事例
統一印刷株式会社 様
「印刷業名人」によるデータ一元管理でDX加速
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※本記事は、印刷ジャーナル2024年4月5日号に掲載の記事を転載したものです。
生産管理人員は5人から3人、作業時間は3分の1に
「Beauty Package」をキャッチフレーズに、高品質な化粧品パッケージ印刷を得意とする統一印刷(株)(神奈川県藤沢市、雫石宏親社長)は、従来のExcelによる人海戦術の受注・工程管理に限界を感じ、2021年秋にユーザックシステム(株)の紙器・パッケージ印刷業向け業務管理システム「印刷業名人」を導入。2022年7月より順次本稼働を開始しており、煩雑な管理が必要なパッケージ印刷において、受注から製造、出荷指示までの作業の一元管理を実現している。これにより、生産管理部門の人員は従来の5人から3人に削減。また、入力業務などの作業時間も従来の3分の1に削減するなど、注力するDX化を大きく加速させた。
同社は1951年に創業し、今年で73期目を迎える。社内の工場ではUV印刷から紙器加工(箔押し・エンボス・打抜・貼)から検査まで、一貫した独自の生産技術体制を強みとしている。創業当初の社名は「十一房印刷」で、雫石社長は現社名の由来について「当時の創業者が、印刷業界を統一し、その頂点に立とういう熱い想いを込めて、当時の社名の『十一』から『統一』として命名した」と説明する。同社では「統(みつる)」と「一(はじめ)」という名前のマスコットキャラクターを制作しており、これをInstagramや販促メモなどに登場させており、ここからも同社の社名への愛着が感じられる。
そして、同社のもう1つの特色は、その社風である。「明るく、気負わずに働ける」環境を重視しており、社員一人ひとりが笑顔でいられる職場作りを目指している。これは仕事の効率だけでなく、社員の幸福感にも直結する考え方だ。実際に、同社を取材で訪問した際も、同社の社員から発せられる爽やかな挨拶や、気持ちの良い社風に感銘を受けた。
ただ、そんな同社にも数年前まで、社内スタッフの高齢化という課題があった。「将来を見据えたとき、『若い力』が必要であった」(雫石社長)。これを解決するため、同社では一昨年より新卒者を積極的に採用。平均年齢は一気に10歳若返り、現在の平均年齢は30代後半になった。そして、そんな若手の活躍の場を提供すべく、同社では「DX」の取り組みを開始。製造現場ではタブレット端末での工程管理を行い、若手主体の改善プロジェクト「皆進プロジェクト」を発足。DXの推進には若手が、そして技術承継にはベテランが取り組み、両者の融合により、新たな価値を創出していきたい考えだ。製造現場でのDXの活用と、長年の経験に裏打ちされたベテランの知識の融合は、まさに同社の強みであり、その競争力の源泉となっていると言えそうだ。雫石社長は「これにより、独自技術の継承を確かなものにしていく環境を目指している」としている。
EXCELでの管理に限界を感じ、管理システムの導入を決断
同社が業務効率化と品質の向上を実現するために「印刷業名人」という画期的な業務管理システムを導入した背景には、長年抱えていた根深い課題があった。同社ではこれまで、受注から生産、出荷に至るまでのプロセスは、Excelに依存した分断されたフローで作業しており、これにより重複入力やヒューマンエラーが頻繁に発生していた。ただ、同社ではベテランオペレーターが社員の大多数を占めていたため、いわゆる「職人の勘」により、ミスは外部流出する前に発見していたようだ。エンジニアグループ課長 印刷チームの蒔田圭一氏は「社内でExcelのフォーマットはあったが、各自が使いやすいようにカスタマイズして使用していたため、情報の統一性を欠いていた。それでもベテラン社員が大部分を占めていたため、『おそらく、こういうことだろうな』という憶測で作業を行っていた」と振り返る。そのようなやり方は大きなリスクを伴うため、いつか改善する必要があると感じながらも、「それで問題なく仕事ができてしまうものだから、システムでの管理に変更しようと思っても、なかなか変えることができなかった」(蒔田氏)という。
