RPA導入で最初に選ぶべき業務とは?対象業務の選定基準と優先順位のつけ方

RPAの導入を検討するとき、迷いやすいのが「どの業務から自動化するか」です。
結論からいうと、RPA導入で最初に選ぶべきなのは、手順や判断基準が明確で、繰り返し発生し、例外が少なく、導入効果を測りやすい業務です。
単純に作業時間が長い業務を選べばよいわけではありません。削減できる時間が大きくても、人による判断や例外処理が多ければ、シナリオの開発やメンテナンスに手間がかかります。
反対に、自動化しやすくても、年に数回しか発生しない作業では、導入効果を実感しにくいでしょう。
最初の対象業務では、「自動化しやすさ」と「効果の確認しやすさ」の両方を考えることが重要です。本記事では、RPA導入の最初の対象に向いている業務の条件と、候補業務の優先順位を決める方法を解説します。
RPA導入全体の流れについては、以下の記事も参考にしてください。
RPA導入の進め方とは?手順・費用対効果・失敗しないポイントを解説
RPA導入の最初の対象には、「自動化しやすく、一定の効果が見込める業務」が適しています。
候補業務は、次の2軸で整理できます。
| 効果が大きい | 効果が小さい | |
| 自動化しやすい | 最初の対象として優先する | 短期間の検証や操作習得に活用する |
| 自動化しにくい | 対象範囲を絞るか、2本目以降に検討する | 優先順位を下げる |
最初から最も大きな業務を自動化しようとすると、対象範囲が広がり、関係するシステムや例外処理も増えやすくなります。その結果、開発期間が長くなり、RPAの効果を確認するまでに時間がかかることがあります。
一方、簡単さだけを優先すると、削減できる時間が少なく、「RPAを導入したものの効果が分からない」という状態になりかねません。
重要なのは、単に小さな業務を選ぶことではなく、短期間で稼働させやすく、導入前後の変化を確認できる業務を選ぶことです。
また、「受注業務」「請求業務」といった大きな括りではなく、実際の作業単位で検討することもポイントです。
例えば、「受注業務全体」を自動化するのが難しくても、次のように分解すれば、RPAに適した作業が見つかる場合があります。
- 取引先のWebシステムから受注データをダウンロードする
- ダウンロードしたファイルを所定の名前で保存する
- 必要な項目を基幹システムへ転記する
- 処理結果を担当者へメールで通知する
業務全体に人の判断が含まれていても、前後にある定型作業だけを切り出せば、自動化できる可能性があります。
1.作業手順と判断基準が明確である
RPAは、あらかじめ設定された手順や条件に沿ってパソコンを操作します。そのため、「どの画面を開き、何を入力し、どの条件で次の処理に進むか」を明確にできる業務が適しています。
業務マニュアルを作成できる、あるいは担当者が作業手順を順番に説明できるかどうかが、ひとつの判断基準です。
担当者が状況を見ながら対応を変えている業務や、経験によって判断している業務は、最初の対象には向きません。先に判断基準を整理し、業務を標準化する必要があります。
2.同じ作業が繰り返し発生する
毎日、毎週、毎月など、同じ手順で繰り返し発生する業務は、RPAによる効果を積み上げやすい業務です。
1回あたりの作業時間が短くても、頻度や処理件数が多ければ、年間では大きな作業時間になります。
例えば、1回10分の作業が1日3回発生する場合、年間の作業時間は100時間を超える可能性があります。こうした細かな定型作業も、自動化候補として確認しておきましょう。
3.パソコン上のデータを扱っている
ExcelやCSV、Webシステム、基幹システムなど、デジタルデータを扱う業務はRPAに向いています。
特に、毎回同じ形式のファイルを使用する業務や、決まった画面からデータを取得する業務は、シナリオを作成しやすく、安定して稼働させやすい傾向があります。
紙の帳票や手書きの書類を扱う業務では、RPAだけでなくOCRやAI-OCRとの組み合わせが必要になる場合があります。最初の導入では、すでにデータ化されている範囲から始めると、検証項目を絞りやすくなります。
4.人による判断や例外処理が少ない
通常の処理手順が決まっていても、例外が頻繁に発生する業務は注意が必要です。
例えば、「入力内容に不備があれば担当者が取引先へ確認する」「取引条件によって処理方法を変える」といった対応が多い場合、すべてをRPAで処理しようとすると、シナリオが複雑になります。
ただし、例外があるからといって、業務全体を対象外にする必要はありません。
通常処理だけをRPAに任せ、例外が見つかった場合は担当者へ通知する形にすれば、人の判断を残しながら定型部分を自動化できます。
5.業務手順や使用システムが安定している
