DX推進とRPAはどう関係する?企業がDXを推進するべき理由とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化、業務プロセスを変革し、企業の競争力を向上させる取り組みです。近年、このDXを推進する企業が増えており、生産性やサービス品質の向上、顧客満足度の強化にもつながるとして注目されています。

一方、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は定型的な事務作業やバックオフィス業務をソフトウェアロボットによって自動化する技術です。多くの企業では最初のDX施策としてRPAを導入し、手軽に業務効率化を実感できることが大きな魅力となっています。

本記事では、DX推進とRPAの関係性、企業がDXを推進する具体的な理由、RPAを活用した成功事例などを幅広く紹介します。DXを成功させるためのポイントを把握し、自社の競争力向上につなげましょう。

DXとRPAの関係性とは?

まずはDXRPAの基本的な概念をおさえ、それぞれがどのように連携して企業の成長を後押しするのかを整理してみましょう。

DXとは

DXとは企業がデジタル技術を戦略的に活用して、業務プロセスの効率化だけでなく、組織文化やビジネスモデルそのものを変革し、新たな収益源や顧客価値を生み出す取り組みです。従来の枠組みにとらわれず、顧客体験を改革したり、データ活用による精緻な意思決定を進めたりすることで、変化の激しいビジネス環境でも柔軟に対応できる企業体質を構築します。

例えば、クラウドやAIIoTなどのデジタルテクノロジーを活用して、リアルタイムでデータを収集・分析する仕組みを生かし、製品開発やマーケティング戦略に反映させていくことが挙げられます。これにより、高付加価値サービスの創出や顧客ロイヤルティの向上につなげることが可能です。

RPAとは

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ソフトウェアロボットがPCで行う定型的な手作業を代行し、効率化と自動化を実現する技術です。例えば、請求書処理や受注入力作業、在庫データの更新など、繰り返し行われるPC作業に活用されています。

これまで人が手作業で担当していた部分を自動化することで、人的ミスの減少や作業工数の大幅な削減が期待できます。特にバックオフィス業務では、RPAによる自動化の効果を比較的短期間で得られるので、RPA活用のスモールスタートやDX推進の第一歩として取り入れる企業が増えています。

DX推進のためのRPAの役割・有用性

RPAの活用により、早い段階でタスクの効率化・自動化を行えるため、DX推進の効果を短期間で実感しやすい点が最大の利点です。既存のシステムを抜本的に入れ替える必要がないため、コストを押さえつつ、DX化を進められる強みがあります。

さらに、RPAによって業務プロセスを可視化・最適化していく中で、デジタル技術を活用した新しい取り組み(AIによるデータ分析や、オンラインサービス拡充など)へとスムーズにつなげられます。これが企業のDX推進を加速させる大きなポイントとなるのです。

企業がDXを推進するべき理由

変化の激しいビジネス環境や顧客ニーズの多様化に対応するために、企業はスピード感のある経営判断が求められています。デジタル技術を業務のあらゆる面に取り入れることで、組織の柔軟性を高め、効果的にリソースを配分しやすくなります。

顧客との接点でもDXは効果を発揮し、オンライン上でのコミュニケーションやサービス提供の強化が不可欠な時代です。多角的な視点とデータをつなげることで、新たなビジネスチャンスを見つけやすくなる利点もあります。

業務効率化と生産性向上

DXに取り組むことで、これまで紙ベースや単純入力で人手に頼っていた作業をデジタル化し、自動化へつなげられます。特にRPAとの組み合わせは効果的で、単純かつ繰り返し発生する業務負荷を劇的に低減できます。

その結果、従業員がコア業務に集中できる時間が増え、組織全体の生産性を高められます。

顧客体験の向上

顧客が求めているのは、迅速かつパーソナライズされたサービスです。DXによるリアルタイムなデータ活用やオンラインサービスの整備が進むほど、個々のニーズに合わせた対応が容易になります。

