株式会社坂井印刷所 様

ローカルルールを廃し、印刷業名人により全社で「見える化」を実現
事務の残業時間激減や製造現場のペーパーレス化などあらゆる効果を実感

ソリューション:
  • 特化
対象製品:
  • 印刷業名人
業種:
  • パッケージ印刷(紙器印刷)業

事例(PDF)

事例概要

  • 悩み
    1. オフコンベースの基幹システムを運用していたが、主役はエクセルで、部署毎のローカルルールが存在
    2. 材料手配や作業日報の二重入力や二重管理が日常化し、手書き伝票も多く、手続きも煩雑であった。
    3. 営業は見積時、原価計算を電卓や過去の伝票を基にするなど、社内の事務作業に掛かる負荷が少なくなかった。
    解決
    1. 印刷業名人導入により業務の「見える化」をすることで一元管理でき、業務効率化を実現。
    2. 製造現場のタブレット端末の導入で、タイムリーな実績入力とペーパーレスが進んだ。
    3. システムによる原価計算で、営業の見積業務が劇的に速くなった。

古くて新しい100年企業

(右から)代表取締役社長 奥敦雄氏
制作本部本部長 船越大佑氏
情報システム課課長 立花由美子氏

国内に約3万社あるといわれる「創業100年企業」の1社が今回ご紹介する株式会社坂井印刷所様です。
1901(明治34)年、創業者の坂井省三氏が大阪市で個人経営の印刷所を創立。1952(昭和27)年に会社設立、1955(昭和30)年には本社および工場を現位置に構え、以降、寝屋川市に工場・物流センター、東京にも営業拠点を設けるなど、総合印刷業としての歩みを続けています。
同社は、貼り箱やギフト箱、個装箱、紙管、Vカット箱、アウトラインケースなどの各種紙製パッケージ類をはじめ、缶ケースや紙袋、チラシ・フライヤー・DM・カタログなど、多様なアイテムの企画・デザイン・印刷からアソート(パッケージ組立・商品封入梱包)までを手がけています。

坂井印刷所様はさまざまなパッケージや
印刷物を手掛けている

お客様の業種も、和・洋菓子、医薬品、日用品・トイレタリー、健康食品、食品・ギフト、おもちゃ、衣料品、化粧品
など多岐な分野にわたります。
なかでも、同社が得意とする分野の一つが、チョコレート等の洋菓子パッケージです。特にバレンタイン用は毎年趣向を凝らした新しい形態が求められ、視覚効果の高いパッケージ開発を菓子メーカーとともに行っています。
そのため、企画・デザイン等クリエイティブ機能の向上をめざし、5年前に企画制作部門を立ち上げるなど対応を強化しています。
その制作本部のリーダーでありながら、情報システム部も統括し、「印刷業名人」の選定・導入の責任者を務めていただいた船越本部長に話をうかがいました。

経営戦略部門で企画・デザインの部署を立ち上げ、厳しい環境に立ち向かう

制作本部 本部長 船越氏

船越 氏:印刷業界は出版や帳票印刷を除くと、カタログ・パンフレット等の商業印刷と、当社が得意とするパッケージ・ラベル印刷に大別できます。当社に入社前は商業印刷会社の営業に携わっていたのですが、当時プリント媒体はWeb媒体に押されていました。またネット印刷の台頭もあり、価格競争に巻き込まれ従来の印刷会社は厳しい環境にありました。
そんな折、同じく業界の危機感を感じ経営戦略に携わる奥社長(当時経営戦略本部長)とSNSを通じて知り合うことができ、当社へ入社の機会を得たのです。
入社後は、このようなリスクを抑えるためにより上流の企画・デザインの強化を図るとともに業界を俯瞰し会社全体を考える経営戦略部門に所属し、同時に会社を動かしていく仕組みとなる情報システムも統括して見るようになりました。

