一般社団法人淡路島観光協会 様

淡路島の知られざる魅力が満載!
古き良き淡路島を本物の体験と再現CGで地域活性化に貢献
~一般社団法人淡路島観光協会様~

ソリューション:
  • 特化
対象製品:
  • 自治体向け観光促進ソリューション
業種:
  • その他

事例(PDF)

Introduction

淡路島今昔物語~ARで再現~
トップ画面

淡路島は、古事記の神話に登場する日本の「はじまりの島」です。また線香や淡路瓦といった伝統産業や豊かな自然、500年以上の歴史を持つ淡路人形浄瑠璃など多様な魅力を持った島です。

近年、インバウンド需要の高まりに対応することも視野に入れ、古来独自の文化を築いてきた淡路島の魅力を発信する手段の1つとして、ARアプリ「淡路島今昔物語」で、実際に淡路島ならではの本物体験をしたり、洲本城をはじめとした現在では往時の様子が見られない景色をAR技術で再現したり、国内外の方に広く利用いただけるアプリを作成しました。

今回は、一般社団法人淡路島観光協会の高木様と地白様に「淡路島今昔物語」を制作したきっかけ、アプリ完成に至るまでの経緯、補助金活用の工夫、今後の淡路島の観光業についてうかがいました。

一般社団法人 淡路島観光協会様の役割について

ー一般社団法人 淡路島観光協会様についてお聞かせください。

一般社団法人淡路島観光協会は、DMO(観光地域づくり法人)として登録・認定された観光協会です。 一般的な観光協会は、会員である事業者が不利益にならないように、均一な扱いをすることを前提に、観光地の誘致やプロモーションを行ってきましたが、財源を行政の補助金に頼り、結果として意思決定は地元自治体に依存する体質で、稼ぎ続ける観光地域づくりをリードするポジションにはなり得ていませんでした。

一般社団法人淡路島観光協会
チーフマーケティングオフィサー 高木 俊光 氏

これに対しDMOは登録認定が必要であり、顧客目線でその地域ならではの価値を見定め、新たな観光価値を創造するのが使命です。従来の観光協会が地域内のスポットを均一に紹介するイメージがあるのに対し、DMOは顧客目線でその地域ならではの魅力を更に磨き上げ、その価値あるコンテンツを重点的にアピールすることが必要です。

元々、淡路島にはかつて3つの観光協会がありましたが、平成22年に統一され、その後DMOの登録認定を得て活動する島内3市で1つの淡路島観光協会になりました。

本来、DMOの主な活動は自ら事業計画を立て収益を生み出し、お客さんを呼んでくるものです。ただ、現状はまだ自主財源を十分に持てていないため、主に県と市の財源で活動しているので、今後、本格的なDMOとして活動していけるようにしている段階です。

観光客の滞在日数増加やインバウンド強化対策として「淡路島今昔物語」制作を開始

一般社団法人淡路島観光協会 観光戦略室 室長
地白 雅則 氏

ー一「淡路島今昔物語」を制作しようと思われた背景や課題についてお聞かせください。

アプリをつくろうと思ったきっかけは、今では往時の姿を見ることができなくなってしまった洲本城をはじめとした淡路の魅力を、AR技術を用いることで観光客の方にタイムスリップしたかのように知ってもらいたいということです。

現在の淡路島観光の課題としては、新しい施設には多くの観光客が訪れており、特に若年層を中心に、淡路島がドライブコースになっています。ただ、今お話したような古くからある観光資源には、往時の建物や雰囲気があまり残っていないこともあり、どうしても人が集まりません。

淡路島は古事記のくにうみ神話に登場する「はじまりの島」と記載されているように、歴史あるものが数多く存在しています。それが私たちにとって誇りの1つなのですが、現状、新しい施設に行かれる観光客は、滞在して淡路島の歴史ある観光地を巡るといった行動はされていません。

淡路島が観光スポットとして注目されている今だからこそ、淡路島の自然、歴史、文化、習慣をもっと楽しんでいただき、長く滞在してもらえるようにするのが我々の大きな課題であり、「淡路島今昔物語」に寄せる期待もそこにあります。

