
流通ネットワーキング8月号

<著者>
ユーザックシステム株式会社
取締役マーケティング本部長
小ノ島 尚博
物流システム導入の目的で、最も多いものとして「コストダウン」がある。湯浅和夫氏の著書「『物流管理』の常識・非常識」(PHP研究所)によると、物流コスト削減のスタートは、「何の費用を減らすのか」という目的を明確にすることが大切だという。単に効率化だけを追求するのではなく、具体的に物流コストのどの部分にメスを入れるのかをプロジェクトで共有化しなければならない。
ユーザックシステムは受注から出荷まで(おもに物流センター内部)のシステム開発を通して、物流現場の方と一緒に業務改善をおこなってきた。物流現場にはちょっとしたアイデアで大きな成果を生む業務改善が数多くみられる。その中からコストダウンを目的に取り組んだ企業で、効果が大きかった現場改善の事例を紹介しよう。
<著者紹介>
小ノ島 尚博
ユーザックシステム株式会社 取締役 マーケティング本部長
〒104−0033 東京都中央区新川1-17-24 ロフテー中央ビル2F
TEL : 03-3523-0808 FAX : 03-3523-0160
e-mail : meijin@usknet.co.jp
図 1:システム概要図
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受注業務から出荷業務までを担当するA社工場の物流課。これまでにハンディターミナルを活用したバーコード検品で誤出荷の削減に成功した。つねに現場改善に取り組む物流課では、新たな改善テーマとして「送り状発行業務」に着目した。
配送業務を運送会社に委託しているA社では、お届け先を識別する送り状と荷札の発行が不可欠だ。送り状と荷札は形状が異なることから、別々のプリンタで発行している。それら伝票類と荷物を照合する「セット作業」に、なんと月間160時間もかかっていた。特に誤出荷を防ぐための照合作業はベテラン社員でも気を遣う作業となる。
そこで、主要な運送会社の送り状発行を止め、時間がかかりミスが発生しやすい「セット作業」をなくすことを考えた。つまりA社では荷札だけを出荷商品(梱包)に貼付し、送り状に必要なデータ(送り先や送り状番号)は、あらかじめ運送会社にEDIで送信しておくというシステムだ。運送会社も、今まで手入力していた送り状の情報がデータで入手でき、集荷トラックが戻る前にターミナルから各方面への出荷量を把握できるというメリットがある。仕事の段取りがしやすいということで、主要運送会社の2社はこの提案を受け入れてくれた。
送り状レスの仕組みは、パッケージソフトとして各運送会社からも提供されているが、専用システムとなるため、運送会社ごとに導入しなければならない。また、基幹システムとの連携や現場の運用に合わせたシステムに変更ができないという問題点がある。そこで、A社が送り状レスに取り組む際に、複数の運送会社に対応し、また送り状発行もできるユーザックシステムの「送り状名人 運送EDI対応」を採用した(図1)。
「送り状名人 運送EDI対応」は、各運送会社が指定するレイアウトの荷札(シール状のラベル)が発行でき、運送会社とのEDI機能も備える。あらかじめ運送会社から与えられた送り状番号も自社管理できるため、基幹システムとの連携のほか、各運送会社の荷物の問い合わせサイトでの検索も容易になる。当然送り状レスに対応していない運送会社の送り状も発行でき、このシステムひとつで送り状業務すべてをカバーできるのが特徴だ。
こうして実現した「送り状レス」による業務改善は、従来8人いたデリバリー担当者が7人となり、年間で約1,000万円のコスト削減を達成することができた。さらに、未経験者でも作業ができる点や、配送状況の照会システムにより顧客サービス向上につながった点も、大きな効果である。
業務改善の教科書には、「まずその業務をなくすことを考える」とある。まさに、無駄な業務をなくすことに成功し、大きな成果が得られた事例である。
図 2:WebEDI自動化の概要図
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食品メーカーB社の大手量販店や食品スーパー向け販売部門では、従来から基幹システムでEOSが構築され、受発注業務が自動化されていた。一方、外食チェーンに食材を供給する部門では、インターネットによる受発注、いわゆるWebEDIが近年急速に増えつつある。外食チェーンにおいてはインターネットが普及しだしてから受発注のシステム化に取り組んできたため、初めからWebEDIによる取引を要請している企業が多い。B社はその数が約30社にも及ぶ。
