのも強みです。
ライセンス費用が不要なため、スモールスタートにも向いており、導入コストを最小限に抑えながら自動化を始めることが可能です。

AIやデータ分析との親和性が高い

Pythonは、AIやデータ分析との高い親和性を持つ点でも優れています。
機械学習用の「scikit-learn」や深層学習の「TensorFlow」「PyTorch」、データ可視化の「matplotlib」「seaborn」など、業務に活用できるライブラリが充実しています。
主な活用例としては、売上データの分析結果をもとに将来の売上を予測したり、チャットボットに自然言語処理を組み込んで顧客対応の質を向上させたりといった導入が可能です。
Pythonを活用すれば、自動化を単なる省力化にとどめず、より高度な意思決定支援まで発展させられます。

Pythonで自動化できる業務8選

Pythonは、現場の多様な業務に柔軟に対応できる言語です。特にExcel業務やデータ分析、レポート作成などの定型作業はPythonでの自動化に最適です。
ここでは、実際の現場でもすぐに活用できる、Pythonの8つの業務自動化の具体例を紹介します。

データ集計やフォーマット整形

会計や営業データをExcelで集計・加工する業務は、多くの企業で日常的に発生しています。Pythonの「pandas」や「openpyxl」などのライブラリを活用すれば、これらの作業を自動化することが可能です。
具体的には、CSVやExcelファイルから必要なデータを抽出し、指定の形式に整えて新しいファイルに保存する処理などが考えられます。
人力で行っていた計算や並び替え、フィルタ処理なども一括で自動化でき、作業時間を大幅に短縮できます。結果として、属人化の防止やミスの削減にもつながります。

在庫データの分析とレポート作成

在庫管理は、売上や仕入れと密接に関わる重要な業務です。Pythonを活用すると、Excel上の在庫データをもとに安全在庫を自動計算したり、過去の出荷傾向から需要予測を行うことができます。
例えば、「matplotlib」や「Plotly」などの可視化ライブラリを使えば、定期的なレポートにグラフを自動挿入し、PDFで出力することも可能です。分析業務の効率化だけでなく、報告資料の作成時間を短縮でき、意思決定のスピードアップに貢献します。

問い合わせ対応の自動化

顧客からの問い合わせに毎回手動で対応していると、担当者の負担が増すだけでなく、対応のバラつきも発生します。Pythonを用いたチャットボットや自動返信システムを導入すると、よくある質問への対応を自動化できます。
自然言語処理ライブラリ「spaCy」や「transformers」を活用すれば、質問内容を自動解析し、最適な回答を生成する高度な仕組みも構築可能です。応答のスピードと品質が均一になり、カスタマーサポートの効率と信頼性が向上します。

勤怠データ処理と給与情報の集計

従業員の勤怠記録をもとに、毎月の給与情報を手作業で集計するのは煩雑で時間のかかる作業です。Pythonを使えば、勤怠システムからデータを取得し、欠勤・残業時間を自動計算して給与情報を整形するスクリプトを作成できます。
複数フォーマットのファイルを一括処理できるため、部署ごとに異なる記録形式にも柔軟に対応可能です。加えて、月末に自動で集計レポートを生成し、メールで送信する一連の作業を自動化すれば、作業負荷を大幅に軽減できます。

システムの監視とアラート通知

中小企業でもサーバーやネットワーク機器の監視は重要な業務です。Pythonを使えば、定期的にシステムの状態をチェックし、異常を検知した際にメールやチャットで通知する仕組みを簡単に構築できます。
例えば、蓄積したログファイルを自動解析し、エラー出力があればSlackにアラートを飛ばすような運用が可能です。
また、cronやスケジューラーと組み合わせることで、日次・週次での監視タスクも自動化でき、保守担当者の対応漏れ防止や迅速な障害検知に役立ちます。

ブラウザ操作の自動化

Webシステムからデータを取得したり、情報を登録する操作は手間がかかります。Pythonの「Selenium」ライブラリを使えば、ログイン処理、フォーム入力、ボタンクリックなどのブラウザ操作を自動化できます。
具体的には、定期的な注文処理や在庫更新、競合サイトの価格調査などをボタンひとつで実行できるような仕組みづくりが考えられます。
業務フローの中で繰り返し発生するブラウザ作業を自動化することで、担当者の時間を節約し、人的ミスの防止にもつながります。

画像データのリサイズ・変換・分類

ECサイトや資料作成の現場では、画像データの編集や整理が日常的に発生します。Pythonの「Pillow」や「OpenCV」などの画像処理ライブラリを使えば、画像のリサイズ、フォーマット変換、ファイル分類などを一括自動化できます。
例として、特定フォルダ内の画像をJPEGに変換し、用途別にディレクトリへ振り分ける処理などが可能です。
画像ファイルの取り扱いが多い業務において、煩雑な手作業を削減し、作業スピードと品質を向上させる効果が期待できます。

