野良ロボットを生み出さないためのRPA運用とは?

RPAを導入して単純作業を自動化し、業務を効率化する企業が増えています。RPA導入の大きなメリットは、情報システム部門の手を借りなくとも、現場で必要なロボットを作成して業務効率化できることです。しかし、それは同時に、野良ロボット(以下、野良ロボ)発生の原因ともなります。野良ロボとは何か、なぜ発生するのか、発生するとどうなるのか、そして野良ロボを生み出さない運用とはどんなものかについて考えます。

野良ロボット発生は仕方がない?

RPA(Robotic Process Automation)を導入すると、単純な業務やルーチンワークを自動化できます。自動化により業務効率を大きく向上させることが可能です。
近年RPAの導入が進んでいるのは、情報システム部門やベンダーに頼ることなく、各部門の現場で必要なRPAロボットを作成すれば業務を自動化できるからです。RPAロボットとは、ハードウェアではありません。作業を自動化するためのプログラムのことです。

 

野良ロボとは

野良ロボとは、異動や退社などなんらかの事情で管理者不在になったRPAロボットのことで、闇ロボットやブラックロボットともいわれています。情報システム部門やRPA推進部門がその存在や動作を把握・管理していないRPAロボットです。
管理者不在の野良ロボは、更新や修正もされず、当初設定されてた動作を行って業務効率を下げる可能性があり、システムに負荷をかけます。最悪の場合は、トラブルやシステムダウンの原因になりうるのです。

なぜ野良ロボが発生するのか

前段でも触れましたが、次のような場合に野良ロボは発生します。

 

RPAロボットを作成したスタッフがいなくなった

担当者の異動や退職などで、RPAロボットを作成したスタッフが現場を離れることはよくあります。また、RPAロボットの開発を外注していた場合も、作成者が社外の人間であるため、その後のRPAロボットを管理ができないままになることがあります。
作成者がいないうえ、誰にもRPAロボットに関する情報の引き継ぎがされず、RPAやロボットについて詳しいスタッフもいないという場合は要注意です。
作成されたRPAロボットは業務プロセスの変化、他システムや制度の更新に合わせて修正されることなく、野良ロボとなってしまうのです。

 

野良ロボ知らず!【RPA道場】ユーザー事例に学ぶRPA活用と運用術

 

なんらかの理由で使われなくなったRPAロボットが残っている

せっかくRPAロボットを作成しても、以下のような理由で使われなくなることもあります。

  • 業務の内容に変更があった
  • 業務プロセスの変化や連携するシステムの更新時にRPAロボットを更新できなかった
  • RPAロボットを作成するスキルが低かったために、期待どおりに動作させられなかった
  • RPAを使いこなせなかった
  • RPA導入の効果を実感できなかった

不要になったRPAロボットは、適切に停止処理を行う必要があります。しかし、作成者や管理者が不在の場合、更新や停止処理を行うことができません。現状に合わないのに動作したままのRPAロボットが残ると、野良ロボ化してしまうという結果になります。
全社規模でRPAを導入するということは、現場で作成されるRPAロボットの数も増えることになるでしょう。情報システム部門やRPA管理部門の目が届きにくくなると、野良ロボが発生するリスクも高くなります。

野良ロボが発生するとどうなるのか

野良ロボが引き起こす問題には、次のような例があります。

  • 不要な動作を行ってシステムに負荷をかける
  • 不要な処理を行って間違ったデータや不要なデータを処理する
  • 不要な処理を行ってドキュメントを書き換える
  • 正常動作しているRPAロボットの動作を邪魔する
  • 誤ったユーザーに処理の権限を付与する
  • 情報システム部門の定めるセキュリティポリシーに違反した動作を行ってセキュリティホールになる

いったんRPAを導入すると多くのRPAロボットが作成され、さまざまなルーチンワークが自動化されます。それらは互いに連携し、データのやりとりを行っているため、たったひとつのトラブルであっても、結果的には大きな損害となる可能性があります。誤ったデータ解析により、経営判断を誤らせるおそれさえあるのです。