5か国語対応にすることでインバウンド需要の取り込みにも注力

アプリのトップ画面。
言語切替も簡単

ーーアプリの完成に至るまでの過程を時系列でお聞かせください。
またなぜ、アプリを5か国語にしたのかもおうかがいできますでしょうか。

アプリ「淡路島今昔物語」制作は、2023年の春先頃から検討を始めました。この取り組みは、特に最大の温泉地である洲本温泉から至近距離の洲本城が最も歴史的に価値のある観光資源での一つであるにも関わらず、訪問される観光客が少ないことが大きな課題となっていました。現存する姿だけでは魅力が伝わりにくいことから、AR技術を活用して当時の姿を再現できないかという着想からスタートしています。

丁度、私たちの観光協会長が御社の城郭研究家の方と講演会で知り合いになり、洲本城の当時の姿をARで再現したいと相談したことも大きなきっかけです。
検討にあたっては、他の地域でARによる再現を行っている事例を参考に、ビジネスとして展開している方々に話を聞くなど、調査を進めました。

この新しい取り組みを進める上で、大きな課題となったのが予算の確保でした。一般的な観光協会とは異なり、DMOは自らが資金を集めるのが基本です。ただ、この時点では新たな事業のための予算が十分ではありません。そこで、中央省庁の補助金に頼ることにしました。補助金申請にあたっては、専門家のサポートを受けながら準備を進めました。

そして、2024年度観光庁の補助事業の2次に申請し、採択され総事業費800万円のうち600万円が補助金で、残りの200万円を自己負担として捻出することで、アプリ制作の実現に向けて大きく動き出すことになったのです。

アプリを5か国語に対応させたのは、リピーターの多い中国、韓国、香港のほか、欧米豪からも多くの観光客が訪れて欲しいと思ったからです。

観光は以前なら自分たちの暮らす国とは大きく異なる非日常の景観を見て楽しむ方がほとんどでした。しかし最近では、暫く滞在してそれぞれの国、地方でそこに住む人々と暮らすように過ごすことを主として訪れる方が増えています。特に欧米から来る方については、その傾向が観著です。

それを受け、観光向けのイベントや施設だけではなく、その地域ならではの産業や伝統、歴史などについて体験を通して地元の人と触れ合うことができるように5か国語対応しています。

「本物体験」により「暮らすように過ごす」をテーマに新しい観光体験を提案

ーーアプリ製作のために、補助金を活用されたとうかがいました。工夫されたところがございましたらお聞かせください。

補助金がおりた800万円をどう使えば淡路島の活性化に繋がるかについては、かなり悩みましたし、工夫しましたね。

地元民としては、淡路島の一大温泉地である洲本温泉に宿泊される方が、旅館でゆっくり過ごされ、洲本城に寄らずに帰られてしまう現状を何とかしたいと考えていました。旅館としては、施設でゆっくり過ごされることはとてもありがたいことですが、リピーターになっていただくためにも歩いていける距離にある洲本城にはぜひ訪れていただきたいです。

ただ、現存の状態ではなかなか伝わりにくいということで、まずは洲本城に訪れるきっかけづくりとして、AR技術で洲本城を再現してはどうかということから企画は始まっています。

再現したい候補は他にも30近くありましたが、松帆銅鐸、そして線香のシェア日本一の港町の江井の町並みの3つに絞ってAR技術を用いて再現することにしました。
また、30本の「本物体験」をアプリの中に組み込んだのですが、何をツアーに入れるかについてもかなり悩みました。本当はもっとたくさんあるのですが、予算内ですべてを選択することはできなかったため絞り込むのも大変でしたね。

ーー「本物体験」についておうかがいします。ツアーの実現までに苦労をされたことはございますか?また、客層や反応、人気のあるツアーについても教えて頂けますでしょうか?

