DXにつながるRPAの短期導入とは

コロナ禍は企業における組織課題を明るみにし、DX(デジタルトランスフォーメーション)への機運を高めた。一方でDXに関しては、「何から手を付けたらよいか分からない」といった担当者の声をよく耳にする。 このような状況の中で、短期間でのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入を成功させ、社内のDX推進につなげている企業がある。一般的に半年程度の期間が必要と考えられているRPAの導入を、迅速に実行できた背景には何があるのか。「Autoジョブ名人」で知られ、これまでに多くの企業で通常の約半分となる3~4カ月でのRPA導入を成功させてきた、ユーザックシステム株式会社の担当者らに話を聞いた。
※本記事は2021年8月にRPA BANKに掲載されたものです。

RPAによる業務自動化プロジェクトの成否は、
導入後3カ月間にかかっている


‐コロナ禍で多くの企業がDXの重要性を実感し、新たにRPA導入を検討し始めたところもあるようです。しかし本格的な導入までに時間がかかってしまい、プロジェクトが途中で頓挫してしまうことも少なくありません。これは、何が原因なのでしょうか。


矢吹政之(RPAカスタマーサクセス事業本部 執行役員):RPAは2016年に国内における普及が本格化し、「ITスキルがなくてもロボットが簡単に作れる」という触れ込みによって、その後爆発的なブームを迎えました。しかしこの間にさまざまな課題が浮き彫りになったのです。
主な課題としては、次の5点が挙げられます。

RPA導入・運用の障壁

1.ロボットの開発スキルを持つ人材の不足
2.業務の棚卸しなどの事前準備に手間がかかる
3.導入効果算出の難しさ
4.ツール選定の難しさ
5.RPAに対する社内の理解が得られない

RPAの導入を考える企業の多くは、プロジェクトを進める過程でこういったさまざまな課題に直面します。その結果、早期に成果を出すことができず、プロジェクトが頓挫してしまうのです。


‐課題を克服してRPA導入を成功させるためには、どうしたらよいのでしょうか。


矢吹:RPA導入を成功させるためには、導入後の早い段階で成果を上げ、上層部に納得してもらう必要があります。最近のライセンスは年間契約のサブスクリプション型が多く、1年の間にある程度の投資対効果を出せなければ、そのプロジェクトは失敗と見なされてしまうのです。

私たちカスタマーサクセス事業部は、RPA導入後3カ月間に何をしてどのような成果を上げるかが重要だと考えています。お客様に対しても、この3カ月の間にある程度の成果を出し、その成果を社内で提示することを勧めています。

Autoジョブ名人とカスタマーサクセスプランで
RPAの短期導入が可能に


‐貴社のサポートにより、短期間でのRPA導入を実現させた事例をご紹介ください。


矢吹:短期間でのRPA導入を実現させた事例として思い浮かぶのは、弊社がRPAの導入から運用までをサポートさせていただいている、旭シンクロテック株式会社様です。旭シンクロテック様は、弊社のRPAツール「Autoジョブ名人」導入後の3カ月間に2体のロボットを開発し、このロボットによってそれまで担当者に大きな負荷がかかっていた2つの業務を自動化し、大幅な時間削減を実現しました。こうした誰の目にも明らかな効果を上げることにより、それまでRPAに懐疑的だった役員が「RPAによる業務の自動化には投資をする価値がある」と考えるようになりました。


大島有紀子(RPAカスタマーサクセス事業本部カスタマーサクセスプランナー):私は専属CSP(カスタマーサクセスプランナー)として、旭シンクロテック様のRPA開発や運用に関するお困りごとをサポートしています。サポートを通じて、担当の方から「質問の回答が早かったため、開発を早く完了することができた」という感想をいただきました。担当の方は、以前は別のRPAツールを利用されており、その時は質問の回答が3日後だったり、回答に至るまで何往復もやり取りを行う必要があり、開発に時間がかかっていたそうです。


弊社の場合ですと、原則として翌営業日までに質問の回答を行うことになっているほか、担当者が不在であれば別の者が代理サポートを実施しています。また、回答する際に解決策にプラスアルファの情報を付け足すなどの工夫をしています。例えば、一度に10件ほどの質問をいただいたときは、Excelの表にし、関連する内容ごとにまとめて回答しています。その表には参考となる弊社FAQページの情報や解説動画なども併せて記載しています。RPAのエラー原因と解決策は共通事項が多いため、「今後も使い続けられる知識」として身に付けていただけるよう、コミュニケーションを図っています。実際、お客様自身で解決できることが増え、質問いただく内容も少しずつ難易度が上がってきていますが、私にとっては大変嬉しいことです。