「基幹システムはあるが、主役はエクセル」

船越 氏:入社当時、当社はオフコンベースの基幹システムを運用していましたが、その範囲も限定的で、手書きや独自のエクセルが主役でした。また、システムに入力はするが、異常値やエラーが出ても「それはどうせシステムのせいだろう」とエラーが常態化していて運用意識も低く、人とシステムが乖離した状態でした。
そのシステムの保守期限が切れるタイミングで、奥社長(当時常務)の指示で新たな基幹システムの導入を検討することとなり、各社が提供するシステムの情報収集や比較を進めました。
紙器は、紙種や素材、形態が多様で、型抜きや表面加工、製箱等工程も多く緻密な外注管理も必要で、一般の商業印刷向けシステムでは対応しきれないが面があります。
20~30社のシステムを見ましたが、印刷業とりわけ紙器に特化したシステムは少なく、ユーザックシステムを含め最終段階で2社にまで絞り検討を重ね、2016年6月「印刷業名人」の採用を決定しました。決め手の一つは、当社の事情やニーズを汲んでカスタマイズしてもらえる所でした。「この部分はカスタマイズ出来ない」という他社システムに比べ柔軟に対応できる点を評価しました。また、ユーザックシステムとは2002年以降提案を受け、相談をさせて頂くなど接点を持っており、当社を理解して頂いていたことも大きな決め手となりました。

ローカルルールを廃し、一元化と効率化を図る

導入後約2年の間に、社内ルールの再設定や統一を図りながらシステムのカスタマイズに向けた調整や開発が進められました。業務改善と効率化を目標に、各部門の理解と協力を得ながら説明会や研修会を重ね、2018年5月に本稼働しました。

船越 氏:それまでは、システムに入力はするものの自分用にエクセルでの加工・管理や、エクセルに入力する前に手書きで整理など、二重入力や二重管理が当たり前でした。例えば、手書きされた作業日報を別の人がシステムに入力するので、無駄なのは言うまでもないのですが読み・書き間違いや入力ミスも発生します。また、システム入力のための依頼伝票や各種手続きが多く、伝票を発行することが仕事の一部になっていて業務効率化にはそれらの省力化が急務でした。
さらに、工場ごとに資材手配の方法に違いがあり、得意先や営業担当者により受注から出荷までの流れが微妙に異なるなど、社内ルールもまちまちで、これらを一つの枠に収束させていくことに、社内の抵抗が随分ありました。
当社独自のカスタマイズは、「企画製版工程(入稿データの調整・製版・検版)への対応」、「営業部門別受注分析資料」、「配車票」などです。

各部門における運用の状況や評価をうかがいました。

製造現場にタブレット端末を導入。事務所と往復する手間が激減、部門間連携も深まる

製造部門
梅崎 氏:従来は、営業から渡される1枚の複写伝票を見て工程を組んでいたので、詳細な情報が分からず苦労していました。旧システムには直接入力していなかったので、機械の稼働率や紙の通し枚数等は、独自にエクセルで集計していました。

印刷業名人で、本社・寝屋川の両工場を合わせ、計15台の印刷機や加工機を管理しています。それらの稼働状況がどの部署からも確認できるようになりました。
またタブレット端末の導入で、稼働予定や指図書の確認、作業実績の入力が機械ごとにその場で行えるようになり、PCのある事務所と現場を往復する手間もなくなりました。
従来の製造現場は紙媒体が多かったのが今はタブレットでの入力だけになり、ペーパーレスが進みました。また、機械別稼働率集計により細かなデータが取れるようにもなりました。「まさか、タブレットのようなものが自分の作業現場に入ってくるとは思ってもみませんでした。」と笑いながら語って頂きました。

本社工場 副工場長 梅崎純一氏
タブレット端末を使用し、現場で生産予定の確認や稼働実績を入力

印刷業名人を導入して、機械別の予定/進捗から工場全体の生産/在庫状況までリアルタイムに確認できるので、管理者の立場としても的確な指示や調整がタイムリーに行えるようになりました。またシステムを介した情報共有で、製造・物流・営業・経理等各部門間の連携は確実に深まりました。

機械別計画作成(サンプル画面)
入出荷履歴照会(サンプル画面)

データ検索が容易。営業の原価計算はシステムに任せ、劇的に早くなった見積業務

第二営業部 一課 係長 北氏康介氏

営業部門

北氏 氏:以前は複写式の製造依頼伝票を使用していたので見にくく、情報量にも限りがありました。客先からの問い合わせに対しても、受話器片手に伝票をめくったり、製造現場に電話で問合せや実際に足を運んで工程進捗を確認したりとお客様への回答が遅れることも多々ありました。今は、印刷業名人の進捗状況照会画面で確認できるのでその場で進捗報告や納期の即答が可能になりました。
また、今まで伝票を探しに行って数字を拾う作業が印刷業名人導入後は無くなりました。データ検索が容易で、得意先別確認、履歴確認、利益確認などにとても役立っています。

