スペシャルインタビュー 2012年末に完全移行 イオングループにおける流通BMSの取り組み
イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤 清氏
イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤 清氏
流通業界における新しいEDIビジネスメッセージ標準である「流通BMS」は、2006年の共同実証以来、スーパー、チェーンストア業界等の小売業を中心に、確実にその導入が進みつつあります。今回は、特別企画として、早期から流通BMSに取り組んできたイオングループのITを担当するイオンアイビス株式会社 システム開発本部の北澤 清氏より、流通BMSの基礎知識、導入による製・配・販共通のメリット、さらには、2012年の12月末をリミットとしたイオングループにおける完全移行へのお取り組みについてお話をおうかがいしました。

―――流通BMSについて、あまり馴染みのない方も多いと思います。まずは、 JCA手順をはじめ、従来のEDIから切り替えられる背景をご解説いただけますでしょうか
北澤:
電話回線を用いたこれまでのJCA手順の通信速度は2400bps/9600bpsです。ブロードバンド環境が整備された現在の感覚ではあまりにも遅過ぎ、大量のデータをやり取りすると、発注だけで1、2時間もかかります。また、画像データはもちろん、漢字も送信できない欠点が指摘されています。
しかも、通信には専用のモデムや通信ボードが必要です。これらのハードウェアを用意するには、もちろんコストがかかりますが、機器が壊れた場合、現在はその入手が困難となり、保守コストが膨大なものとなってしまいます。また、データ長が256Bに固定されているため、新しく項目を追加しようにも拡張ができない点など、様々な欠点が目立ってきました。
インターネットが普及した今日、このインフラをEDIに利用しない手はありません。これが、流通BMSへの展開とつながるのです。
―――インターネットの活用という点では、既にWebEDIがありますが、これとはどう違うのですか
北澤:
たしかに、WebEDIにより通信速度は飛躍的に向上しました。ですが、この方式は、手動操作による入力やファイル転送を必要とするため、EDI本来の目的である自動処理はできません。操作上の手間やタイムラグの発生により、かえって業務の効率が損なわれてしまうケースも見受けられます。
流通BMSにおいて、何よりも特長的な点は、GMSや食品スーパー、チェーンドラッグストア、ホームセンター等の小売業全体で共通利用できることを目的に作られたEDIであることです。
基本形の「Ver.1.0」では、特に使用頻度が高い「発注」「出荷」「受領」「返品」「請求」「支払」の6業務のメッセージフォーマットを用意し、そして、「出荷」に関しては「伝票」「梱包紐付けあり」「梱包紐付けなし」の3メッセージに細分化し、これらを標準化することで実用性を高めています。
2009年の10月には、この基本形に生鮮版を付加した最新バージョン「Ver.1.3」がリリースされました。これを機に流通BMSは本格導入期に突入したといえるでしょうね。
| 1981年 | イオン(旧ジャスコ梶j入社 三重事業部伊勢店、四日市店勤務 |
|---|---|
| 1984年 | 本社情報システム部 ・人事システムグループMgr ・商品システムグループMgr 等 |
| 1998年 | イオン琉球梶i旧(株)プリマート)出向 ・物流・情報システム本部長 ・ストアオペレーション本部長 等 |
| 2008年 | イオンリテール(株)情報システム部長 |
| 2009年 | イオンアイビス(株)設立に伴い現職 |

