築城400周年を迎え、イベントが目白押しの『明石城』
期間限定ではなく魅力を発信し続ける持続型イベントとは

ソリューション モバイル 製品名 自治体向け観光促進ソリューション
業種 その他 規模 --
国指定の重要文化財「坤櫓(ひつじさるやぐら)」
国指定の重要文化財「坤櫓(ひつじさるやぐら)」

ARアプリ導入空前の「城ブーム」が続く昨今、全国各地の城跡来場者数は、常に1割近いペースで増加が続いています。

兵庫県には1,000を超える城跡があり、世界文化遺産の姫路城や「天空の城」として人気の竹田城など多彩な城が多く、国指定史跡は22か所にのぼり全国最多を誇っています。

なかでも今注目を浴びる城が、日本城郭協会による「日本100名城」にも選ばれている明石城です。2019年3月から11月まで、築城400周年を記念したロングラン・イベントが繰り広げられおり、多くの来場者で賑わっています。

城内では各所でスマホの画面を風景にかざしながら歓声を上げる人が目につきます。イベントを記念して、兵庫県公園緑地課が導入・運営するAR(拡張現実)アプリ「明石城再現・城巡りアプリ“明石城巡り”」を楽しむ来場者の姿です。

 

時を超え、明石城を再現し広く全国の人にも

明石城のある明石市は兵庫県南部の明石海峡に面する都市。東経135度の子午線が通る日本標準時の町として知られています。2019年11月に市制施行100周年を迎える同市は、「時のまち」であるとともに「城のまち」でもあります。

明石城は、1619年に徳川幕府の命で、小笠原忠政(のちの忠真)により築かれました。時は太平の世、天守閣こそ建てられませんでしたが、姫路城と並ぶ規模を誇ります。長さ380m、高さ20m超の石垣の上には2棟の勇壮な三重櫓(やぐら)が現存し、それらの姿はJR明石駅のプラットホームからもパノラミックに眺めることができます。

また、本丸の西に位置する野球場や陸上競技場がある場所には、その昔、藩主が生活していた居屋敷郭御殿や宮本武蔵が造ったとされる樹木屋敷という藩主の遊興所があり、本丸の4隅にはそれぞれ三重櫓がそびえていたとのことです。

兵庫県公園緑地課 班長 井村 浩之さん
兵庫県公園緑地課 班長 井村 浩之さん
兵庫県公園緑地課 主査 金原 淳一さん
兵庫県公園緑地課 主査 金原 淳一さん

 

明石城をCGで蘇らせたい

「この明石城をCGで蘇らせ、往時の姿を全国の人に広く楽しんでもらえないものだろうか。」と、県公園緑地課では常々思っていました。

そして2016年、兵庫県と明石市を中心として、観光協会や新聞社、鉄道会社など各方面による「明石城築城400周年記念事業実行委員会」が組織され、CG制作の機運は醸成されていきました。

「往時の城の様子を3DCGで再現してインターネットで公開してはどうか」「さらにスマホアプリとして、現地で連動して体験しながら楽しんでもらえる仕組みを加えては」など、県公園緑地課と実行委員会では2017年から構想を練り始め、翌年予算化が実現しました。

そうしたなか、明石城全体の3DCG化とともに、現在の景色と当時の様子を再現したCGを重ね合わせて撮影するAR機能や、城内をゲーム感覚で楽しく学びながら探索するナビガイド機能も仕様に加えられました。

 

2018年7月、企画提案コンペを実施、ユーザックシステムを含む3社が提案

「コンペで当選したユーザックシステムには、城郭研究家の本岡さんがおられました。本岡さんとの出会いは、2018年5月にスタートしたプレ・イベント『駅前市民講座』の初回講師として来ていただいた時です。

本岡さんの存在は「城郭研究家」として新聞や各種メディアにも紹介されるなど以前から知っていましたが、会うのはこの時が初めてでした。ユーザックシステムで城郭CGディレクターを務められていることや、奈良県・高取城ARアプリの先例も知りました。

その本岡さんに監修まで任せることができ、時代考証に裏打ちされた精度の高い提案やコンテンツのクオリティ、県・市の教育委員会や各方面の専門家との調整やアドバイスのとりまとめ等、オーソライズするために精力的に動いていただきました。」と、振り返ります。

明石城築城400周年記念事業(2019年)の一環として製作された 「明石城巡り」のパンフレット。アプリの楽しみ方が詳しく紹介され ています。
明石城築城400周年記念事業(2019年)の一環として製作された
「明石城巡り」のパンフレット。アプリの楽しみ方が詳しく紹介され
ています。
「日本の城 改訂版」第138号(株式会社デアゴスティーニ・ジャパン発行、 2019年9月3日発売)に「ARで歩く明石城」が掲載されました。
「日本の城 改訂版」第138号(株式会社デアゴスティーニ・ジャパン
発行、 2019年9月3日発売)に「ARで歩く明石城」が掲載されました。

 

アプリ「明石城巡り」をイベントに合わせ公開

明石城を3DCGで再現し、城巡りの仕掛けを組み込んだスマホ用ARアプリは、「明石城巡り」として2019年3月23日から始まった「明石城築城400周年記念事業」イベントのスタートに合わせて公開されました。