その一方、ミスの外部流出はゼロであったとしても、見積作成から受注入力、生産計画、工程管理、出荷指示まで、当時は、ほぼ同じデータを何度も重複して手動で入力していた。この反復作業は、膨大な時間と労力を浪費していた。
このような状況は、同社の成長と効率化を妨げる大きな障害となり、改善への強い必要性が必然と思われた。社員間でそのような気運が高まる中、カスタマーグループ グループリーダーの内藤絢也氏は、インターネットで自社の業務に最適な管理システムを検索。そこで発見したのが「印刷業名人」であった。
数社を比較し、「そのまま使える」ことから「印刷業名人」を選択
「印刷業名人」を選択するまでの過程において、同社では5〜6社からの提案を検討。その中、「印刷業名人」はそのまま使えるという実用性に加えて、他のシステムとの比較で明確な利点を持っていた。
「印刷業名人は、紙器・パッケージ印刷向け業務管理システムであり、現状の業務フローに適合し、ほぼそのまま導入が可能であると判断した。必要になれば導入後のカスタマイズも可能で、同業のパッケージ印刷業での多くの導入事例があることにも安心感を覚えた」(内藤氏)。これに加え、既存プロセスへの容易な統合、ユーザーフレンドリーなインターフェースなども重要な選定基準になったようだ。
また、システムの機能だけでなく、同社を担当していた営業との関係も、この決断に不可欠な要素であったという。雫石社長は「担当されている営業の方は、頻繁な打ち合わせやウェブ上でのやり取りを通じて、その高い対応力と信頼性を示してくれた。営業の方の誠実さと、ユーザックシステムの企業としての価値観に信頼を置き、最終的な選択を下した」と話す。
この決断は、同社にとって「印刷業名人」の導入が、単なるシステム導入以上の意味を持っていることを示している。社内業務の効率化、エラーの削減、最終的には顧客満足度向上につなげるため、メーカーとユーザーとの真のパートナーシップの始まりを意味していると言えるだろう。同社は「印刷業名人」の導入により、企業価値を高める未来への大きな一歩を踏み出したと言える。
生産管理の人員削減とともに、担当者の作業負荷を大幅に軽減
「印刷業名人」の導入を決定後、同社は生産性と効率性の大幅な向上を実現している。とくに生産管理部門では、従業員数を従来の5名から3名に削減することに成功し、さらに外注管理プロセスも大幅に改善した。これまでの手作業に依存したプロセスから、デジタル化による自動化への転換は、大きな時間の節約につながっている。雫石社長は「とくに当社は部分外注が多いため、それをシステム管理することで、手配調整の時間が概ね30〜40%程度縮減された」と効果を話す。
また、同社ではフロントラインで活躍するオペレーターが「印刷業名人」を駆使することで、日々の業務に革命をもたらしている。とくに大口取引先の大手化粧品メーカーからのリピート注文が多いという背景のもと、同システムの導入は、効率化と精度の向上に大きく寄与している。
取引先からは、Webにより毎週30件から多い時は100件近くの受注が入ってくるという。同社ではそれを週に1回、まとめて入力作業を行っていたが、Excelで入力していた頃は、それを1件1件、手入力で1人の担当者が処理していたため、その他の雑務もこなしながらだと、受注の入力作業だけで丸1日を費やしていたという。
それが現在は、従来の手作業による入力から脱却し、自動化されたデータ処理により大幅な時間短縮を実現した。カスタマイズされた受注取込システムによって、ボタン1つでデータを受注表へと落とし込むことが可能となり、注文データの入力にかかっていた時間が大幅に削減され、オペレーターの作業負担が大きく軽減されている。
同化粧品メーカーの受注入力を担当しているカスタマーグループ プランナーチームの比嘉祐一氏は「1件あたり5分〜10分の時間がかかり、さらに打ち間違いのないように気を付けながら行うので神経も使い、大変な作業であった」と振り返る。それが現在は、この取引先のWeb受注画面からダウンロードして取り込むだけのため、「確認作業のみで済むようになった」(比嘉氏)。短縮された時間を他の取引先の管理に回せるようになった。そして受注から外注先への指示までが一貫したシステム内で完結するようになったことは、業務効率だけでなく、情報の正確性と透明性の保証にもつながった。
原価管理と生産性向上にも大きな成果。多能工化とスキルアップにも