「数年前より、取引先のWebEDIサイトを利用して、注文情報を受け取り、納期回答や出荷実績の報告などを行ってきた。WebEDIサイトに対するブラウザ操作などは本社や支店の営業担当者が行っていて、全て手作業のため大変だった。」(業務改善前の実態を語るシステム担当者)
WebEDIは取引先ごとに様々な機能があり、当然画面や操作方法も異なる。すべて手作業でブラウザ操作をしなければならず、基幹システムにも自動連携できないのが最大のネック。例えば、ある大手コンビニエンスチェーンのWebEDIサイトでは、受注情報や在庫情報が表示される画面を印刷し、さらに納期回答や入庫入力などを行う必要がある。この作業に約40分もの時間がかかっていた。WebEDIが増えつづけると、ますます現場に負担がかかると判断したB社は、WebEDIの操作から基幹システムへのデータ連携までの自動化に取り組んだ。
ブラウザ操作を自動化するといっても、単に毎日同じ操作を繰り返し実行するだけでは役に立たない。記録した手順とまったく同じ画面が表示されるのであれば何も問題は無いが、実際にはこのようなWebEDIサイトはほとんど存在しない。たとえば今日、受注データが1件あった場合、その1件だけを選択しダウンロードする。翌日同じ操作を自動で実行すると、当然1件だけ選択されダウンロードすることになる。ところが、受注データが複数行発生する場合や、受注データがまったく無い場合には、うまく動作せずエラーになってしまう。これでは自動化の意味が無い。ここがWebEDIの自動化が困難なところだ。
そこでB社は受注業務の改善を進めるにあたり、ユーザックシステムの「WebEDI受信名人」(現行製品名:Autoブラウザ名人)を採用した(図2)。「WebEDI受信名人」(現行製品名:Autoブラウザ名人)には、ブラウザの操作手順(スクリプト)を自動記録する機能に加え、スクリプト編集機能が用意されている。明細数の変化やボタン位置の変更など、操作する画面の変化に柔軟に対応することができる。このため、インターネットによる調達サイトが広く普及している、食品業や製造業などで数多く利用されている。
B社の導入効果は、WebEDIの自動化だけをみると、1社につきわずか5分の短縮であった。しかし、営業担当者が常に付いている必要がなく、また受注データを取り忘れるミスもなくなった効果は大きい。基幹システムとの連携はホストのツールで作り込んだものの、これにより従来のEOS業務と同じ流れが実現でき、全国の営業担当者もWebEDIの操作から解放された。
今年3月、大手量販店が中心となり流通業界における次世代EDI、「流通ビジネスメッセージ標準」を発表した。小売業個別の仕様であったEDIを、通信手順からメッセージの項目までを標準化しようというものである。当社でも次世代EDIに対応した「EOS名人」を発売し、小売業と取引する企業のEDI化を支援している。
しかし、その標準に準拠しない企業や業界もまだ多く存在する。企業間取引の標準化を期待しつつ、取引先個別のWebEDIへの対応も今後さらに必要となるであろう。
図 3:出荷検品の1バッチの処理の流れ
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在庫差異をゼロにする。そんな夢のようなことが実現するのだろうか。
帳簿(コンピューター在庫)と現物の在庫数をいかに小さくするかが、物流センター長の悩みの種。たとえ在庫が合っていたとしても、欠品や過剰在庫は様々な問題を引き起こす。在庫数の把握がいい加減であると、なおさらその対策が遅れ影響が拡大することになる。
医薬品卸C社の物流センターは、1日に約3,000件の出荷先に平均4〜6アイテム出荷している、非常に細かい作業が要求されるセンターだ。在庫しているアイテム数は約1,000点。C社において在庫数が合わない最大の問題は、やはり出荷時のミスが一番大きな要因であった。業務改善を実施する前は、伝票と商品をすべて目で検品していたため、送り先や商品、数量をよく間違えていた。しかも出荷作業担当は商品知識の豊富なベテラン社員がほとんどであるにも関わらず、出荷のピーク時は深夜まで作業が続くという、過酷な現場であった(当時の誤出荷率:0.02%、月間の総残業時間:1,000時間)。