繰り返しになりますが、新しい施設には若い方を中心に観光客が訪れています。淡路島がドライブコースになっていてそれはとてもありがたいことです。しかし滞在が短期間、しかも日帰りや島外で宿泊される方も多いのが現状です。また、洲本城や松帆銅鐸など歴史ある観光資源は素通りされてしまっており、淡路島の本来の魅力の1つが見過ごされています。

そこで、観光協会が企画したのは、一般観光客向けのよくあるツアーではなく、本物の漁師や生産者と触れ合って体験するのが「本物体験」です。そのため当初は、繁忙期には対応できない、うまく話せないので無理だ、といったお声も生産者から受けました。そこをひとりひとり丁寧に説明して、納得して参画してもらうまではかなり苦労しましたね。

ただ、実際にやってみたら自分たちでは当たり前と思っていた日常にも興味を示し感動してくれる観光客が増えたことで、ツアーを主催するモチベーションがかなり上がったという話を生産者の方々から聞くことができるようになりました。
「本物体験」のポイントは、今あるものを活かすことを中心に考えた点です。新たな施設に人を呼ぶのではなく、昔から行ってきたことや、古くからある場所を訪れ、そこにいる人々と触れ合うことで淡路島を好きになってもらい、また行きたいと思ってもらえるようにすることです。

特に注目しているのは欧米豪からの観光客の方ですね。海外から来られる方はこれまでのような観光とは異なる行動を取るようになっています。先程言ったように観光のためにつくられた施設より、なんでもない日常の世界に興味を持ち、現地に溶け込むのが主流になりつつあります。
「本物体験」は<暮らすように過ごす>をメインテーマにしているため、海外からの観光客のニーズにも合っているのではと思っています。
30本あるツアーの中で一番人気は「海ホタル」ですね。現状は日本人が多いものの、香港や台湾から予約してくる客も増えています。淡路島観光協会のSNSを通じて知っていただき、リピーターが増えています。

線香作りに外国からの観光客もチャレンジ
高級魚が採れる由良漁協で仲買人の迫力の競り(セリ)が見学できる

アプリの目玉である3つの再現CG

ーー再現CGが3つあるとうかがっています。制作にこだわられたポイントがあれば教えてください。

特にこだわっているのは、現地でスマホをかざせばお城や街並みが再現されるという点です。洲本温泉に泊まる宿泊者の方々に、洲本城を一度見てほしい、また訪れてほしいという思いから、さまざまな資料を参考に昔の姿の再現を実現させました。

再現CG画面
洲本城の3D地形図と
2箇所の現地特典CG

今後、30箇所全体のAR化に向け、さらなる進化を目指す

ーー「淡路島今昔物語」がリリースされて、今のご評価はいかがですか?

「淡路島今昔物語」がリリースされた時点での評価は、「スタートラインに立った」という感覚です。まだできたばかりであり、これからアプリのクオリティ向上やAR化箇所の増加といった改善・展開を進めていく段階だと考えています。

ーー今後地域活性化のためにアプリのバージョンアップ計画などの構想がございましたら、教えていただけますか。

淡路島観光協会はDMOとして「今は来ていないお客様を呼んでくる」ことを目指しています。アプリを通じて観光客を呼び込み、地域の魅力を伝えることで、地域活性化に繋げていきたいと思っています。
アプリのバージョンアップ計画としては、ARのクオリティをさらにグレードアップしていくことに注力していきたいです。

また、今後、映像化したい箇所が約30ある中で、現在3箇所しか実現できていないため、他の箇所のAR化を進めていくことも早期に実現したいです。観光客の方に長期滞在をしてもらいたいので残り30箇所も積極的に進めていきたいと考えています。
淡路島が観光スポットとして注目されている今だからこそ、淡路島の歴史をもっと楽しんでいただき、長く滞在してもらえるようにするのが大きな課題であり、「淡路島今昔物語」に寄せる期待も大きなものとなっています。

ーー本日はお忙しいところ取材をお受け頂きありがとうございました。

【淡路島今昔物語~ARで再現~】開発者の声

「淡路島今昔物語」の第一弾として、洲本城・江井の町並み・松帆銅鐸の3つをCGで再現いたしました。特に洲本城は多くの方が一度は訪れられた観光スポットではないかと思います。しかしなんとなく本丸まであがって、景色を見下ろして帰られることが多いのではないでしょうか。そんな方には一度はじっくりと3DCGを見ていただいて、現在の状況との違いや時代の変遷について思いを馳せていただければと思います。また松帆銅鐸においても現物では感じることのできない表面に刻まれた模様をくっきりと観察していただけるようにいたしました。制作当時は金ぴかな外観を誇っていた松帆銅鐸の長い歴史についても改めて感じとっていただけますと幸いです。今後も歴史豊かな淡路島の今昔物語を少しずつご紹介していきたいです。

※2025年3月取材。記載の情報は取材時のものです。

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