そして、「印刷業名人」の活用は、同社の原価管理と生産性向上にも大きな成果をもたらしている。過去には見えにくかったジョブごとの損益分析が瞬時に行えるようになり、より正確な原価計算と価格設定が可能になった。これにより、不必要なコストの削減や利益率の最適化が実現し、経営の健全化に寄与している。
さらに、「印刷業名人」の活用は営業プロセスにも大きな役割を果たしており、内藤氏は「これまでは営業マンから進捗状況確認の連絡が入った場合、いったん電話を切って確認してからかけ直していたが、今ではその場で瞬時に状況を伝えられるようになった」。このため、営業担当者は出先からリアルタイムで受注状況や生産進捗を確認できるようになり、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に対応できるようになった。これは、顧客満足度の向上に直結しており、長年にわたる顧客との信頼関係を一層強固なものにしている。
また、「印刷業名人」は同社の販売管理にも効率化の効果をもたらしている。同社では「印刷業名人」の導入以前、Excelと市販の販売管理ソフトを活用していたが、データの手入力によるミスが起こりやすい状況であった。しかし、現在は自動で必要事項を処理できるため、入力ミスの問題を解決した。さらに、これによりオペレーターのストレスが軽減され、より質の高い作業に集中できる環境が整っている。
この業務を担当する長谷部都志子氏は、「1ヵ月あたり約60時間を売上入力の作業に費やしていた」と当時の労力を振り返る。それが現在は「印刷業名人」の販売管理オプションにより、データと連動させて処理が可能になったため、「作業時間は従来の3分の1の約20時間に減少した」(長谷部氏)と話している。
そして、余った時間は他の業務に費やせるようになり、現場の多能工化やオペレーターのスキルアップにもつながっている。同社にとって「印刷業名人」の導入は、単に作業の自動化を実現するだけでなく、オペレーターの働き方を根本から変え、組織全体の生産性向上に大きく貢献していると言えそうだ。
ユーザックシステムの顧客第一主義のサポートに信頼
ユーザックシステムの企業としての評価について、同社は顧客に対する真摯な姿勢とサービスの質の高さを挙げる。とくに「印刷業名人」の導入サポートにおいて、ユーザックシステムの顧客中心のアプローチを高く評価している。
また、「導入準備の期間はコロナ禍の中、ウェブ会議を活用してコミュニケーションを維持していただいた。大阪からサポートをして頂いたが、数回の訪問だけであとはWebで完結し、柔軟かつ継続的なサポート体制にも満足しており、距離的なデメリットは感じなかった」(雫石社長)ということで、今後もビジネスパートナーとして長期的な関係を構築していきたい意向を示している。
ユーザックシステムの企業としての姿勢は、ユーザーの要望を丁寧に聞き取り、それに応えることを心掛けることで高い信頼性を築いていくことにある。そのサポート体制は、ただ単に製品を提供するだけでなく、ユーザーの成功をサポートすることに重点を置いており、これが同社の評価を高める大きな要因となっていると言えるだろう。
女性中心に「Beauty Package」をさらに高める
同社の特徴の1つとして、現場を含めて女性が多いことが挙げられるが、雫石社長は、将来的には現場を女性で埋め尽くすことで、キャッチフレ–ズに掲げる「Beauty Package」にさらに相応しい企業を目指していく考えだ。
「女性は細かいところにも気配りができ、現場に向いていると考えている。とくに当社は化粧品パッケージを作っているので、女性中心の現場を構築することで、さらに高品質で上品なパッケージ作りに注力していきたい」と語り、これにより化粧品パッケージ製造における独自性と競争力をさらに高めていく考えを示している。
最後に
取材の最後に雫石社長は、「印刷業名人」の導入を通じて、従業員一人ひとりの能力や成長の機会を促進している点にも触れた。同システムの導入により明らかになった従業員の個々の能力を生かし、さらなる効率化と生産性向上を目指していくという。同社の取り組みは、単なる製造業からさらに一歩進んだ「美の創造者」としての自負を感じさせ、その姿勢が今後も業界内での同社の位置づけをより強固なものにしていくことになるだろう。今後の展開が楽しみな企業の1つである。