出荷ミスなどが原因で発生する返品は、お客様へのサービス低下だけでなく、物流コストを押し上げ利益を大幅に圧迫していた。返品処理をするために物流コスト全体の7〜8%の費用がかかると分析したC社は、ベテラン社員が定年退職する前に、こういった問題を解決しようと業務改善に取り組んだ。
物流センター長は、我々にこのように相談された。「単にバーコードで出荷検品をするだけでは、誤出荷の防止や、在庫数の一致を実現すことができない。なぜなら、月末の棚卸時点で、もし在庫差異が発生しても、もうその原因をつかむことはできない」、「いつでも在庫数に狂いがない状態をつくるために、何か良いアイデアはないだろうか・・・」。非常に厳しい要求であった。
まず着手したのは、無線ハンディターミナルによる出荷検品システムの構築。よくある仕組みだが、出荷指示書のバーコードをスキャンすると、ピッキングすべき商品の棚番号がハンディターミナルの画面に表示されるため、商品知識のない担当者でも無駄な動きがなく正確にピッキングできる。商品のバーコードを一点ずつスキャンするため、数量のミスも防げる。さらに、荷動きのあった商品の棚卸も毎日おこなったが、それでもわずかに在庫差異が発生した。出荷した後では、どのお届け先に間違いがあったか、もう調べようがない。
そこで、出荷のタイミングを1日7〜10回に分け(1回を1バッチと呼ぶ)、1バッチごとに棚卸をおこなうことにした。つまり、出荷検品したあと配送するトラックに積み込まれる前に、出荷した商品の在庫数が正しいかどうかチェックするのだ。一見大変そうだが、無線ハンディに出荷指示と同じように棚卸指示内容が表示され、その指示どおり棚にある商品の在庫数(端数)を数えればよい。10個単位で梱包されている在庫は棚卸の対象外とした。もし差異が発生した場合でも、すぐに出荷直前の梱包をチェックすることで、誤出荷を未然に防止できるというわけだ(図3)。
さらに業務改善は続く。ピッキング用の箱から出荷用の梱包に商品を移し替える無駄を省くための改善だ。従来、紙で発行していた出荷指示書を、シール状のラベルに印刷することにした。そして出荷用の梱包に貼付し、そのラベルのバーコードをスキャンして検品作業を開始する。初めから出荷用の梱包に入れながら品揃えする仕組だ。ピッキングが終了しなければ梱包サイズが分からないという問題は、コンピュータが出荷先ごとに出荷商品の容積計算をおこない、最適な梱包サイズを事前に選定することで解決した。
こうした業務改善を約1年間継続したことで、C社の在庫精度は完璧になり、誤出荷率は0.0011%、残業時間もゼロを達成した。また、退職する作業員を補充することなく出荷業務をこなせている点も、センター長が期待したとおりの成果であった(現在の出荷担当者は6名減の19名)。投資した情報システムのコストは、1年で回収できたという。
C社の業務改善の中心となった「検品支援名人」は、無線ハンディターミナルによるバーコート検品システムだ。自動倉庫による効率化を進める医薬品業界では珍しく、人が移動して検品を行うスタイルである。「検品支援名人」の管理画面を常にチェックしているセンター長は、「各作業の進捗状況や予想終了時刻が表示されるので、遅れている作業が一目で確認でき、応援体制がすぐにとれる」と、物流センター全体の作業状態がよく見えるようになった点を高く評価している。設備などが固定されないフレキシブルな検品システムとしたことが、継続した現場改善につながり、当センターの強みとなっているのだ。
各事例とも、当初の課題を解決するために「業務改善」と「情報システム」をうまく組み合わせているのが特徴だ。さらに、現場を中心とした改善活動を継続していることが成功のポイントである。システムを導入するには、現場との調整や導入コスト、定着指導など大変な苦労を伴う。そのため、いったん導入が完了すれば、そのまま何年も継続して利用する企業が多い。しかし、取引先に対する物流サービス内容は年々変化する。また、コストダウンのための改善活動を行わないと、物流センターのコストは年々増加することになる。こういった活動を支える情報システムも常に見直していくことが、業務改善の成功のポイントであろう。