野良ロボを生み出さない運用とは

それでは、野良ロボが発生しないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
RPAのよさは、現場で必要なRPAロボットを自由に作成できるところです。この点を尊重しつつ運用のルールを制定し、RPA管理担当スタッフを情報システム部門に置くことで、野良ロボを大きく減らすことができます。

 

トップダウンによる運用ルールの制定

野良ロボの発生を防ぐには、RPAロボットの運用に関するルールを制定するとよいでしょう。ルールはRPAを導入する部門全体に一律に適用されなければならず、経営陣のトップダウンによる指示が適切です。
運用ルールには次のような内容が求められます。

  • 作成したRPAロボットを登録する
    RPA
    ロボットを作成したら、登録を義務付けます。登録内容は作成・使用する部署、RPAロボットの管理者(作成者、所有者)、自動化する業務の内容などです。
    情報システム部門が登録内容を管理し、公開もしくは共有します。登録番号を発行し、コピーを保存すると効果的です。コピーの保存には、野良ロボの発生を防ぐだけでなく、登録したRPAロボット本来の動作を正確に保存し、改ざんを防ぐ効果もあります。
  • 登録されたRPAロボットの管理
    情報システム部門で、登録されたRPAロボットに関する情報管理が必要です。現場でRPAロボットに関する情報が更新されたときは、情報システム部門にも通知を義務付けます。それによって、登録内容に変更があっても、野良ロボの発生を防ぐことが可能です。

 

RPAロボットの運用管理チームの結成

野良ロボの発生防止と早期発見のためには、運用管理チームの設置も有効です。情報システム部門からRPAロボットの管理担当者を複数選出し、運用管理チームとするとよいでしょう。
運用管理チームの役割としては、下記のようなものが考えられます。

  • 登録されたRPAロボットの情報管理
    制定された運用ルールにしたがってRPAロボットの情報を管理し、野良ロボの発生を防ぎます。
  • RPAロボット作成時のアドバイス
    RPA
    ロボットを作成するとき、現場の依頼に応じて技術的なアドバイスを行います。作成されたRPAロボットの誤作動や他システムへの悪影響を防ぐことが可能です。
  • 登録されたRPAロボットのチェック
    すべてのRPAロボットをチェックし、誤作動がないか、暴走していないか、他システムに大きな負荷を与えていないかなどを確認します。処理が不正に終了したらエラーが出るかどうかも重要な検証項目です。
    異常な動作をしているRPAロボットを発見することで、野良ロボの発生を早期に発見し、大きなトラブルになる前に修正することができます。
    RPA
    ロボットの内容が現場で修正されたり、業務の現状に合わなくなっている可能性もあるため、このチェックは定期的に行うことも必要です。

管理機能の豊富なRPAツールを選ぶ、または管理ツールの導入

これからRPAツールを導入する場合は、管理機能が強化されたものを選びましょう。野良ロボの発生を防ぎ、早期に発見する機能があり、運用や管理が楽になります。
すでにRPAツールを導入している場合は、RPAの運用管理を支援するツールを導入すると、容易に運用や管理を行うことができます。
ユーザックシステムの「実行指示クライアント」はRPAロボットごとに実行権限を管理して、野良ロボの発生を防止することが可能です。同じような機能を持つ運用管理システムや専用サーバー型のRPAよりも低コストで、必要なスタッフ人数も少ないので、安心して導入できます。

RPAは導入するだけでなく運用管理が重要

RPAの導入には、課題を洗い出してRPAロボットを作成することが必要で、かなり手間がかかります。しかし、RPAは導入して終わりではありません。RPAをうまく運用するためには、各部門で活用しながら、野良ロボ化しないように管理することが必要です。自社の業務に合ったRPAロボットを作成しましょう。また、本当に業務効率化に役立つRPAにするために、運用ルールを作成し、管理体制をしっかり構築しておきましょう。

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