
流通BMSとは?
流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)とは、通商産業省の「流通サプライチェーン全体最適化事業」に端を発し、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会をはじめとする業界団体が検討、実証実験を重ねて作成された、流通業界における新しいEDIのガイドラインです。通信基盤はインターネット、データ表現形式はXMLを採用するほか、データフォーマットや業務プロセスにおいても標準化され、今後サプライチェーン全体で業務が効率化されると期待されています。

図1:次世代EDI標準化ワーキンググループ
・「流通BMSとは?」そんな疑問にお応えします!
・流通BMSの概要
・今までと大きく異なるシステム形態
・では、実務面ではどう変わる?
(1)インターネットを利用した通信基盤
まず、通信基盤がインターネットになったことが大きな特徴です。従来の電話回線(2,400bps、9,600bps)に比べ、通信速度が格段に向上します。例えば、インターネットで2MBのADSLを利用した場合、2,400bpsの電話回線と比較すると、約800倍の通信スピードになります。
インターネットの場合、通信速度が保障されるわけではありませんが、大量のデータを短時間で送ることができるようになるのは間違いありません。通信コストが削減できるばかりではなく、今まで実現できなかった画像データも送れるなど、その活用範囲が広がることになります。
また、専用のモデムが不要となる点も重要です。
メッセージフォーマットの統一
メッセージフォーマットを小売業全体で標準化した点も大きな特徴です。これまでは、JCAという通信手段が標準化されていました。しかし、送られるメッセージの内容は各企業ごとに異なっています。そして、その統一は難しいとされてきました。
しかし、流通BMSを実現するため、大手小売業が各社のメッセージフォーマットを持ち寄り、その内容を統一したことは非常に価値ある成果だと言えます。 標準化作業を行った小売業10社で、延べ2,100項目あったものを、520項目に整理したといいます。
また今後、業務の変更や新たな業種・業態の参入によるデータ項目の見直しも予想されることから、メッセージ構造をXMLにしたことも大きな特徴です。XMLはタグと呼ばれる記号をつけてデータの意味をあらわします。国際的にもよく使われる方式ですので、今後EDIの標準化の普及に活用されることでしょう。
さらに、商品、荷姿、事務所など、コードの統一も合わせて検討されており、「流通BMS」の概要は、次のようにまとめられます。

図2:「流通BMS」の概要
(3)通信手段(通信プロトコル)
従来のJCA手順は、あくまでも日本におけるEDIの標準でした。流通BMSでは、国際的に標準となっている3つの通信手段が採用されます。これら3つの通信手段は、すべて小売企業が対応するものと思われますが、どの通信手段で流通BMSに取り組むかが重要なポイントになります。
A.ebXML MS
アジア圏を中心に利用が拡大している、国際標準の通信手順ebXMLを利用した通信手順。インターネット上で高速かつ安全なEDIを構築可能。データが発生する都度、プッシュ型で相手に送信する方式(サーバー方式)。取引量が多く、取引先とのリアルタイムなデータ送受信を実現したい企業向け。
ebXML MSは、electronic business XML Message Serviceの略。
B.EDIINT AS2
国際的なインターネット標準化団体IETFが策定した国際標準の通信手順。ウォルマートが採用したのをはじめ、欧米で広く利用されており、国内では日用雑貨業界で利用されている。データが発生する都度、プッシュ型で相手に送信する方式(サーバー方式)。取引量が多く、取引先とのリアルタイムなデータ送受信を実現したい企業向け。
EDIINT AS2は、Electronic Data Interchange-Internet Integration Applicability Statement 2の略。
C.JX手順(SOAP-RPC)クライアント
分散環境でのXMLによるデータ交換の規約であるSOAPを利用した通信手順。必要の都度、相手のセンターにアクセスし、データを送受信するプル型(クライアント型)。取引量が少なく、低コストでインターネットEDIを実現したい中小企業向け。
SOAP-RPCは、Simple Object Access Protocol-Remote Procedure Callの略。
各通信手段をまとめると、下記のとおりとなります。