顧客満足度やリピート率が向上し、売上拡大にもつながります。

競争力の強化

業務やサービスにデジタル技術を取り入れることで、市場の変化に素早く対応でき、競合他社に対し優位性を確保できます。例えば、新たな販路をオンラインで拡大したり、多チャンネルでの顧客接点を増やしたりすることで、ビジネスの成長速度を加速させられます。DXは、変化の激しいビジネス環境で、安定した競争力を確保するカギとなるでしょう。

新しいビジネスチャンスの創出

DXによってデータの活用範囲が広がり、新商品や新サービスの開発が進みやすくなります。顧客データの解析をもとに、これまで想定外だったニーズを発見し、潜在需要に応える新しいプロダクトを生み出せる可能性があります。

既存事業にとらわれずにチャレンジし続けることで、新たな市場を開拓し、収益源の多様化につなげられます。

DX推進成功のための戦略的アプローチ

DXは一朝一夕には成し遂げられません。まずは小規模なプロジェクトで実績を作り、全社展開へとステップアップしていくことが効果的です。紙帳票をデータ化する、RPAで業務を自動化するなど、スモールスタートでPDCAを回し、実績を積むことで社内理解を得られます。

全社展開の際も同様に、目標設定や継続的な改善サイクルが重要になってきます。経営陣の積極的なコミットメントや、部署横断のチームづくりがDX推進を円滑に進めるポイントとなります。

RPAを使ったDX取り組みの例

実際にどのような領域でRPADX推進のきっかけとなっているのか、具体的な企業事例を見てみましょう。

多くの企業では受注業務や請求処理などの繰り返し作業をRPAで自動化し、その成果を基に業務全体の見直しを進めています。こうした成功体験を得ると、他の部門や業務プロセスへ横展開しやすくなり、DX推進の勢いが増すのです。

RPAによって浮いた人員や時間を、よりクリエイティブな業務や顧客対応に振り分けることで、企業全体の生産性と付加価値が高まります。

受注業務プロセスの自動化から始まるDXへの取り組み

焼肉のたれで有名なモランボン株式会社では、2011年、30年間利用していたEDI(電子データ交換)システムを刷新する業務改革を行っています。
いくつもの課題を抱えたメインフレームを、なんとか使用し続けていましたが、東日本大震災時に起きた計画停電によってシステムが完全停止する事態に。EDIシステムもメインフレームで稼働していたため、これを機会に、オープン化に踏み切りました。

EDIシステムのオープン化で導入を決めたシステムは「EOS名人.NET」です。選定の理由の一つであるEOS名人.NETの特長「データマッピング機能」は、データレイアウトの変更や追加の際に、パラメーターを設定するだけで済み、プログラムレスな開発が実現できます。
EDIシステム刷新だけにとどまらず、2018年にはRPAを導入し、アナログ作業が発生していた受注業務プロセスを自動化。受注担当者の業務時間短縮やテレワークを可能にし、デジタル化による業務プロセス改革を実現しました。

モランボン株式会社の事例詳細はこちら→

DXのきっかけとしてRPAによる2業務の自動化

製造プラントの配管、空調、電気の各種工事を請け負う旭シンクロテック株式会社では、請求書データを会計システムに登録する業務と勤怠処理業務に対しRPAツールを導入し、自動化・効率化しています。

導入したツールはユーザックシステムの「Autoジョブ名人」「Autoメール名人」「TranSpeed」で、請求書の処理や勤怠処理の集計が自動で処理され、人的リソースが解放されました。それにより他の業務に注力でき、より効率的な業務を行えるようになっています。

請求書処理業務では1ヶ月に600~1000枚の書類を1枚あたり約10分かけて会計システムに登録していましたが、請求書をAI-OCRである「DX Suite」でデータ化し、「Autoジョブ名人」で自動的に会計システムに登録しています。

また、勤怠処理の業務では人事総務グループが毎日手作業で残業時間の集計を行っていましたが、現在は「Autoジョブ名人」で自動的に残業時間を集計し、「TranSpeed」でデータ変換後に「Autoメール名人」でメールを送付することで効率化を図っています。

