通関依頼書の入力処理をAI-OCRとRPAで自動化

ソリューション RPA 製品名 Autoジョブ名人 業種 倉庫・物流

事例(PDF)

通関業務に対応する3PL業者

東洋運輸倉庫は、東京都港区西新橋に本社をおき、江東区若洲、及び、神奈川県川崎市に倉庫を持つ、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)業者だ。「他社倉庫がやらないことをやる」精神を基軸に、仕分け、物流加工といった顧客要望に早くから対応し、最適な物流サービスを提供、荷主企業の信頼も厚い。取扱品は、衣料品、スポーツ用品、靴、雑貨、家具、食品、家電製品等多岐にわたり、近年ではキャンプ用品の扱いも増えている。

さらに同社には、輸出入のプロフェッショナルという、通関業者の側面がある。例えば、輸入業務の場合、国内に入った貨物の受け取りから、適正倉庫での保管、輸入申告、輸入許可後の配送までにも対応が可能だ。迅速な輸入の実現、手配工数の削減、を提供できることは同社の大きなアドバンテージと言える。

加えて2021年1月、SBSホールディングス株式会社の連結子会社となることで、海外からの発送・輸送も同社の対応範囲となり、荷主企業の顧客満足をさらに高める体制を整えている。

通関業務のオペレーションをAI-OCRとRPAで改善

通関業務の受託を強みとする同社だが、荷主企業とのやり取りには、まだまだ紙やPDFを利用した業務領域が残っており、入力作業の負荷やミスの発生などに課題を感じていた。

例えば、荷主から送付される通関依頼書。この通関依頼書に基づき、同社は国内に入った荷物の引き取りを受託している。これまでは、メールに添付された通関依頼書のPDFや、FAXで届いた通関依頼書をPDF化した後、社内システム(請求管理)へ手作業で入力していた。業務量は月に平均800件程あり、該当業務を遂行していた営業部より、入力負荷が高いため本来業務である営業業務の時間が取れない、という相談を受けていた。

そこで、今回同社が導入したのは通関依頼書のPDFをAI-OCRに読み込ませ、データチェック・修正・CSVデータ作成を行い、作成されたCSVをRPAが自社システムに入力し、入力結果の印刷まで行うというもの。

同社の情報システム室は、かねてよりユーザックシステムからRPAの紹介を受けていたが、導入にはいたっていなかった。しかし、国内でのRPA普及に伴う経営陣からの検討指示、社内からの具体的な改善相談、ユーザックシステムから再度の事例紹介など様々なタイミングが重なり具体的な検討が始まった。特に本格検討の契機となったのはAI-OCRの登場であったという。では、どのようなポイントで検討を進めたのだろうか。

AI-OCRを見極める

紙・PDFを起点とする業務の改善においては、精度の高いOCRが不可欠であった。情報システム室でも、過去にOCRを検討していたが、その当時は業務に耐えられるレベルではなかったという。

状況を変えたのは近年登場したAI-OCRである。継続学習による読取精度の向上、幅広い用紙フォームの判別を可能とし、従来型のOCRに比べ、文字認識率を大幅に向上させた新技術だ。

最新AI-OCRの「見極め」が必要と判断した情報システム室は、実際に3社、AI-OCR製品・サービスの比較検討を行った。結果、多少の修正作業は発生する可能性はあるものの、AI-OCRであれば十分実用に耐えられるとの判断に至った。また、併せて社内への業務ヒアリングを実施し、メールに添付されるPDFだけでなく、FAXで受け取る依頼書もあるが、その場合でも「活字印刷」されたものがほとんどで「手書き」はないため、AI-OCRで問題無く読み取れることが判明した。これで、最初のターゲットに出来そうな、用紙フォーマットが統一運用されている取引先(荷主A社)も選定できた。社内も「見極め」ながら、AI-OCRの比較検討を推進したのである。

AI-OCR選定のポイントは3つ

比較検討の結果、同社が導入したのはネットスマイル株式会社の「AIスキャンロボ」だ。ユーザックシステムが提供するRPA「Autoジョブ名人」と併せて提案を受け、導入となった。AI-OCR選定のポイントは3つある。

1つ目は、基本機能の充実と設定の簡単さ、運用のしやすさ。用紙毎の読取設定をマウスで簡単に作成でき、想定外のエラーが発生した際の対応がしやすいといった利便性に加え、現場が使いやすいことも考慮した。

2つ目は使いこなせるかどうか。検討製品の中には、仕様の細部が不明瞭であったり、契約するまで仕様を開示しないとするベンダーもあった。これについては、導入前に使いこなせる確信が持ていない製品は検討外としたという。

大きな決め手となった3つ目はRPA製品との連携。「Autoジョブ名人」と併せた提案により、ユーザックシステムから使い分けの具体的な説明を受けられた。細かい質問に対しても「AI-OCRでできないこの部分は、RPAでカバーできますよ」とAI-OCRとRPAの切り分けについて、的確なアドバイスを得られた点が大きかった。

通関依頼書の入力業務をRPA化

「Autoジョブ名人」と「AIスキャンロボ」の操作指導を受講し、活用体制を整えた同社は、荷主A社からの通関依頼書(40件/月程)について、2020年11月よりRPA化を始めている。現在までに「AIスキャンロボ」で設定、読取りしているのは3帳票、今後も量が多い荷主企業で、かつOCR対応ができる依頼書を見極め、対応する荷主の数を増やしていく計画だ。

また、「Autoジョブ名人」が自社システムへ入力する際に、エラーが発生することもある。エラー通知を受けた担当者は入力データを確認し、修正後にRPAを再実行する、という運用になっており、オペレーションで柔軟に対応できるようにしている。

現状はOCRによるPDF読み取り・修正作業からシステム入力データ作成、RPA連携までを対象業務としているが、人間の作業を少しずつ減らし、全作業を一気通貫で自動化することが目標だ。また、データがフォルダにあるかの確認、Webへのアップロード、結果のキャプチャなど、RPAの使い方の多様性にも期待が膨らんでいる。

さらに改善範囲を広げたい ―RPAの可能性―

「 3PL・通関業務をはじめ、高いサービス力を維持しながら業務範囲の拡充を目指す当社としては、RPAには大きな可能性を感じている」
(佐々木様:中央)

今回は、事務所内のオペレーションをRPAとAI-OCRを用いて改善したが、倉庫業務でのRPA導入も計画している。倉庫作業には、メール受信によって作業を開始したり、メール送信によって報告する業務が多く存在するため、「Autoメール名人」の活躍が期待できる。「Autoジョブ名人」の対応範囲、AI-OCRとの組み合わせ、対象業務、運用オペレーション、それぞれを「見極め」て検討を進める計画だ。

同社、情報システム室 室長 佐々木氏は語る。「今後は、これまで人間がおこなってきた業務を機械に任せる。その一方、人間には何をさせるかを考える時代です。人が雇いにくくなっている現状があるが、RPAは文句も言わずに働いてくれる。また速度面でも、人は同じスピードでずっと作業を続けることはできないため、この点でもRPAの優位性を感じている。3PL・通関業務をはじめ、高いサービス力を維持しながら業務範囲の拡充を目指す当社としては、RPAには大きな可能性を感じている」

RPAとAI-OCRを活用した同社の取り組みは大いに参考になる。今後の改善の進め方に注目したい。

企業プロフィール
会社名 東洋運輸倉庫株式会社
本社 〒105-0003 東京都港区西新橋1丁目22番10号
設立 1960年4月18日
資本金 1億91百万円
Webサイト https://www.toyo-wh.co.jp/