Web上の情報収集(スクレイピング)

Pythonを使えば、インターネット上の公開情報を自動で取得し、ビジネスに活用できます。「BeautifulSoup」や「requests」ライブラリを使ってWebページからHTMLを取得し、価格情報や求人データ、行政発表などの特定情報を抽出する仕組みを構築可能です。
さらに、取得したデータをExcelやCSVに自動保存したり、Slackに共有したりする連携も簡単に実現できます。時間をかけて行っていた情報収集作業を自動化し、より迅速な意思決定につなげられます。

Pythonで自動化する際の注意点

便利なPythonによる業務自動化ですが、安定運用のためにはいくつかの注意点もあります。特に、環境構築やライブラリ管理の面でのトラブル、セキュリティへの配慮、スクリプト属人化の防止は重要です。
ここでは、Python自動化を導入する際に押さえておきたい3つのポイントを解説します。

Pythonのバージョンやライブラリの管理が必要

Pythonは進化が早く、複数のバージョンが併存しているため、ライブラリとの互換性が問題になることがあります。例えば、Python 3.6で動いていたスクリプトが、3.11では動かなくなるケースも珍しくありません。
そのため、仮想環境(venvやAnaconda)を使って、プロジェクトごとに環境を分離するのが基本です。また、依存ライブラリは「requirements.txt」などで明示し、同一環境の再現性を確保しておくことで、後の保守・再利用がスムーズになります。

セキュリティリスクに対処する

Pythonスクリプトによる自動化では、外部APIやファイル操作、ネットワークアクセスなどが頻繁に行われます。そのため、情報漏洩や不正アクセス、改ざんといったリスクにも注意が必要です。
具体的には、処理権限を必要最小限にとどめる、入力データのバリデーションを行う、操作ログを残すなどのセキュリティ対策が求められます。APIキーやパスワードのハードコーディングは避け、環境変数や秘密管理ツールの活用が推奨されます。

Pythonコードの属人化に注意

自動化スクリプトの作成・管理を特定の担当者だけに依存していると、その人が異動や退職した際にブラックボックス化するリスクがあります。
ブラックボックス化を防ぐためには、コードに適切なコメントを残したり、使用手順をマニュアル化してチームで共有したりする仕組みづくりが重要です。
また、GitHubやGitLabなどのバージョン管理ツールでコードを管理し、誰でも履歴や変更点を追える体制を整えると、運用保守が安定します。属人化の防止は、長期的な自動化成功を下支えする重要なポイントです。

Pythonだけでは難しい業務もある

Pythonは高機能な言語ですが、画面操作や紙帳票の処理といった「人の手作業に近い」業務は不得意です。このような業務全体を自動化するためには、RPAなどのツールと組み合わせるのが効果的です。

ここでは、Pythonだけでは自動化しにくい3つの業務を紹介します。

複雑な承認フローの自動化

企業内の申請業務では、稟議書や承認フローを通すプロセスが発生します。こうした業務は複数部門の関与や条件分岐、メール通知などを含むため、Pythonだけで完結させるには複雑な実装が必要です。

RPAツールと連携すれば、各担当への承認依頼や社内システムへの入力処理をノーコードで実装できます。Pythonは処理対象のデータ整形やルール判定に専念し、RPAがGUI操作やワークフロー制御を行うことで、効率的な自動化を実現できます。

紙・PDFを含む業務の自動化

紙書類やPDF帳票の処理は、Pythonだけでは扱いにくい業務のひとつです。スキャンした紙書類を画像データとして扱うにはOCR(光学文字認識)が必要となり、操作対象も画面ベースになるため、RPAとの連携が適しています。
例えば、OCRとRPAで紙書類を読み取り・テキストデータ化し、Pythonが整形する役割を担うといった分業が可能です。これにより、手書き書類の読み取りから社内システムへの登録までを一貫して自動化できます。

帳票の自動生成とシステム登録

メールで届いた請求書や報告書などの帳票をローカルに保存し、ファイル名を整形して所定フォルダに分類する業務は、Python単体ではメールソフトとの連携に限界があります。
特に、OutlookなどGUI中心のアプリケーションでは、RPAで操作を代替する方がスムーズです。一方、Pythonは保存したファイルをもとに帳票を分析・分類したり、他システムへのAPI連携処理を担ったりすることを得意としています。
うまく両者を併用することで、自動化範囲をより広げることが可能です。

RPAの活用で業務自動化の幅を広げる

業務自動化を効果的に進めるには、PythonとRPAを使い分けたり、組み合わせて使うことも検討します。
Pythonはデータ処理や高度なロジックに強く、RPAは画面操作や複数アプリの橋渡しに長けています。ここでは、両者の違いと強みや、具体的な活用イメージを紹介します。