メインコンテンツの一つ「3DCG明石城」は、広大な明石公園全体に、当時の城の姿を再現しています。1644年に描かれた「播磨国明石城絵図」を基に、堀や石垣などの細部にいたるまで正確に再現されており、さらに屋敷や庭の配置などを再現した城の規模や雰囲気も一目瞭然でわかります。CG画像は指操作で自由に回転や拡大ができ、ダウンロードすれば全国どこにいてもいつでも閲覧することが可能です。

もう一つのコンテンツは、現地に足を運んで城巡りを楽しんでもらおうとの趣旨で企画された体験型ARアプリ。「明石公園で遊ぶ」コンテンツでは、スマホ端末の位置情報と連動し、マップに表示された各スポットを学び楽しみながら巡っていくというもの。

城内10か所の「ARスポット」でスマホをかざすと、現在の景色に重ねて往時の様子が再現CGで現れ、写真で残すこともできます。

また、「謎スポット」では、クイズ形式の謎解きをしながら明石城の全貌を知ることができ、回答数に応じて明石城ゆかりの3Dキャラクターが登場し、ツーショット撮影も可能です。「明石城では元々誘導・案内サインの設備が充分ではなく、『国史跡』である関係上簡単に看板を設置することもできません。かといって総合的なサイン計画には、グランドデザインからの視点や景観との整合性追求のためのコストや時間が必要です。このアプリが城内の施設表示やガイド機能を少しでも補完してくれれば。」と、金原主査は期待します。

 

4割増しの来場者数、課題も

ARアプリ「明石城巡り」のダウンロード数は、リリース後1か月で千数百を記録し、好調な滑り出しを見せています。

 

現地でイベント運営に当たる事務局の井村浩之班長は、「明石城ではイベントを前に、2棟の三重櫓と土塀や石垣の綺麗な姿が見渡せるように、公園内の樹木の除伐・剪定や櫓と土塀の漆喰の補修などを行い、多くの来場者を迎える準備を終えました。

 

結果、ゴールデン・ウィークの長期休暇や当アプリとの相乗効果もあってか、イベント期間中の明石公園来場者数は、昨年同時期比4割増で推移しています。手前味噌になりますが、実物のお城と往時の姿の双方が時を同じくして素晴らしいコンテンツとして蘇ったといえます。全国の人がこれをきっかけに興味を持ってもらって、ぜひ現地にも足を運んでいただきたい。」とのことです。

 

一方、現場では課題も見えてきた。
「アプリ内に使い方をわかりやすく説明したページがあるのですが、現地を管理している兵庫県園芸・公園協会明石公園サービスセンターの窓口にその使い方を尋ねてこられる人が多いのです。窓口のスタッフはアプリの開発や運用に直接携わってはおらず、詳しい案内が困難なことから、今後はスムーズかつシームレスに案内サービスができるように現場との連携を図っていきたい。」と、井村班長。

明石城を印象づけている2棟の櫓、坤櫓(ひつじさるやぐら、向かって左)と巽櫓(たつみやぐら、向かって右)を三の丸から望む。 両櫓は、日本に12基しか現存していない貴重な三重櫓となっている。
明石城を印象づけている2棟の櫓、坤櫓(ひつじさるやぐら、向かって左)と巽櫓(たつみやぐら、向かって右)を三の丸から望む。 両櫓は、日本に
12基しか現存していない貴重な三重櫓となっている。
公園内のARスポットでスマホをかざす親子連れ (親子サマースクール2019にて)。
公園内のARスポットでスマホをかざす親子連れ
(親子サマースクール2019にて)。
1644年に描かれたとされる「播磨国明石城絵図」。 「3DCG明石城」を製作する基となった。
1644年に描かれたとされる「播磨国明石城絵図」。
「3DCG明石城」を製作する基となった。

 

今後の展開とARアプリの可能性

今後の展開として、金原主査は、「アプリの運用を開始したこれからが本当のスタートだともいえます。まずはアクセス/ダウンロード数を増やしていくことに注力していきたい。また、さまざまな活動やフィールドとの相乗的な取り組みや展開も検討していければと思っています。 イベント面では、当アプリを使った城内ツアーや、観光面では、観光協会と連携して市内の名所スポット巡りやお店のクーポンのダウンロード機能を付加できたら利便性がさらに高まるでしょう。」

史跡はもとより、地域全体のポテンシャルを引き出せる有効なソリューション、ARアプリに今注目が集まっている。

 

アプリ開発者より

スマホの位置情報を活用したARアプリは、某キャラクターゲームの例を見るまでもなく、老若男女を問わず利用され浸透してきました。期間や地域限定のイベントとは異なり、継続的に地域の資産や魅力を全国に発信し誘引に繋げる体験型のARアプリは、自治体にとってこれからのプロモーションツールとして活用の機会が増えていくものと考えられます。ぜひ、お気軽にご相談ください。
ユーザックシステム株式会社 本岡 勇一 meijin@usknet.co.jp
(2019年3月取材)