導入直後に業務手順や使用システムが変わる予定がある場合は、最初の対象として慎重に検討する必要があります。
RPAのシナリオを作成した後に、システムの画面やファイル形式、操作手順が変わると、修正が必要になることがあります。
近いうちに基幹システムの入れ替えや業務フローの変更が予定されている場合は、変更後に自動化するか、影響を受けにくい範囲だけを対象にするとよいでしょう。
6.導入効果を測定しやすい
最初の業務では、RPA導入前後の変化を確認できることも重要です。
例えば、以下の数値を把握できる業務は、効果を説明しやすくなります。
- 1回あたりの作業時間
- 月間の処理回数・処理件数
- 作業に関わる人数
- 入力ミスや手戻りの件数
- 残業や休日出勤の時間
- 処理が完了するまでの時間
作業時間だけでなく、ミスの減少、確認作業の軽減、処理の早期化なども効果として整理できます。
RPAの効果測定については、以下の記事で詳しく解説しています。
RPA導入でどんな効果が得られる?具体的な効果測定方法まで解説
7.影響範囲を限定でき、必要に応じて手作業へ戻せる
最初の導入では、RPAが停止した場合の影響も考えておく必要があります。
例えば、RPAが一度停止しただけで受注や出荷がすべて止まり、すぐに手作業へ戻せない業務は、最初の検証対象としてはリスクが高くなります。
対象範囲を一部の取引先や一定期間に限定する、処理結果を担当者が確認してから次の工程へ進めるなど、問題が発生したときに対応できる形で始めると安心です。
本稼働後に安定性を確認しながら、段階的に対象範囲を広げていきましょう。
最初の対象として検討しやすいのは、データの取得、転記、集計、照合、保存といった定型作業です。
|
業務例 |
RPAに向いている理由 |
確認したい点 |
|
Webシステムからのデータ取得・保存 |
操作手順と取得するデータが決まっている |
ログイン方法、画面変更、ダウンロード完了の判定 |
|
Excelから基幹システムへの転記 |
同じ項目への入力を繰り返す |
入力データの形式、エラー時の処理 |
|
複数ファイルの集計・レポート作成 |
定期的に同じ集計を行う |
ファイル名や保存場所、計算ルール |
|
データの照合・不一致の抽出 |
比較条件をルール化しやすい |
不一致が見つかった後の対応 |
|
メール添付ファイルの保存・振り分け |
件名や送信元などで処理を分けられる |
想定外のメールや添付形式への対応 |
注意点として、この表にある業務であれば、必ず最初の対象に適しているとは限りません。
例えば、データ転記であっても、入力のたびに担当者の判断が必要であれば、自動化の難易度は上がります。一方、月に1回の業務でも、数千件のデータを扱い、数日かかっているのであれば、優先度が高くなることがあります。
業務名だけで判断せず、実際の手順、頻度、件数、例外処理まで確認することが大切です。
判断や例外処理が多い業務
担当者の経験や、取引先ごとの個別条件に依存する業務は、シナリオが複雑になりやすくなります。
判断が必要な部分は人に残し、その前後にある入力・転記・集計などを切り出せないか検討しましょう。
業務手順が統一されていない業務
担当者ごとに手順が異なる場合、どの手順をRPAに設定するか決められません。
RPA導入前に、不要な作業の削減や手順の統一を行う必要があります。現在の手作業をそのまま自動化すると、非効率な業務まで残してしまう可能性があります。
近いうちに変更される業務
システムの入れ替えや組織変更、業務フローの見直しが予定されている業務は、シナリオを作成しても短期間で修正が必要になる場合があります。
変更予定と時期を確認したうえで、自動化する範囲を判断しましょう。
関係するシステムや部門が多い業務
複数の部門やシステムをまたぐ業務は、大きな効果が期待できる一方で、権限設定や運用調整、例外処理の確認に時間がかかります。
最初の対象では、一つの部門内で完結する部分や、関係者が少ない範囲から始める方法があります。
効果を確認できない業務
現状の作業時間や処理件数が分からないと、RPA導入後に成果を説明できません。
最初の業務では、導入前の工数やミスの発生状況を記録し、比較できるようにしておきましょう。
ステップ1.RPA導入の目的を決める
最初に、RPAで解決したい課題を明確にします。
「作業時間を減らす」「入力ミスを減らす」「朝までに処理を完了する」「繁忙期の負担を軽減する」など、目的によって優先する業務は変わります。
複数の目的がある場合は、最初の導入で何を確認したいのか、優先順位を決めておきましょう。
ステップ2.自動化候補となる業務を洗い出す
対象部門の業務を洗い出し、作業時間、頻度、処理件数、使用システムなどを整理します。