RPAの特長

RPAは、あらかじめ作成した「シナリオ」と呼ばれる設定ファイルに基づいて、ルール化された定型作業を人の代わりに実行するツールです。
例えば、Excelに入力された数値を会計ソフトに転記したり、受信したメールの添付ファイルを保存したりといった反復業務を、GUI操作ベースで再現できます。
APIが提供されていない古いシステムにも対応できるため、最新のシステムではない環境下でも導入が可能です。プログラミング不要で使えるノーコードツールが多く、現場主導で導入しやすいのも大きな特長のひとつです。

PythonとRPAの違い

PythonとRPAには、それぞれ得意な領域があります。Pythonはコーディングによって柔軟なロジック構築やデータ処理が可能ですが、アプリケーションの画面操作や通知送信といったGUI操作には向いていません。
一方、RPAはマウス・キーボード操作を自動で再現する作業が得意で、複数アプリケーションをまたいだ業務フローの自動化に向いています。
両者は排他的ではなく、Pythonがバックグラウンド処理を、RPAがフロント処理を担うことで、補完的な役割を担えます。

PythonよりRPAが優れる4つのポイント

ノーコード・ローコードツールであり、プログラミング知識は不要
 Python は「簡単な言語」とはいえ習得にはある程度の学習時間が必要です。一方、RPA はノーコード・ローコードで自動化シナリオを設定することができ、現場担当者でもマニュアルを参照したり、数時間のトレーニングで業務自動化を実現できます。

メンテナンスを“属人化”させない共通 UI
 RPA のシナリオはフローチャートやリスト形式で可視化されるため、作成者以外でも修正しやすく引き継ぎが容易です。Python スクリプトのように「コードが読める人」に依存しません。

実行ログや権限制御など、管理機能が充実
実行ログ、権限制御、同時実行数の調整など、企業での導入に必要な管理機能があらかじめ用意されています。Python では個別実装が必要になる部分です。

APIが無いレガシー画面も操作できる
取引先の Web‐EDI や旧来の基幹システムのように API を持たない環境でも、RPA なら GUI 操作をそのまま自動化できます。

RPA活用事例

RPAはバックオフィス業務を中心に、さまざまな現場で活用されています。
例として、人事部門では、勤怠データの集計や給与明細の作成、社会保険手続きの申請などに利用されています。また、経理部門では、請求書PDFのデータ抽出や会計システムへの転記作業の自動化などに活用が可能です。
特に、Excelやメールを多用する業務ほどRPAの導入効果が高い傾向にあり、残業削減やミス低減に高い効果が期待できます。IT部門だけでなく、社内のさまざまな業務部門が自発的に活用できるのもRPAの魅力です。

Python × RPA を組み合わせると広がる業務自動化の可能性

Python も RPA も、それぞれ得意な領域があります。Python はデータ分析や自然言語処理といった「高度な処理」に強く、RPA は人の代わりにPC操作を再現する「業務の入口・出口」に強みを持ちます。
そのため、RPAで業務データを取得・投入し、Pythonで処理を行うという連携が有効です。実際の業務での活用パターンをご紹介します。

役割分担

使用例

解説

RPA:帳票取得をトリガーに、AI-OCR へ投入、読み取り結果を抽出

Python:読み取り結果のデータクレンジング(住所正規化や名称揺らぎ補正)

書類から取得した取引先データを、社内 DB と突合・統一

OCRデータの揺らぎ処理は、Pythonの正規表現や外部辞書連携の方が柔軟。RPAは前後処理を担う

RPA:SFAやWeb画面から複数項目を抽出

Python:自然言語処理で営業日報を自動要約

営業担当の活動ログから要点だけをレポート化

GUI経由の取得においてはRPAがスムーズ。ChatGPT APIや文章要約モデルを使った処理はPythonが得意。

RPA:定時に業務データをExcel収集→Pythonへ渡す

Python:統計分析や機械学習モデルで異常検知

売上や在庫の異常傾向をリアルタイム監視

時系列分析や異常値検出のようなアルゴリズム処理はPythonの強み。RPAはスケジューラ兼データ収集係

このように、PythonとRPAを組み合わせることで、どちらか単体では難しい処理が可能になります。
「コードを書くのは得意ではないけれど、日々のルーティンをなんとかしたい」と思う現場にとっては、RPAの直感的な操作性が大きな助けになります。
一方で、より高度な処理をしたいときには Python を活用することで、RPA の自動化範囲をさらに拡張できます。

まとめ

Pythonは柔軟なデータ処理やAI連携に強く、RPAは直感的な画面操作やシステム間の橋渡しに優れています。業務内容や自動化したい対象に応じて、両者を適材適所で使い分けることが、自動化成功のカギとなります。
例えば、定型的な入力作業はRPAに任せて、より複雑な集計作業や予測モデルの構築はPythonで処理するなど、役割分担を工夫すれば、業務全体の効率を大きく向上できます。まずは、自社業務に合った小さな自動化から始めてみてください。
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