
業務改善
RPAのトライアルから差がつく業務改善プロジェクト
コロナ禍で多くの企業がDX推進の重要性を実感し、新たにRPA導入を検討し始めたところもあるようです。しかし本格的な導入までに時間がかかってしまい、プロジェクトが途中で頓挫してしまうことも少なくありません。これは、何が原因なのでしょうか。
限られたリソースの有効活用を目指す企業にとって、毎日のルーティン業務の効率化は避けて通れない課題であるといえます。多くの企業が従業員の負担軽減に向けた取り組みを進める一方、解決の糸口を見出せずに、業務改善に苦戦する企業も少なくありません。
東京都立川市で精肉卸売業を営む有限会社肉のクボタ(以下、当社)もまた、毎日のルーティン業務の効率化を課題にする企業のひとつです。数百にも及ぶ取引先からの受発注システムの発注書、留守番電話の出力を人力で行うため、担当者の出勤時間が通常よりも2時間前倒しになっていました。欠勤時に代替できる従業員もいないことから、業務の属人化と高負荷が同時に発生する悩みを抱えていました。
解決策として、2024年末より伝票出力業務をAutoジョブ名人「Robo派遣」サービスへ切り替えたところ、定時出勤時間前にすべての発注書の自動出力が可能になり、課題であった一部従業員の労働時間軽減と受注処理業務の効率化に成功しました。
そこで、「Robo派遣」サービス導入の経緯や効果、今後の展望について、同社代表取締役の久保田浩嗣様、営業部長の迫田様、事務担当の金井様にお話を伺いました。
――― 貴社の事業内容について教えて下さい。
久保田浩嗣氏(以下、久保田氏)当社は明治22年(1889年)に東京都立川市で創業した会社です。創業当初は食堂を営んでおりましたが、大正時代に入り立川基地ができたのを機に、地域の飲食店へ精肉を卸すようになりました。現在は東京23区を中心に、南関東全域の飲食店をお取引先とする食肉卸売業を営んでおります。
――― 貴社が導入前に抱えていた課題を教えてください。
迫田氏:現在は約800件のお取引先様とお取引があり、毎日400件以上のご注文をいただいています。受発注システムを通じて発注書を出力し、それをリストとして発送する商品をピッキングしています。そのため、受発注システムの発注書を少しでも早く出力する必要があるのですが、留守番電話含め毎朝200件以上の発注書を出力するにはある程度の時間が必要になるため、受注処理の担当者には他の従業員よりも早く出勤してもらう必要がありました。また、朝には電話でご注文を受けることも多いため、電話応対のための人員の確保も課題のひとつとなっていました。
弊社の通常の始業時間は朝6時からですが、2名の受注処理担当は朝4時の出勤が常態化しており、現場の準備をする従業員も4名程朝5時前の出勤が常態化しており、一刻も早く解消したいと考えていました。
――― Autoジョブ名人「Robo派遣」サービスを知ったきっかけを教えてください。
迫田氏:発注書の出力に関する課題は7年近く前から感じていました。しかし解決方法がなかなか思い浮かばず、当時の受発注システムベンダーの営業担当者に相談をしても、具体的な提案をいただくことはできませんでした。
きっかけはコロナ後に受発注システムの担当者が変更になったことです。その方にRPAのお話を伺い、弊社の課題についてご相談したところ、即座にユーザックシステムの「Robo派遣」サービスを紹介していただきました。
――― ユーザックシステムより「Robo派遣」サービスの提案を受けたときの感想を教えてください。
迫田氏:当時はRPAの存在を知らなかったので、そんな方法があるのかと驚きました。受発注システムベンダーからユーザックシステムにつないでいただく話が進んでいたときは、長年悩んでいた課題の解決が近づいていることに胸が高鳴っていたのを覚えています。
実際にユーザックシステムからデモ画面を見せていただいたときには、本当に感動しました。抽象的ですが私が描いていたイメージそのままの動きが画面上で再現された時は、すぐにでも導入して、改善していかないといけないという思いが強くなっていきましたね。
――― 改めて、「Robo派遣」サービスを利用している業務内容を教えてください。
迫田氏:「Robo派遣」サービスには、受発注システム上で注文内容の発注書を出力する操作をお願いしています。システムのアプリケーションを起動し、発注書を出力するボタンを押してもらいます。操作はそれほど複雑ではありませんが、出力の命令を出してからプリンターが全発注書を出力するまでに40分から1時間ほどの時間がかかりますので、出力時間を加味したタイミングで操作するようにスクリプトを組んでいただきました。
なお、得意先によって導入している受発注システムが異なるため、受注側も合わせたシステムの導入が必要になります。現在、弊社が導入している受発注システムはBtoBプラットフォーム、ASPIT、TANOMUの3種類です。「Robo派遣」サービスには、この3種類のシステムそれぞれの起動と発注書の出力を任せており、3つのシナリオを動かすように設定しています。
―――「 Robo派遣」サービス導入にあたり、何かご苦労はありましたでしょうか。