‐専属のカスタマーサクセスプランナーが質問に対する回答をすぐに返してくれることは、クライアントにとって心強いですね。サービスについて詳しく教えていただけますか。


大島:弊社のAutoジョブ名人のライセンスには、電話やメール、オンラインによるサポートが標準で付属しているのですが、オプションとして「カスタマーサクセスプラン」というサービスを選択していただけるようになっています。こちらのプランは、専属CSPがRPA導入プロジェクトの進捗管理からRPAの開発・運用までの一連を支援するサービスです。

カスタマーサクセスプランでは、まず目標の設定を行います。それから開発進捗状況のキャッチアップやフォローとともに活用提案を行い、開発や稼働・運用の支援も継続して行っていきます。サクセスメニューには開発教育として基本的なカリキュラムと、開発スキルアップ講座という応用編の動画が用意されています。また、年間を通して利用できるeラーニングのほか、自動化したい業務を選定いただき、お客様と一緒にシナリオ作成をする「モデル業務の自動化支援」や、定着のためのコンサルティングなども用意しており、お客様の状況に合わせてプランを選択していただくことが可能です。

 


‐非常に充実したサービスですね。このサービスは、特にどういった課題を抱えている企業にとって有益だと思われますか。


大島:カスタマーサクセスプランは、自動化したい業務がはっきりしているお客様はもちろん、自動化したい業務があまり明確ではなく、自動化する方法に迷われているお客様にぜひご利用いただきたいサービスです。専属のCSPは、事前に想定した自動化対象業務だけでなく、似た処理のある別業務や対象業務に関連する前後処理などについても、自動化するためのアドバイスを実施しています。そのため業務自動化の範囲を広げることができ、早期に大きな効果を実感していただくことができます。

また、DXを視野に入れてRPAによる業務の自動化を検討しているお客様にも、対象業務の自動化にとどまらない、その先につながる推進方法のご提案をしています。カスタマーサクセスプランをご利用いただくことで、早期に目的を実現していただけると考えています。

RPAによる業務自動化プロジェクトの成功が、
本来の意味でのDX推進につながる


‐カスタマーサクセスプランはその名の通り、クライアントの成功・成長をアシストするサービスですね。ツールベンダーがここまでしてくれることは、珍しいのではないでしょうか。


矢吹:ツールベンダーが直接お客様をサポートすることには賛否両論があると思うのですが、私たちはこれまで何の疑いもなくサポートを行ってきました。お客様のお悩みや相談事は、どうしても私たちが解決したいのです。おせっかいかもしれませんが、この点は今後も変わることはありません。


その一方で、現状のままではリソース的にも限界があることから、パートナー企業にお客様をサポートしていただくのが望ましいとも考えています。そこでカスタマーサクセスプランのコンセプトに賛同していただいている多くのパートナー企業に向けて、私たちと同じレベルでお客様に業務改善の成功を提供できるよう、勉強会を定期的に実施しています。


‐コロナ禍を契機に、DXを推進したいと考える企業が増えています。そういった企業にとって、RPAで業務を自動化することはどのような意味がありますか。


矢吹:昨今、RPAを導入すればその企業のDXが成し遂げられたとする風潮があると思っています。しかし実際はそうではありません。DXにはいくつかの段階があり、アナログデータをデジタル化する「デジタイゼーション」から始まり、その後RPAによる業務の自動化などの「デジタライゼーション」の段階を踏んで、最終的に本来の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」にたどり着きます。

RPAの導入は、DXを成し遂げるための一つの手段でしかありませんが、DXという目的を達成するためには無視することができない重要な過程です。社内におけるDX推進を成功させるためにはまずRPAによる業務自動化プロジェクトを成功させ、その後本来のDXにつなげていくのが望ましいのではないでしょうか。弊社の製品やサービスをご利用いただき、DX成功の鍵となるRPA導入を成功させていただきたいです。弊社としてもそういったお客様を全力で支援していきます。


【後編を読む】Autoジョブ名人が業務改善を成功に導く理由

一覧に戻る