―――従来のEDIの問題点の解消に加え、流通BMSの普及のメリットとして、どのようなことが考えられるでしょうか
北澤:
まず、標準化のメリットがあげられます。JCA手順による従来型のEDIでは、メッセージフォーマットが小売ごとにすべて異なっているため、メーカー・卸は個別にフォーマット変換プログラムを用意して対応する必要がありました。流通BMSに準拠したEDIを導入することで、フォーマット変換プログラムの開発とメンテナンスの負荷を大幅に軽減することができます。特に取引相手が多いほど効果的で、個別対応プログラム本数が50分の1以下に削減できたという事例も報告されています。
次に、コスト削減や生産性向上のメリットですね。伝票レスになりますから、伝票代や処理費用をはじめ、物流面でのオペレーションコストも大幅に削減されます。
それから、発注データはオンラインでとっていても、請求データまで自社で作成・発行できないメーカー・卸が多くあります。流通BMSでは、パッケージソフトを活用して発注データを受け、ここで出荷処理をして、受領データを受ければ、請求データが自動的に作成でき、そのまま、発行・送信することが可能になります。こうした省力化による生産性の向上はきわめて大きなものであり、製・配・販一貫して享受できるメリットと考えます。
―――XMLで画像データを送受信できることから、その活用による将来的な可能性にも期待できますね
北澤:
今や、ネットショップやネットスーパーがコンシューマから大きく支持される時代です。ところが、Web上に掲載する画像データを用意する際、A社とB社でデータフォーマットが異なると、それだけで大変な労力やコスト負荷となります。一方、ネットショップを運営する側も、運営コストがどんどん膨れ上がっている現状にあります。
デジタルビジネスにまつわるこうした問題を解決するためにも、流通BMSは有効です。共通のルールやフォーマットを設け、商品マスタや画像データを標準規格化するだけで、間違いなく工数もコストも削減できるはずです。
また、今後の商取引の規格化を検討する場合、デジタル対応のソリューションは必須です。「うちはリアルの店舗があるからWebでの展開は必要ない」というところはおそらくないと思います。
デジタル対応というのは、必ずしもWebの領域での売り上げをアップさせることだけが目的ではありません。たとえば、コンシューマから情報を得る、もしくは、新たな情報を提供するためのツールとしてもインターネットが機能するからです。
あるいは、今は「クリック&モルタル」の時代です。コンシューマは、購入を検討する商品の情報をインターネットで詳細にチェックし、十分に納得したうえで、リアルな店舗で購入する傾向にあります。そのためにも画像情報が重要な役割を担うのです。
サプライチェーン全体のコスト低減、新たなビジネスの創出など、流通BMSは、製・配・販全体のメリットに直結した標準化のための仕組みです。
だからこそ、小売主導で、イオングループが積極的に取り組む意義は大きいと考えます。

―――イオングループでは、お取引様の件数も膨大な数に及ぶと想像されます。流通BMSへのスムーズな移行のために、特にどのような点に配慮して来られましたか
北澤:
お取引先様のご理解とご協力なしに、流通BMSへの移行は実現できません。そのため、これまでも流通BMS導入についての説明会を何度も開催しており、とにかく、十分な移行期間と無理のない導入スケジュールの中で、余裕をもって移行していただくことに配慮致しました。
2011年も7月から11月にかけて、全国8ヶ所、計26回に及ぶ説明会を開催し、北海道から沖縄まで、延べにして全国約1,700社のお取引先様にご参加いただきました。特に今回は、財団法人流通システム開発センターさまからもご説明いただきました。
その狙いは、流通BMSがイオングループだけのものではなく、業界全体で製・配・販の連携強化を促進するものであり、それによりサプライチェーンの機能とメリットを高めていく仕組みであるということをご理解いただきたかったからなのです。
―――イオングループでの推進スキームとしては、どのような体制が組まれているのですか
北澤:
オンラインシステムの変更となると、どうしてもIT部門が前面に立った仕事と受け取られがちですが、実際には、商品担当の執行役員がヘッドに立ち、商品部スタッフと一緒になって移行計画を立てていきました。そして、説明会のご案内についても、日頃お取引先様とお付き合いのある全国の商品部からご連絡させていただいています。
そうした体制で、私どもイオンアイビス(株)は、どちらかといえばシステム運用のサポートに徹する役割を担います。
イオンの流通BMSの運営は、3社のASPベンダー会社様に委託していますが、特に、食品のお取引先様は、地場企業も多いので、この3社を通じ、VAN to VANという形で各地域のVAN会社とスムーズに連携できるよう、当社が取りまとめ役となり、最適な体制づくりを図っています。
完全移行までのリミットは、残すところ1年となりました。すでに多くの取引先様が流通BMSへの切り替えを済ませており、テスト運用から本稼働まで、短期間でスムーズに移行したケースもあります。これまでのよい実績や手順を参考にしながら、すべてのお取引様が期限までに流通BMSへの完全移行を果たし、なおかつ、移行後もそのメリットを十分に生かせるよう、当社としても努力していきたいと思います。
―――流通BMS は、新たなビジネスモデルの構築や業務改革を推進するグループインフラとしての可能性をもっています。移行後も引き続き、IT部門の役割が大きく期待されますね。本日は、誠にありがとうございました。
平成23年10月28日、イオンアイビス株式会社 システム開発本部 本部長 北澤様をお招きし、イオングループにおける流通BMSの取り組みについてご講演いただきました。(写真はセミナー会場の様子)


イオンアイビス(株)北澤 清氏