特筆すべきは見積業務です。印刷業名人導入後は劇的に早くなりました。今まですべて手計算で行っていましたが、印刷業名人導入により用紙・製版・印刷・加工代等の手間のかかる原価計算はシステムが自動で積算してくれるので、素早く正確な見積もりを提出できるようになりました。

資材課5人で月160時間あった残業時間が3人で月2時間に激減

資材課

西森 氏:旧システムでの資材手配は非常に煩雑でした。エクセル発注書を仕入先へFAXし、仕入先からの回答を待ってシステムの発注入力をしていました。入荷入力も月末集中型で、月次処理に1週間掛けていました。さらにその訂正処理も赤黒処理となり煩雑でした。
印刷業名人導入後はシステムの発注書となり、入荷入力も都度行えるようになりました。リピート時には代理店(仕入先)が自動反映され便利です。月次処理も1日で完了できるようになりました。当時資材課は5人の人員でしたが現在は3人で対応可能となり、残業も激減しました。
加えて、資材購入の方法も見直しました。常備紙の購入を止め、都度購入に変更。抄造紙など事前手配はしますが必要になるまでは仕入先で保管して頂いていますので、倉庫スペースに余裕が出来て庫内の作業性もUPしました。また、印刷業名人では、都度購入の資材は出庫入力を割愛でき、入力業務の削減にも繋がっています。
印刷業名人では、発注履歴など欲しい情報がいつでも取り出せるため、抄造紙手配では先行して営業へ確認を行うなど先手を打つことが出来るようになりました。印刷業名人導入後、業務のスリム化が進んだことにより管理者が現場に入ることが出来るようになっています。

「見える化」された印刷業名人に今後も期待

情報システム課 課長 立花由美子氏

情報システム部門

立花 氏:印刷業名人に関する各部門からの要望や問い合わせへの対応、ユーザックシステムとの連絡窓口を担当しています。
私自身、前職はIT企業に勤務し、製造業は初めてでした。旧システムには携わっていませんが、入社時常態化していた紙の運用には驚きました。対照的に、現在はほしい数字がすぐ確認できる「見える化」された印刷業名人は、ITに携わってきた私にとっても業務効率化への効果を強く実感しています。
今後ですが、印刷業名人の機能を使い切れていないところがまだまだありますので、半年に一度程度はユーザックシステムとの情報交換の場を持ちたいと考えています。運用上の改善点の指摘や、「カスタマイズすれば、さらにこんな機能も使えるようになります」といった提案を今後も頂きたいと思っています。

「すべては『人』に帰結する」を基軸に人とシステムに向き合う

代表取締役社長  奥 敦雄氏

奥 社長:経営の指標となる数字やデータがいつでもすぐに取り出せるようになりました。その意味で、システムによる業務への効果は顕著と言えます。一方、現時点では「印刷業名人」の機能や能力がすべて発揮されているとは言えず、当社における運用改善の余地はまだまだ残されています。
営業だろうが、製造だろうが、そこに介在している人がいかにその力を発揮できるか、「すべては『人』に帰結する」ということを基軸に据えて当社は経営にあたってきました。システムを活かすも殺すも、運用する人に関わっていると考えています。
その意味でも、今後とも引き続きユーザックシステムから指摘や提案をいただきながら、人とシステムとの親和性を高め、それぞれが成長・進化していくことを期待しています。

取材を終えて

今回の取材を通して、営業部門、業務部門、製造部門、システム部門それぞれのお立場での「印刷業名人」の評価についてお話をお伺いすることが出来ました。「見える化」「ペーパーレス」「情報共有」「業務効率化」「原価自動積算」など、日頃我々がDX化実現のためご提案しているキーワードがお客様の口から出てきたことは非常に嬉しく感じました。
一方、「まだまだ使い切れていない機能がある」「機能や能力がすべて発揮されているとはいえない」など、我々への課題も頂戴しました。
今後は半年に1回程度の定例会を通じて、社長がお話になる「人とシステムとの親和性を高め、それぞれが成長・進化していく」ご支援をしていきたいと思います。

企業プロフィール
会社名 株式会社坂井印刷所
本社 〒534-0016 大阪市都島区友渕町3丁目2番19号
創業年月 明治34年(1901年)10月
設立 昭和27年5月20日
資本金 6,300万円
事業内容 各種印刷並びに印刷物の販売に関する業務、紙加工及び製本に関する業務
従業員数 170名
Webサイト https://www.sakai-prt.co.jp/

関連商品・サービス

  • 印刷業名人

    業務現場を変える紙器・パッケージ印刷業向け業務管理システム

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