旭シンクロテック株式会社の事例詳細はこちら→

RPAでDX推進するために

RPAを導入しDXを円滑に進めるには、具体的な準備や計画が必要です。以下のポイントを押さえて成功への道筋を作りましょう。

組織にとってRPA導入は、これまでの業務フローを見直すきっかけでもあります。どの業務を優先して自動化するのか、その目的とゴールを明確に定めることで、導入後の成果を評価しやすくなります。

さらに、RPAによる業務自動化によってコスト削減や時間短縮の効果をしっかり検証し、運用ルールやメンテナンス体制も確立しておくことが大切です。

目的を明確にする

RPAの導入からDXを推進するためには、解決したい課題や目的を明確にしておくことが必要になります。

労働力不足の補填、グローバル市場への挑戦、業務効率化など、課題に対してRPAをどのように活用し、DX推進のきっかけにするかを検討します。

特に、非効率なアナログ作業は、DX推進の足かせになりがちです。DXを実現していくには、データの取得・活用が大前提になります。情報や業務がデジタル化されていれば、RPAによる自動化が可能です。

また、経営陣や現場の従業員が共有できる具体的な目標があると、導入後の評価や運用改善もしやすくなります。

スモールスタートする

これまでの業務をデジタル化し、RPAで自動化するとなっても、社員の中でITリテラシーに差異があったり、「RPAに仕事を奪われる」などと身構えてしまい、プロジェクトが進まないことがあります。小さなプロジェクトから始めて成功事例を作り、社内にRPADX推進の必要性を説くなど、丁寧な進め方が望まれます。

こうした「スモールスタート」を積み重ねるうちにノウハウが蓄積され、次のステップとしてより複雑な業務プロセスにもスムーズに展開できるようになります。

導入による効果検証を行う

RPAを導入し、期待していた効果が得られているかの検証が必要です。DX推進においては、経済産業省が取りまとめた「DX推進指標」が役に立ちます。
DX推進指標」は現在の日本企業が抱えているDX化の遅れを解決するため、企業内の各部署の関係者が現状を正しく認識し、DX化に向け連携してアクションを起こすことを目的として策定されました。

DX推進指標」を使った効果測定はどの企業でも行うことができ、推進状況の確認だけでなく、DX化の方向性の確認や、現状のDX化を妨げている問題や課題を解決するために必要な考え方・方法をまとめた資料としても活用できます。

【参考】DX推進指標のご案内→

RPA導入後の運用ポイントと注意事項

RPA導入後には、システム仕様や業務フローの変更があった場合に迅速に調整できる運用体制が不可欠です。ロボットが処理するデータの入力画面が変われば、停止やエラーにつながることがあるため、定期的なメンテナンスを行いましょう。

自動化した業務内容を定期的に見直し、人の判断が必要な箇所はどこか、より自動化できる部分はないかを検討することも大切です。これにより、継続的な改善サイクルが回り、DX推進が加速します。

まとめ

DXの推進は企業が未来のビジネスシーンで勝ち抜くための重要な戦略であり、RPAはその実践を加速させる大きな武器となります。

RPA導入をきっかけとした業務効率化は、DXの初期段階で成果を見せられる好例です。小さな成功体験を積み重ねるうちに、現場のモチベーションが高まり、全社的にデジタル変革を進める土台が形成されます。

変化の激しい経営環境で勝ち残るためには、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、企業文化や顧客接点、ビジネスモデルにまで踏み込んだ変革が必要です。データやファクトに基づいた意思決定を支えるRPAとともに、DXの取り組みを発展させていきましょう。

DX推進を支えるRPAツール「Autoジョブ名人」の詳しい資料はこちら→

さらに深くDX推進やRPA活用のノウハウを学びたい方には、以下の記事もおすすめです。

DXRPAに関する事例や短期導入の方法、運用ルールなどを知ることで、自社に適したアプローチを検討しやすくなります。さまざまな成功例に触れながら、最適な導入計画を立ててみてください。

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