図3:「流通BMS」の通信手段
検品レス・伝票レス
これまでメッセージや通信インフラの技術的な標準化の内容を説明してきましたが、流通BMSには大きな業務改善の狙いもあります。それは、従来から一部の小売企業でも推進されてきた「検品レス、伝票レス」です。
流通BMSでは伝票レスの取引を想定しています。納品書や受領伝票のやり取りも、EDIに置き換えることで紙の伝票をなくし、事務処理コストや伝票の保管を削減する狙いがあります。
また、納品伝票に代わるASNデータ(事前出荷明細)をあらかじめ小売企業に送信しておくことで、小売企業での受け入れ時に、大幅な入荷検品業務の改善を見込んでいます。これが「検品レス」です。そのため、納入側の企業では正確な出荷検品の体制と梱包ごとのラベル貼付が必要となります。
この梱包ラベルはSCM(Shipping Carton Marking)ラベルと呼ばれ、梱包ごとに連番をつけ梱包内容のヒモ付けをデータ上で行います。小売企業では事前に送信されてきたASNデータと梱包に貼付されたSCMラベルのバーコードを読み取るだけで、入荷検収とするしくみです。
従来のような、梱包を開けて全商品を検品する作業から解放されるため小売企業にとっては大きなメリットがある反面、納入企業には精度の高い物流体制が求められるのです。

図4:「検品レス・伝票レス」のしくみ
以上のように「流通ビジネスメッセージ標準」は、
(1)インターネットを利用した通信基盤
(2)メッセージフォーマットの統一
(3)通信手順
(4)検品レス、伝票レス
が大きな特徴と言えますが、ここで一番注意すべきポイントは、通信手順の選択です。通信手順はその運用方法に大きく影響しますので、自社にあったものを選択しなければなりません。
従来のシステム形態
JCA手順による従来のEDIのシステム形態は、データを集配信する1次局と、必要な時にセンターにアクセスする2次局で構成されます。通常、小売企業やVAN会社が1次局で、納入企業(受注側)が2次局となります。
両者間は電話回線で都度接続するため、通信速度は遅いもののセキュリティ面においては安全であるといえます。また、お互いに送受信するデータをまとめてやり取りするため、他のシステムとの連携もバッチで処理することとなります。大量のデータを扱う企業にとっては、そのバッチ処理に時間がかかるというデメリットがあります。
サーバー・サーバー(S-S)型EDIモデル
サーバー・サーバー型は、このようなバッチ処理の欠点を補い、お互いにリアルタイムでの通信を可能にしたプッシュ型のシステム形態です。通信手順は、ebXML MSまたはEDIINT AS2を利用します。
このモデルは、インターネットの特徴を活かし、他拠点との同時接続が可能で、基幹システムなどバックエンドと密に連携できるため、大企業向けのモデルといえます。

図5:S-S型EDIモデル
クライアント・サーバー(C-S)型EDIモデル
クライアント・サーバー型EDIモデルは、従来型のシステム形態に近いモデルです。JCAいう2次局をクライアントと呼び、必要な時に相手側のサーバーにアクセスし、データを受信または送信するシステム形態です。通信手順は、JX手順(SOAP-RPC)クライアントを利用します。
クライアント側はそのつど接続するため、セキュリティ面では比較的安全です。バックエンドとはバッチ処理になりますが、データ量が少ない中小企業向けのモデルといえます。
ユーザックシステムの流通BMS対応「EOS名人」も、このクライアント・サーバー型EDIモデルに対応しております。
このように、S-S型EDIは従来できなかったリアルタイムで大容量のデータの送受信が可能となります。しかし、常時インターネットに接続するため、セキュリティには十分に考慮が必要となります。これに対し、C-S型EDIはリアルタイムではないものの、初期投資や運用面を考えると導入しやすい形態と言えます。バックエンドとの連携方法や運用していくための体制も考えた上で、採用するEDIモデルを決定する必要があるでしょう。
ここまで、流通BMSについて、システム面の概要をご説明致しました。
しかし、流通BMSの概要をご理解いただくためには、システム面だけの理解だけでは充分ではありません。すなわち、「どのような業務が流通BMSの対象になるのか」、「自社の物流システムにはどのような影響があるのか」、「流通BMSに対応するためには、どのような準備をしておけば良いのか?」など、実務面での理解も重要になってきます。
そこでユーザックシステムは、これまで述べてきたシステム面でのご説明に加え、実務面などの理解も深めていただくための小冊子を作成致しました。
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