この段階では、RPAで自動化できるかどうかを厳密に判断する必要はありません。現場で負担になっている定型作業を、候補として広めに集めます。
業務の洗い出し方やフォーマットについては、以下の記事を参考にしてください。
業務棚卸とは?やり方・フォーマット例から自動化への活かし方まで解説
ステップ3.業務を作業単位に分解する
候補業務を、RPAで実行できる作業単位まで分解します。
例えば、「請求処理」ではなく、次のように具体化します。
- 売上データを販売管理システムから出力する
- 請求先ごとにデータを集計する
- 請求書をPDF形式で保存する
- ファイル名を変更する
- 担当者へ処理結果を通知する
一連の業務すべてを自動化するのが難しくても、定型的な部分だけなら自動化できる場合があります。
ステップ4.自動化しやすさと効果を評価する
候補業務を同じ基準で評価し、優先順位をつけます。
以下は、社内で候補業務を比較するための簡易評価表です。
|
評価項目 |
3点 |
2点 |
1点 |
|
手順・ルール |
明確に決まっている |
一部整理が必要 |
担当者の判断に依存する |
|
例外処理 |
ほとんどない |
一定数ある |
頻繁に発生する |
|
データの状態 |
デジタルで形式も一定 |
一部加工が必要 |
紙や不定形データが多い |
|
業務・システムの安定性 |
当面変更予定がない |
一部変更の可能性がある |
変更が予定されている |
|
復旧のしやすさ |
手作業へ戻せる |
一部影響が残る |
停止時の影響が大きい |
|
頻度・処理件数 |
多い |
中程度 |
少ない |
|
現在の負担 |
時間・ミス・残業などの課題が大きい |
一定の課題がある |
負担が小さい |
|
効果測定 |
導入前後を数値で比較できる |
一部のみ比較できる |
比較が難しい |
点数は、業務を機械的に決定するものではありません。「自動化しやすさ」と「導入効果」のバランスを、候補業務間で比較するために使用します。
効果は大きいものの自動化しにくい業務は、対象範囲を狭めることで、最初の候補にできないか検討してみましょう。
ステップ5.実際の業務でトライアルを行う
候補業務を絞り込んだら、実際のシステムやデータを使用して動作を確認します。
サンプル画面で動くだけでは、自社の業務で安定して稼働するかは判断できません。トライアルでは、次のような点を確認します。
- 通常時の処理を最後まで実行できるか
- 処理時間をどの程度短縮できるか
- データ量が増えても安定して動くか
- 想定外のデータを検知できるか
- エラーの原因を確認しやすいか
- 担当者が処理結果を確認できるか
- 停止した場合に手作業へ戻せるか
検証結果をもとに、対象業務、シナリオ、運用方法を調整してから本稼働へ進みます。
月に1回しか発生しない業務はRPAに向いていませんか?
頻度が低くても、1回の処理に長時間かかる、処理件数が多い、ミスの影響が大きいといった業務は、自動化する価値があります。頻度だけでなく、年間の作業時間や業務負担で判断しましょう。
業務全体を自動化する必要がありますか?
業務全体を自動化する必要はありません。判断が必要な部分は人が担当し、データ取得、転記、集計、通知などの定型作業をRPAに任せる方法があります。部分的な自動化でも、十分な効果を得られる場合があります。
紙を扱う業務もRPAで自動化できますか?
RPA単体では、紙に記載された情報を直接読み取ることはできません。OCRやAI-OCRで紙の情報をデータ化し、その後の入力や転記をRPAで自動化する方法があります。
どの部門から導入するのがよいですか?
特定の部門から始める決まりはありません。経理、人事、営業、受発注、物流など、定型的なパソコン作業がある部門が候補になります。部門名ではなく、作業手順、頻度、例外処理、効果の測りやすさをもとに判断しましょう。
RPA導入で最初に選ぶべきなのは、単に作業時間が長い業務ではありません。
手順が明確で、繰り返し発生し、例外が少なく、導入効果を確認しやすい業務が適しています。また、停止した場合の影響を限定でき、必要に応じて手作業へ戻せることも重要です。
大きな業務を一度に自動化するのが難しい場合は、データ取得、転記、集計、照合、通知などの定型部分を切り出してみましょう。
最初の業務で安定稼働と導入効果を確認できれば、その結果をもとに、対象業務や利用部門を段階的に広げやすくなります。
RPAの対象業務選定を含む導入全体の進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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