久保田氏:パソコンの納期ですね。当時オフィスにあったパソコンではスペックが足りなかったため、「Robo派遣」サービスの導入を機に、パソコンを一台新調しました。「Robo派遣」サービスは稼働させるパソコンへの要求スペックが高いため、当時弊社にあったパソコンでは満足に動かすことができないことがわかりました。合わせて環境構築についてシステム会社に相談をしたところ、オーダーメイドになるため用意にかなり時間がかかると言われてしまったのです。
相談をしたのが2024年9月頃だったのですが、当初は春先までかかるといわれました。我々としてはすぐにでも自動化したいという強い思いがありました。ところがシステム会社の担当者様のおかげで、奇跡的に11月末には納入してもらうことができました。
迫田氏:「Robo派遣」サービスの構築に関しては、大きなトラブルはまったくと言っていいほどありませんでした。テスト稼働時に、発注書がプリンターから出力されないという問題が発生しましたが、RPAの開発に慣れたエンジニアの方が機転を利かせて対応していただいたため、当日のうちに解決できました。エンジニアの方とのやりとりも非常にスムーズでしたし、回答も非常にスピーディでしたので、導入で苦労したという記憶はほとんどありません。導入後も小さなトラブルはあったのですが、朝のうちにメールでエンジニアの方に連絡しておくと、その当日のうちに修正をしてくれましたので、トラブルを翌日に引きずったことはありません。
―――「 Robo派遣」サービス導入は御社の課題解決につながりましたか?
迫田氏:当初の想定通り、出力担当者の超過勤務を大幅に短縮できました。朝の出勤時間が4時から6時前に戻せましたので、1ヶ月あたり2名で合計73時間超削減に成功しています。
あと現場の準備をする4名も1か月あたり合計で42時間超削減に成功しております。現時点では「Robo派遣」サービスの稼働期間が3ヶ月ほどですが、現在のペースであれば年間で1380時間分を短縮できる見込みです。
金井氏:受発注システムからの発注書の出力のほかにも、事務所内の業務効率向上の成果が出ています。「Robo派遣」サービスの導入と同時に、留守番電話の発注の中止に伴いLINEで受注を受けられるシステムを導入しました。以前は営業時間内に電話によるご注文を受け付けて当日の配送も行っておりました。その為、朝から追加のご注文の電話を頂き発注書を現場に渡し伝票を発行する作業が発生していました。そのため事務員が、作業中にかかってくる追加注文の電話により作業を中断されることも多く、業務を効率よく進められない状態となっていました。
「Robo派遣」サービスの導入を機に、留守番電話による受注を廃止し、LINEで受注できるシステム導入を機に当日の朝4時までの受注に変えて当日のご注文の納品を廃止した事により追加の電話もなく(受け付けは朝8時からに変更)、朝の業務負担を大きく削減できています。かつては3人の事務員のうち2人が電話対応にとられるときもありましたが、今では業務時間を短縮でき、事務作業の遅れが原因のドライバーの出発遅延といった問題はほとんど発生していません。
――― 今後、ICTをどのような業務に活用したいとお考えでしょうか。
迫田氏:集金業務の効率化や自動化は考えていきたいですね。飲食に関する業界は中小企業が多い影響もあり、現金取引がまだまだ残っています。人間同士による直接現金のやり取りがあるため、集金額の間違いで10円少ないといったミスは発生しがちですので、効率よく確実に集金できるような仕組みを構築したいですね。
久保田氏:たとえば、お客様にバーコード決済を利用して代金をお支払いいただき、その集計を自動化するような仕組みがイメージできます。金銭のやりとりをすべて電子化して記録を残せるようになると、集計も楽になりますし、税務署への説明もしやすくなります。
業界の慣習もありますので、どこまで実現できるかはわかりませんが、さらなる業務効率化の方法は考えていきたいと思っています。
――― 最後に、「Robo派遣」サービスはどのような企業や業種に向いているとお考えか教えてください。
迫田氏::同業の食肉卸業だけでなく、鮮魚や野菜、乾物やお酒など、食品の流通にかかわる業種であれば大きな効果を感じられると思います。どの業種も、私たちと同じような悩みを抱えているはずですし、顧客の数が増えるほどその悩みは大きくなっていきますので、少しでも早い時期の導入をおすすめしたいですね。
久保田氏:弊社は「Robo派遣」サービスを導入したことで、課題となっていた受発注の出力の問題を解決しただけでなく、事務作業の効率化にも成功しました。想定外といっていい成果につながった実感がありますが、これは弊社だけでなく、多くの食品卸の会社で再現できると思っています。すでに電子取引を導入している企業であればすぐにでも効果を実感できるはずですし、まだ導入していない企業であればAutoジョブ名人「Robo派遣」サービスによる自動化を見据えた仕組みの構築を検討してよいと思います。
――― 本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
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